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安倍内閣の集団的自衛権「閣議決定」をどう見ていますか?弁護士36人に意見を聞いた
国会ではさまざまな法案について、日々議論が行われている

安倍内閣の集団的自衛権「閣議決定」をどう見ていますか?弁護士36人に意見を聞いた

安倍内閣は7月1日、集団的自衛権の行使を認める閣議決定をした。これまでの政権は、戦争放棄を定めた憲法9条の解釈から「集団的自衛権は行使できない」という立場をとってきたため、今回の決定は、安全保障政策の大きな転換点となる。

これまでは、日本への直接的な攻撃があった場合に、防衛のために必要最小限の武力を行使することしか許されていなかった。しかし、政府の新しい解釈では、自衛権を発動できる「3つの要件」を満たせば、個別的・集団的自衛権と集団安全保障の3種類の武力を行使できることとなった。

閣議決定を受け、全国各地で集団的自衛権の行使容認に反対する集会やデモが開かれるなど、波紋が広がっている。弁護士たちは、今回の閣議決定をどう見ているのだろうか。弁護士ドットコムに登録されている弁護士に意見を聞いた。

●圧倒的に「反対」の声が多い

集団的自衛権の行使に賛成か、それとも、反対か。弁護士ドットコムでは、そのような質問を投げかけ、以下の3つの選択肢から回答してもらった。

1 集団的自衛権の行使に賛成する→1票

2 集団的自衛権の行使に反対する→33票

3 どちらでもない→2票

36人の弁護士から回答が寄せられた。<集団的自衛権の行使に反対>という意見が圧倒的に多く、<集団的自衛権の行使に賛成する><どちらでもない>という意見は少数にとどまった。

そのうち、自由記述欄で意見を表明した弁護士21人の「コメント全文」を、以下で紹介する。(掲載順は、賛成→どちらでもない→反対の順番)

●集団的自衛権の行使に賛成する意見

【山本 毅弁護士】

「全ての国が個別的、集団的自衛権を持っており、日本だけが、集団的自衛権は持っているが、行使できないという従来の政府解釈があまりに異常であった。

中国、北朝鮮が、日本の安全保障の脅威となっており、集団的自衛権を認めることは、まさに必要である。

憲法改正を行うべきとの意見もあり、私も憲法9条を改正して、自衛隊を軍として明記することが、立憲主義に沿うとは考えるが、まず憲法解釈の変更により安全保障を高めることは、現実的な選択であると考える」

●「どちらでもない」という意見

【西口 竜司弁護士】

「日本を取り巻く四囲の状況に照らせば集団的自衛権が必要であることは言うまでもないところです。他方、日本国憲法9条で国権の発動たる戦争、交戦権は否定されています。したがって、今の日本国憲法の下で集団的自衛権を認めることは憲法解釈をゆがめることになるので到底認めることはできません。結局、集団的自衛権の問題は内閣の一存で決めるような事項ではなく、憲法改正にの手続を踏まえて行うべきであると考えます」

【梅村 正和弁護士】

「そもそも集団的自衛権という言葉で論議することに違和感があります。

自衛権が自国民を衛る権利・権限ということなら、原則、自衛権が制約されるのはおかしい。集団的自衛権という言葉を使うのは、右側からすれば、本当は自衛権でないものを憲法にあえて適合させるために集団的自衛権という言葉を使って自衛権のように見せかけているか、あるいは、左側からすれば、本当は自衛権すら認めたくないのだが、自衛権自体を認めないと言うことはできないので、集団的自衛権という言葉を使って、制約される自衛権があるかのように見せかけているのか、そのどちらかではないかと勘ぐりたくなります。

実際には、個別の行為について、それが自衛権の範囲内であるか否かを、その時、その場で判断しなければならないでしょう。

今回の件は、自衛権と呼ぶことは難しいことを同盟国との関係で、できるようにしたいという思惑だと思われますが、外交・軍事・国際関係その他の重要な数々の問題と憲法の限界とのせめぎあい部分の難しい判断を要することなので、外交・軍事を専門に深く勉強していない私などが偉そうにこうだとはなかなか言えない問題です」

