人の心の動きについて研究する心理学の世界で、3人の研究者が卑猥な言動を繰り返したり、無断で女性を撮影したりするセクハラ行為をしたとして、学会から処分されていたことがわかった。それぞれ大学の助教や講師を務める30〜40代の男性で、臨床心理士・公認心理師でもある。
彼らが所属する日本認知・行動療法学会は11月15日、学会員によるハラスメントがあったとして処分を発表した。2年間、学会関連の講演依頼などを停止するという。
一方、同じく3人が所属する日本心理学会は、11月17日段階で処分を公表しておらず「事実があったかなかったも回答しない」としている。
●研究用のワークスペースに避妊具の写真を投稿
関係者の話を総合すると、処分の対象となったのは、同じ学会に所属する研究仲間の女性Aさん(20代)に対するセクシャルハラスメント行為だ。
彼女の服装について話題にし、「スカートはいてるってことはヤレたってこと?」「かわいい服着てるから一周回ってみて」と発言したり、飲み会や学会時に性的言動や身体的接触をしたという。
また、研究上のやりとりをするために日常的に使っていたビジネスチャット「Slack」上でセクハラ行為はエスカレート。避妊具の写真を共有した上、デリヘルを呼んだ報告として半裸の自撮り写真を送ったり、大学内で職員の女性を無断で撮影し「服透けてる」「二の腕つまみたい」と投稿したりしていた。
特に「#下ネタが許される部屋」というチャンネルでは、3人による奔放な性的発言が飛び交っており、Aさんにも公開された状態だった。
Aさんが申告した主なセクハラ内容は以下の通り。
・録画禁止のオンライン会議で、複数の女性研究者のスクリーンショットを撮り、Slackで共有。容姿などについて批評する(「どこの美人さんですか」「ほっぺた柔らかそう」「目をつぶった写真がほしい。コラ画像つくってほしい」「みんな俺に抱かれたい」) ・3人のうちの1人がAさんとの飲み会中に、性的関係を持ちたいという趣旨の内容を2人に実況中継する ・Aさんの名前と写真に類似させたアカウントでAさんを装った性的投稿を繰り返す(「私の体みてほしいですぅ」) ・Aさんの自宅行きをにおわせる(「泥酔したら向かうかもしれないので鍵かけといてください」) ・身体的接触に言及する(「僕と骨伝導しますか?」「お尻触らないように気をつけなきゃ」)
●アカハラ・パワハラの側面も
複数の性的なやりとりが頻繁に繰り返されるものの、研究上見なければならない情報もあるため、Aさんは精神的負荷が高まっていった。我慢し続けた結果、徐々に彼らの名前を見るだけで動悸がするようになり、肌が見えないような服装にするなどせざるを得なかったという。
当時、Aさんは学生で、3人とは実質的な上下関係があった。AさんはSlack上での多数のセクハラ行為をスクリーンショットに保存し、資料として学会に申し立てた。
彼らは教壇に立つだけでなく、精神的な疾患や心の病を抱えた人へのカウンセリングをする臨床心理士・公認心理師でもある。被害について知る関係者は「他にも被害に遭っている学生や患者がいるのではないか」と危惧している。
「Aさんは、その後の研究人生を考えて、強く拒否することができなかったようです。年下の女性研究者を性的な対象として見るなどアカデミックハラスメントやパワーハラスメントの側面もあり、深刻な問題です」(関係者)