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国会で論じられたジャニーズ性加害問題、警察庁や法務省の見解は? 2000年に阪上議員が追及
国会(リュウタ / PIXTA)

国会で論じられたジャニーズ性加害問題、警察庁や法務省の見解は? 2000年に阪上議員が追及

故ジャニー喜多川(享年87)氏が、事務所の少年たちに性加害を繰り返していたという問題は、今年(2023年)3月の英放送局BBCによるドキュメンタリー番組や『週刊文春』の報道により、社会に大きな衝撃を与えている。

『週刊文春』がこの問題を大きく報じたのは、今回が初めてではない。同誌は1999年10月から連続して、複数の元所属タレントらの証言をもとにジャニーズ事務所にまつわる様々な疑惑をキャンペーンで報じていた。

その後、『週刊文春』が提起した問題は国会でも審議される。2000年4月、第147回国会の衆議院「青少年問題に関する特別委員会」にて、自民党の阪上善秀代議士(当時)がこの問題を取り上げたのだ。

●2000年4月、衆議院の青少年問題に関する特別委員会

2000年4月、衆議院の青少年問題に関する特別委員会では、自民党の阪上代議士(当時)が『週刊文春』の報道などをもとに、「ジャニー喜多川社長のセクハラ疑惑についてお聞きしたいと思います」と、警察庁、法務省など各省庁の局長たちに質問を重ねていった。

主な質問は「児童に対する性的な行為の強要は、児童虐待に当たるのか」「児童買春、児童ポルノ禁止法には抵触するのか」「強制わいせつ罪にも問われるのか」というもの。これに局長たちは「一般論といたしましては」と断りをおきながらも、法令違反になり得るとの立場を示すものもあった。

議事録をもとに、そのやりとりを一部抜粋する。

●厚生省(当時)「一般論としては児童福祉法に違反」

【厚生省児童家庭局長】

阪上「ジャニー喜多川氏は、親や親権者にかわって児童を預かる立場であります。児童から信頼を受け、児童に対して一定の権力を持っている人物が、その児童に対して性的な行為を強要する。もしこれが事実とすれば、これは児童虐待に当たるのではありませんか。」

厚生省児童家庭局長「今御指摘の件は、性的な行為を強要した人物がこの手引(編注:平成11年3月作成の「子ども虐待対応の手引き」)に言います親または親にかわる保護者などに該当するわけではございませんので、私ども、手引で言うところの児童虐待には当たらないというふうに考えております。」

阪上「児童福祉法第三十四条第六号は、児童保護のための禁止行為として挙げておりますが、ジャニー喜多川氏の報道された行為が事実とすればこの法律に違反しているのではないかと思いますが、いかがですか。」

厚生省児童家庭局長「御指摘の個別事案につきまして、それを判断するための情報がございませんが、一般論といたしましては、児童に対しまして今申し上げたような性交類似行為をするということは、児童福祉法三十四条の六号に違反しているというふうに考えられると思います。」

●警察庁「違反行為があれば、厳正に対処」

【警察庁生活安全局長】

阪上「児童買春、児童ポルノ禁止法には抵触しませんか、お伺いをいたします。」

警察庁生活安全局長「個別具体的な事案にかかわる捜査でございますので答弁は差し控えさせていただきますが、一般論として申し上げますならば、児童買春、児童ポルノ法では児童買春をした者を処罰することといたしておるわけでございますけれども、児童買春とは、児童等に対しまして、対償を供与し、またはその供与の約束をして、当該児童に対しまして性交等をすることと規定されております。これに違反するような行為がございますれば、具体的な証拠に基づきまして厳正に対処してまいりたいと考えております。」

阪上「ジャニー喜多川氏のこのようなセクハラ行為は、今後警察庁としてどのように追及し、捜査をされようとしておりますのか、決意のほどをお伺いいたします。」

警察庁生活安全局長「青少年の健全育成は大変重要な私どもの任務と考えておるところでございまして、今後とも、少年の健全育成のためにあらゆる施策、そしてまた各種の法令を適用いたしまして各種の事案に対応して、健全育成を図ってまいりたい。また、関係機関とも緊密な連携をとってこの問題に対処してまいりたいと存じます。」

●法務省「一般論としては、強制わいせつ罪が成立」

【法務省刑事局長】

阪上「十二歳の少年がセクハラ行為を受けたという報道もありましたが、刑法によれば、十二歳以下の少年にわいせつな行為をした者は強制わいせつ罪にも問われると思いますが、いかがですか。」

法務省刑事局長「一般論として申し上げますれば、刑法では、十三歳未満の少年についてわいせつな行為をしたときには、それ自体で強制わいせつ罪が成立することとされております。」

阪上「条例違反や児童福祉法違反、強制わいせつ罪は、被害者からの訴えがなくても捜査の対象となると思いますが、いかがですか。」

法務省刑事局長「今御指摘のような犯罪につきまして、被害者からの被害申告あるいは告訴、このようなことが捜査を開始する要件とされているわけではないというふうに理解しております。」

●「NHKの電波が一事務所の意向で左右されてはならない」

【郵政省放送行政局長】

阪上「​​NHKの電波が一事務所の意向で左右されることがあってはならないと思いますが、郵政省はどのような御指導をされておるのか、お伺いをいたします。」

郵政省放送行政局長「お尋ねの件でございますけれども、これはまさに放送事業者たるNHKの番組編集権にかかわる問題でございまして、NHKみずから判断すべきものというふうに考えているところでございます。ただ、一般論として申し上げますと、NHKはその公共性を十分配意いたしまして、番組編集に当たって適切に対応されるものというふうに期待しているところでございます。」

詳細なやりとりはウェブで公開されている第147回国会の衆議院「青少年問題に関する特別委員会」でも確認できるので、ぜひ参照いただきたい。

国会という場に、ジャニー喜多川氏の性加害問題を持ち込んだのは『週刊文春』の功績と言える。しかしこれを機に、警察の捜査などが進んだのかと言えば、そうではないだろう。今年、性被害を証言したカウアン・オカモト氏が生まれたのは1996年。被害にあったのは2012年ごろからとみられる。

なおこの時、ジャニーズ事務所と『週刊文春』を発行する文藝春秋は、一連の報道をめぐり法廷闘争の真っ只中にあった。 < なぜ東京高裁は「ジャニーズ性加害」を「事実」と認定できたのか 1999年文春報道の裁判

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