●集団的自衛権の行使に反対する意見

【二宮 淳悟弁護士】

「集団的自衛権の行使そのもののアンケートはそれはそれで有意義だとは思いますが、『解釈による変更』の賛否についてのアンケートをとっていただきたいですね。その上で『解釈による変更を容認する』に回答した弁護士さんに取材して頂きたいです。私の知る限り高村さん、北側さん以外でそのような考え方ができる方を知らないので是非」

【中村 憲昭弁護士】

「過去の戦争で、侵略だと述べて行われた例はほとんどない。全て自衛のため、自国民の権利擁護のためという口実で行われた。

集団的自衛権は、結局はアメリカに追従するためのもの。そもそも、平和維持のために武力しか手段として考えないのがおかしい。

今回は手続自体でたらめすぎるが、手続をきちんととったとしても、集団的自衛権を認めることには反対したい」

【湯本 良明弁護士】

「憲法9条をどのように解釈しても、集団的自衛権の行使を容認していると解することは不可能であると思う。また、集団的自衛権という概念自体明確ではないし、どこまでも一人歩きする余地のある抽象的概念である。このような集団的自衛権を容認することは、日本が世界に受け入れられてきた最大の価値である平和主義を放棄するに等しく、とても許容できるものではない」

【桑原 義浩弁護士】

「憲法を解釈次第で変えられるという発想がナンセンスである。

そもそも、解釈改憲という言葉自体に誤りがある。憲法を変えるには、憲法改正でなければならない。内閣の閣議決定でどうこうと言える話題ではない。

日本は、戦争を行う国になってはいけないと思う。他国が血を流すようなことをやっていたとしても、日本は、それと同じ土俵で、それと同じ考え方で対応すべきではない。それが、日本国憲法の考え方である」

【山元 浩弁護士】

「近代以降『自衛』でなく始まった戦争はありません。『自衛』は国土への直接的な攻撃に対する防衛に限定するべきだと考えます。9条の2項の『国の交戦権は、これを認めない』の明確さからすると、日本国憲法制定の時点では、国民は戦争に懲り、『戦争するくらいなら自分が滅んでも良い』と考えていたのではないかとすら思います。私はそこまでの覚悟はありませんが、『戦争』という選択肢を我々は持つべきではないと考えます」

【小池 拓也弁護士】

「憲法第9条ほどに明確な規範がありながら集団的自衛権まで認めてしまうのであれば、抽象度の高い憲法の人権規定など無意味とされてしまうでしょう。

また、集団的自衛権を行使した場合=日本への攻撃がないのにもかかわらず戦争を始めた場合、全国の沿岸部に54基ある原発に敵国が攻撃を加えることは『想定外』でしょうか。

集団的自衛権の容認、行使は危険と考えます。なお、武力行使の新3要件は抽象的で、拡大解釈は十分可能です。たとえば、『自由』の中には財産権も含まれるでしょうから」

【岡田 晃朝弁護士】

「反対です。

他の先生も言っておられるように、憲法はそれが時代にそぐわなくなれば、改正するための手続きを定めております。
今回の『解釈変更』は、解釈の変更という限度にとどまるとは思えません。

本件のような曲解まで解釈変更の名の下に認めると、憲法規定はその性質上、個別具体的に定められたものではないので、解釈の変動で、ほとんど骨抜きにすることも可能です。集団的自衛権が必要ならば必要でよいですが、その点の国民の民意を聞くという手続きを飛ばして、解釈が変わったとするのは、あまりにも乱暴です」

【秋山 直人弁護士】

「憲法改正が無理だから解釈改憲・閣議決定でやってしまえというのは非常に乱暴であり、立憲主義の破壊です。

安倍首相は、憲法99条に定める憲法尊重擁護義務を無視し、自らの『信念』をごり押しして、これまでの憲法解釈の積み重ねを覆したもので、信じがたい暴挙です。

選挙権不平等・小選挙区制のもとで、民意が歪んだ形で自民党の大勝を招き、その結果、安倍政権による、特定秘密保護法制定、教育委員会制度改悪、今回の集団的自衛権行使容認等々の強引な施策を許しています。

