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インボイス、35%が免税事業者を続ける意向 「サイレント取引外し」も フリーランス協会が調査結果公表
写真はイメージです(metamorworks / PIXTA)

インボイス、35%が免税事業者を続ける意向 「サイレント取引外し」も フリーランス協会が調査結果公表

10月1日に始まったインボイス制度の影響について、プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会は12月13日、1242人のフリーランスに行った調査結果を公表した。回答者の約4割がインボイスに登録した一方で、35%は免税事業者を継続すると回答した。また、免税事業者の中には、取引先から独占禁止法や下請法違反の可能性がある、一方的な契約解除や、報酬を減額されたフリーランスもいた。(ライター・国分瑠衣子)

●インボイス登録申請済みは4割

商品やサービスを売る事業者は、売り上げ分の消費税額から、仕入れや経費にかかる消費税額を引いて(仕入れ税額控除)納める。2023年10月から仕入れ税額控除をするためには、商品やサービスを売る側が発行するインボイスが必要になった。インボイスを発行するためには、課税事業者として登録しなければならない。

フリーランス協会の調査は10月20日から11月20日までの1カ月間、インターネットで行い、フリーランス1242人から回答を得た。回答者は主な職種別で、ウェブデザイナーなどのクリエイティブ・ウェブ・フォト系が25%(312人)、エンジニア・ 技術開発系が18%(223人)、出版・メディア系が8.9%(110人)と続く。

画像タイトル 回答者の現在の年間収入(フリーランス協会の調査報告書から抜粋)

調査では2023年10月時点で、インボイス登録した人は全体の41.5%。これから登録すると回答した人も含めると約半数を占めた。一方で「免税事業者を継続する」と回答した人も34.9%いた。

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●「サイレント取引外しが起こっている」17.3%が一方的な契約解除や減額

インボイス制度は、売り手が発行するインボイスがなければ、買い手は仕入れ税額控除ができない。免税事業者のままだとインボイスを発行できないため、取引から排除される懸念がある。ただ、経過措置はある。買い手は免税事業者と取引する場合は、3年間は仕入れ税額の8割、その後の3年間は半分が控除される。

免税事業者を中心に制度に対する不安の声が上がっていたのは上記の理由だ。実際、今回のフリーランス協会の調査では、免税事業者を継続する人のうち、17.3%が取引先から一方的な契約解除や報酬の減額をされたと回答した。

自由回答では、免税事業者とみられる人たちから下記の声が上がった。

・「請求書フォーマットが変わり、消費税を実質カットされた」(30代、クリエイティブ系)

・「取引先の事務作業が煩雑になることで免税事業者との取引停止を考えていると言われた」(30代、通訳翻訳系)

・「取引先からインボイス登録しているフリーランスへ優先的に仕事を振ると通告されたので、仕事があまり回ってこない時がある」(20代、クリエイティブ系)

・「連絡なく報酬額に『消費税込み』と記載してきて、問い合わせると『インボイスによる書式変更で、今後、インボイスの対応をお願いする可能性がある』と言われ待っていたが、一方的に9月末で取引を終了させられた」(50代、その他)

・「サイレント取引外しがすでに今年4月から起こっており、収入が激減している(昨年の2分の1から3分の1になる見込み)。当面の間(課税事業者)登録するつもりはないが、免税事業者のままで今後も仕事をもらい続けることができるのか分からない」(40代、出版・メディア系)

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●インボイス登録しても価格転嫁できた人は17.2%

また、インボイス登録し課税事業者に転換した人の中で、取引先と価格交渉などをして、実際に価格転嫁できた人は17.2%にとどまった。

他方、値上げ交渉をしていない人が7割にのぼった。フリーランス協会の平田麻莉代表理事は「そもそも取引先とインボイスについて対話できていないことが課題として見えてきました。フリーランスが価格交渉を切り出しにくいことも考えられるため、政府による発注者向けの啓発が必要だと考えています」と話している。

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