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円安で「得する人」はどこにいる? 「損する人」とあわせてまとめてみた
写真はイメージです(一球 / PIXTA)

円安で「得する人」はどこにいる? 「損する人」とあわせてまとめてみた

人手不足による賃上げや資源価格の高騰などにより、世界的にインフレ傾向が強まっており、インフレを抑制するため、各国の中央銀行は政策金利を引き上げています。一方、日本では、上場企業の中間決算で最高益が見込まれる中、労働者に賃上げを要求する動きはほとんど見られず、インフレだけが進んでいます。

日銀の黒田総裁は、「当面、金利を引き上げるようなことはない」と明言しているため、金利の高い外国通貨が買われ、円安が急激に進んだわけです。ただ、直近では、米国の大幅利上げが後退するとの見方から円を買い戻す動きが出ており、11月30日現在で1ドル138円台まで戻ってきています。

今回の円安では、物価上昇が顕著なことからマイナス面ばかり強調されていますが、当然のことながら円安でメリットを受けている人もいます。どのような人が円安で得をし、どのような人が損をしているのでしょうか。(ライター・岩下爽)

●円安で得をする人

(1)円安で儲かる業種で働く人

円安で儲かる業種で働いている人は、給与やボーナスが上がる可能性があるので、円安により得をする人達と言えます。具体的には次のような業種になります。

① 輸出産業

一般的に輸出業は円安になると、海外での販売価格が安くなるので、売上が上がると言われています。ただ、日本の輸出業の多くは製造業であるため、原材料価格の高騰により原価が上がり、それほど利益が得られていないとの見方があります。日経新聞によるとトヨタ自動車は円安で8564億円の増益となりましたが、原材料価格の減益(7650億円)などで相殺され、営業利益が前年比で35%減ったとあります。

また、輸出業の多くは為替リスクを回避するため現地生産にシフトしており、円安のメリットを享受できない構造になっています。つまり、輸出業と一括りにはできず、日本で主に生産している輸出企業が特に有利になります。具体的には、電子部品・デバイス、電気・機械、輸送用機械などが強いと言われています。

② 観光関連産業

円安になると外国人の購買力が高まるので、外国から観光客が日本に来るようになります。そのため、宿泊施設、観光地にある飲食店、おみやげ屋などは円安のメリットを享受することができます。中国では依然として厳しい規制があるため、中国人観光客が来日するのはもう少し時間が掛かりそうですが、中国人観光客が日本に来るようになれば、家電量販店やデパートなどの売上も上がることが期待できます。

③ その他

輸出産業や観光関連産業のように円安により直接利益を受ける企業ではなくても、円安により売上の上昇が見込まれる企業と取引のある企業も間接的に利益を受けられる可能性があります。

(2)外貨で給与を受けている人

海外に在住する日本人が現地通貨建てで給与を貰っている場合、円安により日本円に換算すると高額の報酬になる可能性があります。最近、ハワイのウエイトレスがチップ込みで「月収100万円」という記事がありました。その他、海外に在住していなくても、ネットで海外の仕事を受注することができるので、日本に居ながら外貨を稼いでいる場合、円安のメリットを享受できます。

(3)海外資産を保有する人

収入だけでなく、外貨建ての資産を持っている人も円安のメリットを享受することができます。たとえば、1ドル100円の時に、10万ドル(1,000万円相当)のドル建ての外貨預金をしていた場合、1ドル150円になったタイミングで円に両替すれば、1,500万円相当になります(手数料は考慮していない)。

●円安で損をする人

(1)円安で業績が悪化するところで働く人

円安で業績が悪化するところで働いている人は、給与やボーナスがカットされる可能性があります。給与やボーナスがカットされるだけならまだ良いですが、場合によってはリストラされる危険性もあります。具体的には次のような業種になります。

① 輸入産業

輸出産業が円安で儲かるのと対照的に、輸入業は業績が悪化する可能性が高いと言えます。輸入業は商品を外国から仕入れて日本で販売するので、円安により調達コストが上昇するからです。調達コストが上昇した分を価格に転嫁すれば、販売価格が上がるので、売上は減少します。具体的には、石油や金属などの鉱業、農産物、畜産、魚介類を輸入している会社などが影響を受けます。これらの業務は大手商社でも行っていますが、大手商社の場合、ドル建てでビジネスを行っていることが多いので、円安はプラスの要因と考えられています。

② 繊維・服飾

繊維・服飾は原材料の多くを海外から調達しており、また、外国で生産も行っているため、原材料価格の高騰と円安で原価が上昇しています。そのため、国内製品の価格も上げざるを得ず売上が厳しくなることが予想されます。

③ 建材・家具

建材や家具には木材などの資材が使われますが、資材の多くは輸入に頼っています。円安により資材価格が高くなるため、販売価格が上昇し、売上に大きな影響があります。

④ エネルギー産業

日本は資源があまりない国なので、石油や天然ガスはほとんど輸入に頼っています。OPECによる石油の減産とロシアによるウクライナ侵攻により、石油や天然ガスの価格は高騰しています。東日本大震災以降原子力発電を停止し、火力発電に頼っていることもあり、電気料金やガス料金は値上がりしています。価格が上がれば利用料が減るので、エネルギー産業の経営は厳しくなります。

⑤ その他

円安で業績が悪化する企業と取引のある企業は、場合によっては取引量が減る可能性があるため、利益が減少する可能性があります。

(2)海外へ行く人

円安により海外旅行代金が高くなるため、海外に行く人にとっては負担が大きくなります。旅行の場合、単なるレジャーなので、それ程深刻な話ではありませんが、留学や海外赴任を計画している人にとっては、大きな影響があります。

(3)ブランドが好きな人

ハイブランドの商品の多くは海外製なので、円安になるとただでさえ高額な商品がさらに高くなります。そのため、ブランド好きの人にとって円安は大敵と言えます。

(4)日本円の資産しかない人

外貨資産を持たず、日本円の預貯金しかない人は、円安により実質的な購買力が減少します。円安は海外での円の購買力を下げるため、海外の製品を購入しづらくなります。また、日本製品の多くは原材料を輸入に頼っているため、海外製品だけでなく日本の商品価格も上昇します。その結果、これまで買えていたものが買えなくなります。今の日本では、インフレも発生しているため、日本円の貨幣価値は下がります。特に、老後資金を預貯金だけで管理しているという人は、老後設計に狂いが生じる可能性があります。

●今後何をしたらいい? 注意点は?

10月に1ドル150円台になったときは、今後どうなるのか心配になりましたが、今は138円台まで戻ってきているので、以前ほどの緊張感はありません。しかし、再び円安が進む可能性は十分にあります。

そこでリスクヘッジの方法ですが、外貨資産を持つというのが大事になります。一部の資産を外貨建てで持っていれば、円の価値が下がってもその外貨が下がらなければ、リスクを回避できるからです。

ただ、注意が必要なのは、外貨建ての取引をする場合、円に換算する際に手数料が発生するということです。外貨をそのまま使えるのであれば問題ありませんが、必ず円に戻して使うという場合、手数料も考慮して投資する必要があります。

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