国民が、憲法9条の果たしてきた役割を再確認し、政府の暴走に歯止めをかけなければいけないと思います」

【川島 英雄弁護士】

「私は憲法改正による集団的自衛権の行使にも反対の立場ですが、集団的自衛権の行使に賛成か反対かという問いは価値観の問題でもあるので、ここでは議論しません。

その価値観の問題とは関係なく、今回のような閣議決定というのは、明らかに法解釈の限界を逸脱しています。これは、ほとんどの法律家、法学研究者、さらには法学部の学生も同じ感覚ではないでしょうか。

本当に集団的自衛権の行使が必要なのであれば、憲法改正によって行われるべきです。自らの改正案の正当性を説明し、反対意見と議論を戦わせた上で国民の信を問い、憲法自体を改正する、それが民主主義であり、『法の支配』という立憲主義国家の大原則です。

今回のような閣議決定による解釈変更を許してしまったら、もう民主主義国家でも、立憲主義国家でもなくなってしまいます」

【川上 麻里江弁護士】

「ここで問われているのは、解釈改憲による集団的自衛権の容認についてかと思いますので、それに対し答えます。

以前にも(96条改正について問われたときに)同じことを書いた記憶がありますが、憲法とは、権力を縛る縄のようなものです。解釈改憲とは、縛られているはずの権力が、『この縄は、本当はこのくらい緩くなきゃいけないと思う!だから、勝手ににほどいて緩くする!』と宣言して、縄を緩めてしまうのと同じことです。これでは、憲法を置いておく意味がありません。

本当に集団的自衛権が必要なら、正規の改憲手続を踏んだとしても、十分に目的を達成できるはずです。それではできない!あるいは、それでは間に合わない!と主張する方は、なぜできないのか、なぜ間に合わないのか、正直に向き合っていただきたい(そこにこそ、憲法で権力を縛っておくことの意味があるのですから)」

【吉田 玲英弁護士】

「集団的自衛権の行使の是非について、インターネット上で議論するつもりはありません。しかし、集団的自衛権を『閣議決定によって』行使できるように憲法解釈を変更することには反対です。

立憲主義における憲法の本質は、国家権力を制限することにあります。これは、絶対王政の時代への反省を踏まえて生まれてきた考え方であり、過去の考え方ではありません。

権力者の都合のよいように憲法を変更できるのであれば、それは立憲主義の否定です。

全く反対の思想を持った権力者があらわれたら、再度集団的自衛権は許されない、さらには自衛隊も日米安保条約も違憲だ、ということに解釈を変更することも許されるのでしょうか。

今回の憲法解釈の変更からは、それも当然に許されることになります。

目的が正しいなら手続を踏まえる必要がない、という考え方は、およそ立憲主義からはかけはなれた考え方ですし、法治主義にも反したものです」

【居林 次雄弁護士】

「憲法9条に反する解釈を閣議決定したこと自体が、憲法違反であると考えます。

戦争をしない日本、独りも他国人を殺したことのない専守防衛の日本国自衛隊、という戦後の日本に対する他国からの信頼が、世界平和に貢献していますから、それをここで戦争をする自衛隊に変身させることは、却って日本に対するイメージを、根底から覆すことになります。

これにより、日本は他国から攻撃される危険度が増し、平和国家として存立する基盤が根底から覆ってしまう恐れがあります。

憲法を改正しないで、憲法の禁止する多国籍軍に参加して、戦争の脅威を高める方向自体も問題です。
やはり憲法改正をするかどうかを、国民に諮る方法を取るべきです」

【中村 晃基弁護士】

「まず、憲法改正によったとしても集団的自衛権の行使には反対です。また、現行憲法下での集団的自衛権行使はそもそも憲法9条に明確に反します。

日本国憲法の前文では『日本国民は恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して我が国の安全と生存を保持しようと決意した。』とあります。

日本国憲法の平和主義を、積極的非暴力的平和主義と呼びます。

武力行使以外のあらゆる方法を駆使して紛争を解決し平和を実現しようという考え方です。

軍隊は国民を絶対に守りません。軍隊によって守られるのは、国家という統治機構・権力構造、ただそれだけです。

日本国憲法は個人の尊厳を何よりも重んじており、そのために、個人よりも国家が重視される戦争を徹底的に禁止したわけです。

日本は、戦後一度もこの崇高な理想を実現しようと努力しておりません。日本国憲法が目指したものをまずは一度実現のために動いてみる。それこそが重要だと思います」

【大貫 憲介弁護士】

「憲法9条は、『アメリカの戦争』への参加を断る理由になってきました。この理由を捨ててしまうと、今後、『アメリカの戦争』への参加は断れないでしょう。新三要件は、歯止めになりません。

