尾木ママが批判する武雄市の「反転授業」 子どもの「教育を受ける権利」は大丈夫?
学校の他に塾や通信教育で勉強する子どもは少なくない

尾木ママが批判する武雄市の「反転授業」 子どもの「教育を受ける権利」は大丈夫?

学校で教えてもらい、家で復習する。従来の学校でごく当たり前のように行われてきた授業形態を180度逆転させた「反転教育」を、佐賀県武雄市の公立小学校が、この春から始める。

「反転授業」を受ける児童は、まず授業の前に自宅でiPadなどを使ってビデオを見ることで「新しい知識」を獲得する。教室での授業はその知識を応用・発展させたり、不足点を補う場所になる。こうすることで、単なる知識の詰め込みで終わっていた従来型の授業よりも、より効果の高い教育が実現できるという触れ込みだ。

一方で、この反転授業に疑問を投げかける人もいる。「尾木ママ」の愛称で知られる教育評論家の尾木直樹氏は「高校・大学レベルの方法論」と指摘。学校の「責任放棄」だとして、ブログで痛烈な批判を展開した。

たしかに「自宅での予習」を前提とする教育がうまくいくかどうかは、それぞれの子どもの「家庭での学習環境」に大きく左右されそうだ。こうした手法の導入が、子どもから「教育を受ける権利」を奪う危険性はないのだろうか。南川麻由子弁護士に聞いた。

●予習できない児童への配慮は十分か

「反転授業を導入したからといって、十把一絡げに『学習権』が侵害される、つまり憲法で保障されている『教育を受ける権利』が侵害されると、決めつけることはできません。

しかし、やり方しだいで、子どもの学習権の侵害となってしまう危険もはらんでいる点には、注意が必要でしょう」

南川弁護士はこのように指摘する。どんな点に注意すべきなのだろうか。

「公立の小学校は、多種多様な家庭環境・意欲・学力の生徒が集まる公教育の場ですから、なかには自宅予習をこなすのが難しい生徒もいます。また、今回の武雄市のケースでは市が無償でiPadを配るようですが、自宅学習用の端末の費用が家庭の負担になる場合は、端末を持つことができない児童も出てくる可能性もあります。

もし、教室での授業において、そうした児童への配慮が一切なされなければ、児童は応用的な授業に全くついていけず、結果的に学びの機会を奪われることになりかねません。

つまり、反転授業を取り入れるのであれば、予習していない児童にも配慮した授業の進め方、教室外予習の支援による家庭の負担軽減、魅力的でわかりやすい自宅予習用コンテンツと端末の提供、といった創意工夫が必要となります」

小学校における公教育という観点からすれば、様々な事情で「予習できない児童」の存在を無視するわけにはいかないだろう。

●実情に合わせた実践と検証が必要

逆に言うと、そうした取り組みが奏功すれば、公立小学校での「反転授業」がうまくいく可能性もあるのだろうか。

「もし、こうした創意工夫に満ちた取り組みがうまく行けば、児童に自宅学習の習慣を身につけさせたり、創造的でより教育効果の高い授業が実現できる可能性もあると思います。しかし、ただでさえ忙しい現場教員の過度な負担増にならないか、心配する声もありますね。

反転授業が成功するかどうかは、『やり方しだい』という側面がありますので、今後は教育現場の実情に即した形で実践を積み重ねたうえで、メリットとデメリットの両面を検証していくことが求められると思います」

南川弁護士はこのように述べ、子どもたちの学習権を守るためには、反転授業の内容や成果をしっかりと検証していく姿勢が不可欠だと指摘していた。

(弁護士ドットコムニュース)

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