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「ぼったくりかも」歌舞伎町のバーから1杯飲んで脱出した客「無銭飲食」になる?
歌舞伎町(2023年3月/弁護士ドットコムニュース)

「ぼったくりかも」歌舞伎町のバーから1杯飲んで脱出した客「無銭飲食」になる?

これから職場や学校で知り合った仲間と飲みに行くような機会も増えてくるだろう。大型連休も控えており、気もゆるみやすい。繁華街では「ぼったくり」の被害にも気をつけたいところだ。

すんでのところで逃げ出したという人からの相談が弁護士ドットコムに寄せられた。マッチングアプリで知り合った女性に誘われて、新宿・歌舞伎町のバーに連れて行かれたという。

女性が指定した雑居ビルの中に構えた店の雰囲気や、高額な料金設定に不審な気配を感じたため、乾杯の1杯だけ飲んだあとで「すぐに電話をする振りをして、駆け足で退店しました」(相談者)

だが、1杯分のドリンクの支払いをしなかったことから、「無銭飲食」として被害届を出され、罪に問われることになるのかと心配している。ぼったくり被害にくわしい青島克行弁護士に聞いた。

●当初は払うつもりがあったなら「犯罪にならない」

——店で飲食したものの支払いをしない場合、詐欺などの罪に問われるのでしょうか?

最初から払うつもりもないのに注文を重ねて、会計時に当初からの予定どおり、支払いを拒否するようなケースは詐欺罪にあたります。

一方で、当初は払うつもりがあったものの、途中で何らかの事情が生じ、何も言わずに帰っただけであれば、単なる債務不履行であり、犯罪になりません。

——ぼったくり店ではないかとおそれ、1杯飲んだのに会計をせずに逃げるという判断は適切だったのでしょうか?

たとえば、報道されているようにマッチングアプリで知り合った人から連れていかれた店だったとか、高額な値段設定だったとか、ほかにも雰囲気から「ぼったくり店」と疑わしく感じることはあると思います。

今回の相談者は、店から不当な請求をされる前に逃げてしまっているので、そもそも店側に問題があったと主張するとしても、店側の何が問題だったのかの説明に窮するところではありますが、とにかく直感が働いて店から出てしまうということはあってよい判断です。

あとになって店側から無銭飲食などと言われたとしても、こちらは犯罪をしているわけではありません。危険から逃れた状況にあるのですから、あとは落ち着いて、納得できる請求に対してのみ応じるというスタンスでいけばいいのです。

飲んだ分の代金を払っていないことは事実なので、その代金を求められたら、もちろん払うのが、こちらがとるべき対応ということにはなります。

そして、店側のもとめる金額について、常識の範囲内と判断できれば、払って終わりです。そうでない場合は、不当(過剰)な請求であるから払わないという対応もありえます。

●逃げられなかった…通常のぼったくりのケースは?

——ぼったくり店に入った場合、どのように対応すればよいでしょうか?

被害者の多くは、会計時にとんでもない金額を請求されて初めて、ぼったくり店だと気づくものです。そのような場合でも、対応は先のケースと変わりません。

悪質な飲食店は「払ってくれないなら、無銭飲食ですね」「警察に通報します」などと責めるものです。これを受けて、本当は払わなくてもよい代金を泣く泣く払ってしまう悲劇は数多く存在します。

ぼったくり店で、明らかに適正でない代金を示された場合のように、納得できない代金請求に応じたくても応じようがないというのは、犯罪ではありません。単なる支払い拒否です。

納得できないので、払えません。
納得できないので、払いません。
無銭飲食ではないし、詐欺になるわけもない。
払ってほしいのであれば、裁判をしてください。
裁判所に決めてもらうべきです。

そう言い返して、払わずに帰る。 それが被害者がとるべき行動ということになります。

「支払うまで帰らせない」と言ってきかない場合は、店の中からでも110番して警察に助けを求めることも重要です。

プロフィール

青島 克行
青島 克行(あおしま かつゆき)弁護士 うみとそら法律事務所
青島 克行(あおしま・かつゆき)弁護士 取引紛争(債権回収、顧客トラブル等)、企業内トラブル(社内不祥事、労使紛争)、家族問題(離婚、遺産相続)等、多種多様な業務案件を担当。ウェブサイト「歌舞伎町ぼったくり被害相談室」(http://aoshima-katsuyuki-kabukichou.com/)を運営する。弁護士ブログ(http://aoshima-katsuyuki.com/)。事務所サイト(http://www.umitosola.jp/)

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