日弁連が12月8日に開催する臨時総会で、会員弁護士個人に向けたオンライン中継が初めて実現する。これまでも各単位会が指定した場所での中継はあったが、移動が必要なこともあり利用率が低かったという。
働きかけを続けてきた「日弁連WEB総会実現提言の会」の太田伸二弁護士(仙台弁護士会)は、「今回は議決権の行使までは実現しなかったが、一定の成果を得られた」と評価する。
「総会はSNSで中継する弁護士がいるように、議論が白熱し、動議が出るなど面白い。会内民主主義を充実させるためにも、『野次馬』的な形でも良いので、これを機に総会に関心を持ってもらえればと思います」(太田弁護士)
●コロナ禍に立ち上がったツイッター弁護士たち
きっかけは2020年の新型コロナ禍。同年6月予定の総会が延期され、日弁連総会もオンライン化できないかと考えたという。
「遠方から参加すれば時間も費用もかかります。オンライン化すれば病気や育児、介護などの事情で移動が難しい弁護士も参加しやすくなるはずです」(太田弁護士)
太田弁護士がツイッター(現・X)で提案したところ、複数の賛同者が現れ、津金貴康弁護士(京都)、中川卓弁護士(東京)、北周士弁護士(東京)らと計6人で「提言の会」を立ち上げた(2名は氏名非公表)。
どれだけ賛同を得られるか分かりませんが、日弁連総会について「各単位会とテレビ会議でつなぎ、そこも『議場』として議決権が行使できる」という案を考えてみようと思います(それをどうするかはまだ考えていません)。
— 太田 伸二 (@shin2_ota) September 5, 2020
このような改善提案、どうでしょうか?
提言の会はまずオンライン傍聴の実現を目指し、2021年1月に日弁連に要請書を提出。直接影響したかは定かではないが、同年3月の総会から各単位会が用意した会場での中継が実現した。
さらに、総会のオンライン参加には日弁連の会則変更が必要なため、全会員にFAXを送るなどして賛同者も募った。最終的に理事会の承認を得るまでには至らず、総会の議題にはならなかったが、発議の条件の1つである300人の賛同はクリアした。
●一歩ずつ着実に議論を進める
その後、2022年6月に小林元治会長のもとで、総会のオンライン参加に向けたワーキンググループ(WG)が設置され、太田弁護士も委員として参加。会長選挙時、当時候補者だった小林会長に意見聴取したのがきっかけになった。
WGでは、オンライン参加にした場合の途中退室の問題や定足数の確認方法、委任状提出者による二重投票の防止法などが議論されたという。
「技術的に解決できるのではないかと思う部分もありましたが、総会の運営には外からは見えない大変さがあることも分かりました。実際、数年前にあった委任状トラブルのときは大騒動になりましたし、安定して運営したいという執行部経験者の気持ちは理解できました」(太田弁護士)
議論の末、オンライン参加自体は見送られることになったが、弁護士個人の端末からのオンライン視聴は可能になった。「1歩ずつステップを踏みながら議論を進めたことで、最低限のことは実現できました」と太田弁護士は語る。
WGの報告書には、技術の発展次第ではオンライン参加が実現する可能性もある旨が記載された。「今回楔を打ち込めたので、次はここを起点に実現に向けた継続的な検討を期待したいです」。