ネット上で大きな反響を呼んだ「渋谷駅で女性が幼児を蹴り倒す動画」。人々が行き交う駅の構内で、小さな子どもが母親らしき人物に頭を蹴られて倒れこむ様子は、多くの人に衝撃を与えた。この問題の女性が「特定された」という報告が6月27日までに、動画の撮影者のもとに、警察から寄せられたことが分かった。
動画を撮影し、フェイスブックで公開した会社員の嘉瀬正貫さん(38)によると、その女性は「動画に映った本人だ」と、警察に認めたのだという。警察は「児童相談所と連携して対処している」とのことだ。
渋谷警察署から電話で連絡を受けた嘉瀬さんは、「最初に相談した際には『見つかりっこない』と言われていた。こんなに早く特定されるのかと思った。動画が反響を呼んだことで、警察に多くの情報が寄せられたのではないか」と話している。
●「虐待をどう防ぐか」議論の深まりに期待
今回の件について、「ひとまず、児童相談所につながったことで、母親も暴力を振るいにくくなっただろう。良かった」。こう述べる嘉瀬さんだが、一方で、「動画を撮影したとき、すぐに警察や児童相談所に相談・連絡しておくべきだった」と、反省する言葉も口にした。
動画を撮影してフェイスブックに投稿したのは、今年3月。警察へ相談したのは、6月になって動画に数多くの反響が寄せられてからだった。
児童虐待防止法6条1項によると、虐待を受けた児童を発見した人は、福祉事務所などに通告する義務がある。そのことについて、嘉瀬さんは「残念ながら知らなかった」としたうえで、「こうした現場に遭遇した際、一般人はどう行動すれば良いのか。110番のような通報先を設けて、もっと認知度を高めていくことも必要かもしれない」と指摘していた。
嘉瀬さんは「今回の動画は、ひとまず役割を終えたと思うので、近日中に削除する。ただ、ほかにも虐待を受けている子どもたちは、たくさんいるはずだ。今回のことをきっかけに、虐待をどうなくしていくのかについて、議論が深まればと思う」と期待していた。