無免許運転の木下都議、議会欠席でも「月132万円」…議員をやめさせられないの?
木下氏のウェブサイトより

無免許運転の木下都議、議会欠席でも「月132万円」…議員をやめさせられないの?

無免許運転で人身事故を起こした木下富美子都議が、8月20日の都議会臨時会の本会議を体調不良として欠席した。

木下都議は、今年7月の都議選の期間中、無免許(免停中)運転で人身事故を起こしたが、その事実を公表せずに再選された。

この事故が発覚したあと、木下都議は、所属していた「都民ファーストの会」を除名されたほか、7月23日の都議会で議員辞職勧告の決議案が可決されている。

しかし、その後も一向に公の場に現れず、説明もおこなわないまま、都議の地位にとどまっていることから、批判が高まっている。

現在も、議員報酬など計132万円が月々支払われているという。議員をやめさせたり、報酬を減らしたりはできないのだろうか。元警察官僚で公務員関係にも詳しい澤井康生弁護士に聞いた。

●地方自治法にもとづく「除名処分」はむずかしい

――無免許で人身事故を起こしたとして、議員をやめさせることはできないのでしょうか?

議員が一定の法違反を犯した場合、議会は議決によって、その議員に懲罰を科することができます(地方自治法134条)。そして、懲罰には戒告、陳謝、出席停止、除名があります(同135条)。

ここでいう除名は、議会からの除名であり、強制的に議員としての地位を喪失させることができます。

議会には、その自律権の発動として、議会の秩序を乱した議員に対する懲罰権が認められています。そして、懲罰を科することができる事由は、議会の構成員たる議員としての行為に伴う義務違反であって、かつ、議会の円滑な運営を阻害するおそれのある行為でなければなりません。

議員たる地位を離れた個人的行為は、これにあたらないとされています(最高裁昭和28年11月20日判決)。

今回のケースにあてはめると、無免許で人身事故を起こしたのは議員に当選する前の話であり、議会の構成員たる議員としての行為に伴う義務違反とはいえません。また、議員たる地位を離れた個人的行為と言わざるをえないと思われます。

そうすると、残念ながら、無免許で人身事故を起こしたことを理由に地方自治法上の懲罰権にもとづき、除名処分をすることは難しいと言わざるをえません。

●いきなりの除名処分は慎重に検討する必要がある

――議会を欠席していることを理由に懲罰を科すことはできないのでしょうか?

地方自治法には「普通地方公共団体の議会の議員が正当な理由がなくて招集に応じないため、又は正当な理由がなくて会議に欠席したため、議長が、特に招状を発しても、なお故なく出席しない者は、議長において、議会の議決を経て、これに懲罰を科することができる」(137条)という規定があります。

したがって、議長がその議員に招状を発し、それでも議員が合理的な理由なく出席しなければ、議会の議決により懲罰を科することができます。

今回の場合においても、この手続きを経れば、欠席を理由とする懲罰を科すことができます。

ただし、懲罰権を行使できるとしても、いきなり除名処分までできるかは慎重に検討する必要があります。

除名処分は議員としての地位を喪失させる重大な処分であることから、場合によっては、社会観念上著しく妥当性を欠き、議会の自律権に基づく裁量権の範囲を超え、またはこれを濫用したものとして違法とされるリスクがあります。

過去の事例でも、議会で侮辱的な発言に対する懲罰として陳謝処分を受けたもののこれに従わなかった議員に対して除名処分がなされた事件について、原審では除名処分が有効とされたものの、控訴審では具体的事情を考慮すると除名処分は妥当性を欠くとして取り消されたケースがあります(名古屋高裁平成25年7月4日判決)。

今回のケースでも、慎重を期するのであれば、欠席を理由とした懲罰で陳謝処分を何回か繰り返したうえで、これにも従わないとして最終的に除名処分とする方法があると思います。なお、都民感情に配慮して、欠席を理由にただちに除名処分とする荒技も相手が争ってこない可能性を考慮すれば、ありえるかもしれません。

●議員報酬は「地位を有すること」から生じるとされている

――欠席していることを理由に議員報酬の減額はできないのでしょうか?

一般に、議員報酬請求権は、議員としての具体的活動をおこなったことから生じるのではなく、議員としての身分ないし地位を有することから生じるとされています。

たとえば、刑事事件で逮捕起訴されて身柄拘束された結果、議会を欠席した場合であっても、議員報酬は支給しなければならないのです(横浜地裁平成13年8月29日判決)。

ただし、議員としての活動がまったくできない場合に議員報酬を減額しうるか否かについて、条例で規定することができます。条例に減額の定めがあれば、減額もできると解されています(横浜地裁平成13年8月29日判決)。

今回のケースでは、現在の東京都の条例には議員報酬を減額できる規定がないことから、残念ながら議員報酬を減額することはできないという結論になります。これまで想定していなかったとはいえ、早急に条例を改正して議員報酬を減額できる規定を設けるべきでしょう。

なお、最終手段として、地方自治法に基づく住民による解職請求(リコール)も考えられますが(同80条)、無投票で当選した場合を除き、議員に就任してから1年間はできないとされているので(同84条)、今すぐはおこなえません。

以上より、即効性のある制裁はなかなか難しいのです。しかし、無免許で人身事故を起こした事実を隠して当選し、その後も議会を欠席しているにもかかわらず議員報酬を受領しつづける状態を放置することは都民感情に著しく反します。

都議会においては、欠席を理由とした懲罰権の行使や、議員報酬を減額できる条例改正などの措置を早急に検討すべきでしょう。

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