そもそも、今回の閣議決定は、湾岸戦争の「トラウマ」以来、外務省条約局が中心となり、長年世論操作を行い、その操作をメディアが無批判に流してきた結果でもあります。その目的は、当然、『アメリカの戦争』への参加を可能にすることであり、現に、アメリカは、今回の閣議を歓迎しています。

アメリカの世界戦略のために、なぜ自衛隊が戦うのか、何の目的で、日本の『軍隊』が殺し殺されるのか、在外企業、在外邦人の安全を犠牲にし、テロの危険を高めるのか、誰も、本音で議論しないままに、憲法を骨抜きにしてよい訳がありません。

『抑止力=平和』などという欺瞞的なスローガンや、政権の示す15事例などのプロパガンダにより、本音が隠されています。

『アメリカの戦争』への参加を選択したいのであれば、それを正面から議論し、憲法改正手続きをとるべきです。閣議決定は、手続きとして、姑息です」

【寳耒 隆弁護士】

「まず、私は、父として、集団的自衛権の行使に反対します。私は、我が子を戦争に関係させたくありません。法律家としては、今回の閣議決定には二つの問題点があると考えています。

まず一つは、憲法の解釈を閣議決定という方法により変えてしまうということです。憲法とは、国民の権利を守るために、国家の権力を制限するものです。その憲法を、国家である内閣の決定により変更することができてしまえば、憲法は骨抜きになってしまいます。本当に変更の必要があるのであれば、国会で議論するなり、国民に信を問うなり、正々堂々と行うべきです。

もう一つは、我が国に対する脅威はすべて個別的自衛権で対応可能ということです。尖閣諸島等領土問題への対応がクローズアップされていますが、我が国の領土が攻撃を受けたのであれば、我が国の自衛権として対応できます。集団的自衛権とは、同盟国に対する脅威に対応するためのものであって、我が国が戦争に巻き込まれる可能性をいたずらに高めるものです。政府の説明はこの点において十分でなく、まやかしを感じます。

以上から、私は、集団的自衛権の行使に反対することはもちろん、今回の閣議決定は日本国民として恥ずかしく思います」

【吉江 仁子弁護士】

「1946年11月3日、新憲法発布の日、私たち日本国民は、主権者(=統治者)たる地位を得て、戦争・武力の行使・武力による威嚇を国際紛争を解決する手段としては永久に放棄することを宣言しました(憲法9条1項)。

私は、主権者の一人として、この国のこのあり方を支持します。

集団的自衛権の行使は、国際紛争を解決する手段としての武力の行使に他なりません。よって、認めることはできません。
集団的自衛権行使の要件で、もっとも問題なのは、『武力攻撃を受けたとき』にあたるかどうかをどう認定するかです。

1898年、当時スペイン領だったキューバのハバナで、アメリカ艦船メイン号が爆発し260名が死傷した事件で、アメリカはスペインから攻撃を受けたとして軍事力でキューバを制圧しましたが、今は、メイン号は、攻撃によらない燃料の事故で爆発したというのが定説です。

また、トンキン湾で北ベトナム軍がアメリカ艦船を攻撃したとして始まったベトナム戦争(アメリカによる北ベトナムの大規模な空爆、陸上掃討作戦)も、後にアメリカ国防省の秘密報告が暴露され、ベトナム軍によるアメリカ艦船の攻撃はなかったことが明らかになっています。

