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タクシーのお釣り、用意するのは運転手? それとも乗客? 法的には
(Satoshi KOHNO / PIXTA)

タクシーのお釣り、用意するのは運転手? それとも乗客? 法的には

最近キャッシュレス決済に対応するタクシーが増えましたが、中には今も現金のみのタクシーもあります。そんな時に限って、一万円札など大きいお金しかないことも。

タクシーのお会計をめぐり、弁護士ドットコムには「タクシーで小銭やお釣りが用意できないのはどちらの責任ですか」という相談が寄せられています。

相談者はタクシーで1200円を支払う際に、1万円札しか持ち合わせていませんでした。一方の運転手は、小銭や千円札がなかったためお釣りの8800円を用意できず、相談者が小銭を用意していないことを責めたといいます。

相談者は「この場合、小銭や千円札を用意しておく義務や努力義務などは両者にあるのでしょうか?」と質問を寄せています。

法的には、お釣りを用意するのは誰になるのでしょうか? 田村ゆかり弁護士に聞きました。

●運転手はお釣りを準備して乗客に渡す義務がある

——まず、タクシーを利用するというのは、どういった法律関係にあるのでしょうか?

商法第589条は、「旅客運送契約は、運送人が旅客を運送することを約し、相手方がその結果に対してその運送賃を支払うことを約することによって、その効力を生ずる」と旅客運送契約について定めています。

タクシーに乗る際に意識はしないでしょうが、法的には乗客と運転手はこの旅客運送契約を口頭で締結しているということになります。

また、国土交通省が定める一般乗用旅客自動車運送事業標準約款第6条は、「当社は、旅客の下車の際に運賃及び料金の支払いを求めます」と定めています。

標準約款通りか、それと大差ない約款を定めているタクシー会社が多いでしょうから、乗客は下車の際に運賃の支払いをする義務を負うと言えます。

——相談者は1万円札しか持ち合わせていなかったようです

今回のケースでは、タクシーが目的地に到着し、運転手が運賃1200円の支払いを請求したのに対し、乗客が1万円札を渡した時点で、乗客は運賃の支払義務を果たしています。

運転手が1万円札を受け取ってお釣りを返さない場合は、運転手は相談者に対して不当利得返還義務(民法第703条)を負うこととなり、この義務を免れるためには、事実上釣銭を渡すしかありません。

よって、運転手は銀行で両替するなりコンビニで小額の買い物をするなりして、釣銭を準備して乗客に渡す義務があると言えます。

なお、乗客が現金で支払う場合、運賃である1200円ちょうどを出す義務があるのか?という点も一応問題になりえます。

これについては規定している法律等はないと思われるので商慣習によることとなりますが、タクシーに限らず小売店でも飲食店でも、客が現金で支払いをする場合にちょうどの金額を出す義務はなく、釣銭を渡すのが商慣習上確立していると言えるでしょう。

プロフィール

田村 ゆかり
田村 ゆかり(たむら ゆかり)弁護士 でいご法律事務所
経営革新等支援機関。沖縄弁護士会破産・民事再生等に関する特別委員会委員。

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