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「連れがまだ食べているのに…」ラーメン店で食べ終わったらすぐ退店しないとダメ?
画像はイメージです(Fast&Slow / PIXTA)

「連れがまだ食べているのに…」ラーメン店で食べ終わったらすぐ退店しないとダメ?

人によって食べるスピードは様々。早食いの人が回転率重視のお店にゆっくり食べる人と一緒に入った場合、相手が食べ終えるのをその場で待つべきか否か、居心地の悪さを感じることもあるだろう。

ツイッターでも、高校生の娘と2人でラーメン店に入った客が、食事提供後15分ほどで早く店から出るよう促されたという投稿が話題になったことがある。ネット上では、「自分も(店側が)やり過ぎだと思う」と同意する声がある一方、「混んでる店ならそれが普通。自分も同じ状況で先に外に出て待ったことある」などの体験談もあった。

ラーメン店は少なからず回転率が求められる業態ではある。もっとも、一緒に入店した人がまだ食べている状況でも食べ終わった客を退店させるといった対応をとることは可能なのだろうか。尾崎博彦弁護士に聞いた。

●時間制限自体は「原則として法的に問題ない」

——店内でラーメンを食べる場合、一般にテーブルなどを一定時間利用することも注文(契約)に含まれているのでしょうか。

このような事例は法律や契約で割り切ることはなかなか難しいといえます。そのことを前提に以下お話しします。

店内で食べようとラーメンを注文した場合、契約内容として明確にするとすれば、「提供されたラーメンを食べ終わるまで相当な時間内において、食事のために店側が指定した場所を占有することができる」というものだと考えられます。

この場合の「相当な時間」とは、提供される食事の種類・内容、客層、店内の構造、時間帯等を考慮して、社会通念上、食事をするのに相当と考えられる時間であると考えられます。

——ラーメン店が店内での飲食に一定の時間制限を設けること自体は問題ないのでしょうか。

店側がどのような客に来店してもらいたいのか、店内ではどのように食事してほしいかと言ったポリシーを決めることは自由です。通常その店で提供される食事内容から相当と考えられる時間制限を設けることも原則として法的には問題ありません。

したがって、ラーメン店において「ラーメンを食べ終わるまで相当な時間」を設定して、その時間内での食事を客に要求することも可能といえます(営業的にそれが良いかどうかは別問題です)。

●連れが食べ終わるまでは「相当な時間」と考えてもいいのでは

——母娘でラーメン店に行ったところ、食事提供後15分ほどで早く店から出るよう促されたという投稿が話題になりました。

そのような場合は「15分ほど」が「食べ終わるまで相当な時間」といえるかどうかです。

ラーメンは麺が汁に長く浸かっているとのびてしまうこともあり、一般的に美味しいうちに食べるため、通常の量のラーメン一杯を食べ終わるまでの時間として「15分」という設定が極端に短いということはないように思われます。

また、既に親御さんは食べ終わっていたということであれば、「食べ終わるまで相当な時間」に該当するようには一応思えます。

ただ、食べるスピードは個人差があり、ラーメンのように熱い食べ物の場合ならなおさらです。また、複数人で食事している場合、一人が先に食べ終わったとしても、他の人が食べ終わるのを待って退店するのが一般的でしょう。

一緒にいた娘さんがまだ食べ終えていないときに、上記時間が過ぎたものと決めつけられるかは難しい問題です。

個人的には娘さんが食べ終わるまでは「相当な時間」と考えて、親御さんにも同様の時間的余裕は確保されるべきだと思います。

さらに、退店の声かけに従うべきかどうかといった点も、相当な時間に関わるものと考えます。基本的に「相当な時間」に達していないにもかかわらず退店を促されてもこれに従う必要はないでしょう。

——「相当な時間」に達していたとみられるような場合はどうでしょうか。

「相当な時間」に達していた場合でも、店側が客に対して明確な時間をあらかじめ示していないのであれば、客自身が食事を終えるのに必要だと考えられる時間は退店の声かけに従わなくてもよいと考えられます。

——退店の声かけ自体の妥当性はどうでしょうか。

先ほども述べたように、店内での食事時間を制限する権限は店側にあります。時間制限が明確に示されている場合には、原則として退店を促すことも許容されるでしょう。

一方で、時間制限が示されていないときは、合理的に考えて退店を促すことが妥当といえるかどうかについてケースバイケースで判断することになるでしょう。今回のように複数人で入店した場合と一人で入店した場合とでは結論が異なるケースもあると考えられます。

いずれにしても、上記の説明に対しては異論はあるかもしれません。ただ、本来は「マナー」とか「常識」で片付けていたことを説得的に説明するのであれば、上記のような考え方も一つの指標となるのではないかと思います。

プロフィール

尾崎 博彦
尾崎 博彦(おざき ひろひこ)弁護士 尾崎法律事務所
大阪弁護士会消費者保護委員会 委員、同高齢者・障害者総合支援センター運営委員会 委員、同民法改正問題特別委員会 委員

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