『武力攻撃を受けたとき』にあたるかどうかの認定が、これほど難しい問題である以上、安易に、集団的自衛権の行使を認めることはできません」

【伊佐山 芳郎弁護士】

「自衛のため以外に、他国への攻撃を日本への攻撃とみなして武力行使を認めることが、憲法を改正しないでできるなどという憲法解釈は聞いたことがありません。安倍首相の『従来の憲法解釈の基本的な考え方と変わらない』という発言は、国民に対する“虚偽説明”と考えます。オリンピック誘致の際、福島の原発事故の放射能汚染に関して、“under control”などと、国際社会に大嘘をついた前歴を持ち出すまでもなく、全く信用できません。従前の自衛権発動の要件として政権の統一した解釈では、『わが国に対する急迫不正の侵害があること』とされ、『わが国への攻撃があった場合』と明確な基準がありました。しかし、この度の新3要件の1つでは、『明白な危険』というだけで、具体的にどのような場合なのかについて、何の説明もなされていません。要件を満たすかどうかは、時の政権の判断次第ということであり、このような解釈改憲は、時の政治権力の恣意的支配に対抗し権力を制限する立憲主義に反し許されないといわなければなりません。自民党は、これまで、集団的自衛権について、憲法改正が必要との立場を貫いてきたのであって、解釈改憲で可能などとする意見はなかったはずです。因みに、1980年10月14日、当時の鈴木善幸首相は、『集団的自衛権の行使は、憲法の認めている所ではないと考えている』と国会答弁しています。また、1994年6月13日、当時の内閣法制局長官の答弁でも、『集団安全保障に関わる措置のうち憲法9条によって禁じられている武力の行使、または武力の威嚇に当たる行為については、我が国としてはこれを行なうことが許されない』と答弁しています。翻って、憲法98条1項は、『この憲法は、国の最高法規であって、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない』と明言しています。名古屋高裁は、2008年『イラクにおいて行われている航空自衛隊の空輸活動は、政府と同じ憲法解釈に立ち、イラク特措法を合憲とした場合であっても、武力行使を禁止したイラク特措法2条2項、活動地域を非戦闘地域に限定した同条3項に違反し、かつ、憲法9条1項に違反する活動を含んでいることが認められる』との憲法判断を下しています。この度の集団的自衛権行使容認の閣議決定は憲法に違反し、違憲無効であると考えます」

【須藤 博弁護士】

「日本国憲法第9条は、第1項で『戦争や武力の行使などを永久に放棄する』と規定し、第2項で『陸海空軍その他の戦力は保持しない』『交戦権は認めない』と規定しています。これを素直に読めば、日本は軍隊を持たない国、戦争はしない国であることを憲法が規定していると読めます。しかし、我が国に対する急迫不正の侵害があった場合に国民の生命、自由及び幸福追求の権利を守るために、他の適当な手段がない場合には、必要最小限度の武力行使は、認めるべきであるから、その限度で自衛隊の存在も許される、というのがこれまでの歴代政府の憲法9条の解釈でした。学説では、今でも、自衛隊は憲法9条のもとでは許されない存在であるというのが多数説だと思います。しかし、歴代の政府は、上記の限度で自衛隊の存在が許されるとし、従って、これを逸脱する武力の行使は許されないとしてきたのです。我が国に対する急迫不正の侵害がなく、我が国と密接な国であっても他国に対する武力攻撃があった場合には自衛権の発動は許されないとしてきたのです。つまり、これまでの歴代政府は、自衛隊が合憲であるための要件として我が国に対する武力攻撃があった場合に必要最小限度の武力行使が許される、これを超えると憲法9条に反して違憲になると解釈してきたのです。さらに、歴代政府は、海外派兵は憲法9条のもとにおいては許されないとしてきました。自衛隊が海外に行くことがまったく許されない訳ではなく、戦闘行為が行われていない場所への自衛隊派遣は海外派兵ではないという解釈をしてきました。安倍内閣は、これらの歴代政府が取ってきた憲法9条の解釈を変更して、我が国に対する武力攻撃がなくても、我が国と密接な国に対する武力攻撃があった場合に我が国が武力で反撃する権利である集団的自衛権の行使を認め、また、戦闘行為が行われる可能性がある場所への海外派兵をも認める内容を含む閣議決定をしたのです。この閣議決定は、従来は憲法違反になるとされてきた集団的自衛権の行使などを認める内容ですから、本来憲法改正手続をもって憲法を変更する必要があるものです。憲法改正の発議には、衆参両院の総議員の3分の2以上の賛成が必要ですが、こうした手続を取らずに閣議決定で憲法9条の内容を変えてしまう解釈をすることが許されないことは当然のことです。戦争をすることを予定する今回の閣議決定には絶対に反対です」

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

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