新型コロナの影響による店舗の休業について、会社が休業補償をしなかったのは違法などとして、首都圏の飲食店でアルバイトとして働く30代女性が7月21日、運営会社のフジオフードシステムを相手取り、計約180万円を求めて横浜地裁に提訴した。女性側代理人によると、コロナ禍の休業手当をめぐる訴訟は珍しい。
訴状によると、女性が勤務していた店舗は、2020年4月の緊急事態宣言で入居する商業施設が休業となったことから、同年5月末まで休業となった。
すでにシフトが確定していた数日分の補償はあったものの、5月分については補償がなく、女性は有給休暇をすべて使用した。一方、正社員については100%補償があったという。
労働基準法26条では、休業の責任が会社側にあるときは、会社側に休業手当の支払いを義務付けている。一方、コロナ禍では、この休業手当の要否にかかわらず、企業が払った休業手当を国が一部肩代わりする「雇用調整助成金」の仕組みも拡充された。
ところが女性は、「雇調金などの制度も整えられたのに、会社はかたくなに休業手当の支払いを拒んでいます」と話す。
女性側は、(1)会社側が休業補償をしないのは、労基法26条や民法536条2項に違反する、(2)100%補償があった正社員との待遇差は、パート有期法8条が禁じる不合理な格差に当たるーーなどと主張している。
裁判では、入居する商業施設ごと休業になった今回の休業が、会社側の責任と判断されるかなどが争点になるとみられる。また、雇調金を使わなかったことが判決に影響するかどうかも今後の実務に影響してきそうだ。
なお、企業から休業手当が支給されない場合は、国から従業員に直接支給される「休業支援金・給付金」の仕組みもある。女性も申請はしているが、裁判を通して、会社に休業手当の支払い義務があるかをはっきりさせたいという。
女性が加盟する飲食店ユニオンの原田仁希さんは、「コロナを理由とした休業手当未払いが違法となれば、コロナの影響で休業手当が払われなかった多くの労働者の救済になる」と強調した。
取材に対し、フジオフードシステムの代理人は「訴状が届いていないのでコメントは控えたい」と話した。