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トヨタが5年間も「法人税」を払っていなかった!? どんなカラクリがあったのか?
2014年3月期決算で過去最高益を計上した世界有数の自動車メーカであるトヨタ自動車

トヨタが5年間も「法人税」を払っていなかった!? どんなカラクリがあったのか?

「日本でも税金を払える状態となった」。2014年3月期決算で過去最高益を計上したトヨタ自動車の豊田章男社長が5月上旬、決算説明会でこのように発言したことが話題になっている。

同社は2009年から5年間、法人税を払っていなかったのだという。法人税は企業などの法人が得た利益に課せられる税金だが、トヨタの決算資料を見ると、過去5年間ずっと赤字だったわけではなく、利益が出ている年もある。

では、なぜ、トヨタは法人税を払っていなかったのだろうか。どのようなカラクリがあるのか。税理士の中野雅仁氏に聞いた。

●利益が出ていても法人税を払わずに済む方法とは?

「法人税を払っていなかったという昨年度のトヨタの個別財務諸表を見ると、税引前当期純利益で、8561億円もの金額が計上されていました」

これだけの利益が出ているのに、なぜ法人税を払っていなかったのだろうか。

「日本の法人税の計算の仕組みに理由があります。まずひとつが、『欠損金の繰越控除』です。欠損金とは、税務上の赤字のことです。これを翌事業年度以降の9年間、繰り越して所得から差し引くことができます。

ただし、大企業は当期の所得の80%までしか差し引くことができないので、残りの20%には税金がかかる計算となります」

●利益に海外からの配当が含まれていたから?

では、トヨタは残りの20%分の税金をどうして払っていなかったのだろうか。

「詳細な計算内容は公表されていませんので、あくまで推測の範囲となりますが、これは『受取配当の益金不参入』という制度を使ったと推測されます。

これは、海外の子会社から配当を受け取って利益として計上しても、税金の対象にはしませんよ、という制度です。

税制改正によりできた制度なのですが、その背景として、海外子会社からの受取配当に日本で税金をかけると、日本の企業は日本国内に資金を持ってくるのをやめ、そのまま海外で資金を回してしまう可能性があるという点があります。

つまり、日本に資金が還流されず、日本でお金を使わなくなってしまう恐れがあるわけです。さらに、企業がさまざまな設備や研究開発への投資を控えることになり、日本経済にとって好ましくない環境となってしまう可能性があるのです。そこで、経済発展のために、税制を改正したということになっています。

今回のニュースから学ぶべきは、認められた税の制度を利用して『納税』による資金流出をできるだけ避けるのは、企業の知恵だということ。つまり、税の制度を熟知して、自分の会社への上手な適用を考える(タックスプラニング)ということが、企業の発展には必要だということだと思います」

【取材協力税理士】

中野 雅仁(なかのまさのり)税理士

昭和46年生まれ。クラウド会計ソフト対応のITに強い税理士。「明るく・楽しく・元気よく」をモットーに中小企業の皆様に幅広いサービスと笑顔を提供中。「資金繰り」、「小規模事業者の節税」、「開業にあたっての税金の注意点」等のセミナーを多数開催。

事務所名:税理士法人わかば

事務所URL:http://www.wakaba-tax.com/

(税理士ドットコムトピックス)

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