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わが家が小学生の溜まり場に…金の抜き取り、ケガなどトラブル多発「もう来ないで!」
写真はイメージ(マハロ / PIXTA)

わが家が小学生の溜まり場に…金の抜き取り、ケガなどトラブル多発「もう来ないで!」

わが家が小学生の「溜まり場」になっているーー。悩める親たちから、弁護士ドットコムに相談が寄せられている。

ある相談者は、家に遊びに来た子どもたちに勝手に貯金箱をあけられ、約30万円を飲食やゲーム代などに使われたという。相手の保護者に事実を伝えたが、いまだに全額返済されていない。「泣き寝入りしなければならないのか」と悔しさを綴っている。

子ども同士のいさかいによるケガなども懸念される。自宅でトラブルが起きた場合、どうすればよいのだろうか。

●法的措置は「現実的ではない」ことも…

遊びに来た子どもに金品を盗まれた場合の法的対応について、高島惇弁護士は「子どもの年齢にもよるが、法定監督責任を追及して、保護者らに全額返済するよう請求することが考えられる」と説明する。

相談者は約30万円と被害額を訴えるが、法的措置をとることには難しさもあるようだ。

「実際の被害金額を正確に立証できるか、手続的な負担、特に訴訟費用を考えると、約30万円を回収するために法的措置を講じるというのは、経済的損得の観点からあまり現実的ではないかもしれません。

子ども同士の関係に着目して考えることもできるでしょう。たとえば、いじめの一環としてカツアゲのような形で盗まれた場合には、いじめ防止対策推進法に基づき、学校に対して改善に向けた対応を要請することも考えられます。『いじめ』とは一定の人的関係にある児童間での行為であれば足り、学校内かどうかは要件ではありません。

勝手に貯金箱をあけて金銭を盗まれたことで、児童が精神的な苦痛を感じている場合には、いじめに該当すると理解して差し支えないでしょう」

●ケガをめぐるトラブル、問われる保護者の責任

ケガをめぐるトラブルも複数寄せられている。しかし、子どもの仲間内だけで起きた事故であれば、保護者らがその場にいるとは限らない。

高島弁護士は「その場にいないケースであっても、身体への加害行為については生活全般に関する日頃のしつけを通じて監督することはできるとして、監督責任を肯定するのが一般的な理解となる」と語る。つまり、その場にいなくとも保護者は責任を問われる場合があるということだ。

子どもだけではなく「わが家のペットに傷をつけた」として責任を問われ、困っているという相談もあった。

「ペットに対する加害行為であっても同様です。加害行為とペットの外傷との間に相当因果関係がある限り、その保護者らに対して、直接治療費などを損害賠償請求できます。

ただし、最近はこの監督責任をより慎重に判断する動きも散見されます。保護者らがまったく予見しえなかった加害行為については、日頃のしつけを通じても予防することは困難だったとして、監督責任が否定されるケースは今後出てくるかもしれません」

●保護者同士の感情的な対立に発展しうる

友だちの家を行き来することで、思わぬトラブルに巻き込まれる可能性はある。とはいえ、保護者が過度に干渉することに対しては慎重な声もみられる。

自宅が「溜まり場」になり、モヤモヤしているという小学生の保護者は、次のように語る。

「『うちにも遊びにおいで』と誘ってくれる人もいますが、お礼も何も言わない保護者がほとんどです。お菓子やジュース代もかかるので複雑な気持ちになりますし、何よりトラブルがあった際に心配です。最近は外で遊ぶように伝えています」

高島弁護士は、自宅におけるトラブルは「密室性も相まって客観的証拠に乏しい。その場にいなかった保護者らとしては、自分の子どもの言い分を信じるあまり、感情的に対立してしまう展開も少なくないのではないか」としたうえで、次のようにアドバイスする。

「法律がどこまで介入するかは難しい問題ではあります。しかし、少なくとも学校の内外を通じた継続的ないじめと評価できるようなケースにおいては、単発的なトラブルではなく、いじめ被害が深刻化していると理解する余地があります。このような場合には、学校や児童相談所といった関係機関と連携のうえ早期の再発防止策を講じるべきだと考えます」

プロフィール

高島 惇
高島 惇(たかしま あつし)弁護士 法律事務所アルシエン
学校案件や児童相談所案件といった、子どもの権利を巡る紛争について全国的に対応しており、メディアや講演などを通じて学校などが抱えている問題点を周知する活動も行っている。近著として、「いじめ事件の弁護士実務―弁護活動で外せないポイントと留意点」(第一法規)。

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