不倫相手との痴話喧嘩が警察沙汰になってしまった——。警察で話した内容が配偶者にバレてしまうのか不安を抱えているという相談が、弁護士ドットコムに寄せられました。
相談者の女性は、通りがかりの人に不倫相手との喧嘩を通報され、警察でダブル不倫であることを話しました。その後、身元引受人としてお互いの配偶者が警察まで来ることになりました。
女性はなんとか誤魔化したため夫に不倫の事実はバレていませんが、不倫相手の妻は逆上。 不倫相手は女性の名前を隠していますが、妻は離婚調停を申し立てる予定のようです。
女性は「離婚調停になったら警察で話した私と不倫相手の調書は、妻に開示されるかもしれない」と心配しています。
離婚調停になった場合、警察での調書は利用されるのでしょうか。また、現時点で証拠は掴まれていないようですが、慰謝料請求はされるのでしょうか。山本明生弁護士に聞きました。
●調書の利用は考えにくい
——離婚調停において、警察で話した内容が利用される可能性はあるのでしょうか。
警察における調書というのは、主に刑事事件の証拠として作成されるものです。 今回の喧嘩については、刑事事件にまで発展していないものと思われますが、そのような不起訴記録については、原則として非公開となっています。
そして、例えば、裁判所から文書送付嘱託があり、その文書開示の必要性が高いと認められるような場合には、例外的に開示がなされるということになっています。
ただ、供述調書については、関係者の名誉やプライバシー等を侵害するおそれが高く、その開示については厳しい運用がなされているのが実際です。
ですので、離婚調停において文書送付嘱託等をすることは考えられなくはないですが、調書が開示される可能性は低く、調書が利用されるということはあまり考えられないのではないかと思います。
●自分で把握していない証拠がある場合も
——慰謝料請求はされますか。
今回のケースにおいて、慰謝料請求をするかどうかは、不倫相手の妻の意思によるものです。たとえ不貞行為の証拠を掴んでいなかったとしても、慰謝料請求をすること自体は可能です。
調停においては、あくまで当事者間における合意によって紛争を解決するものですので、証拠がなくても、当事者間において合意できれば紛争解決は可能です。
——合意できなかった場合は、どうなるのでしょう。
当事者間で合意ができない場合には、訴訟での解決ということになり、判決は証拠に基づいて事実を認定した上でなされますので、この場合には証拠が必要となってきます。 そして、証拠がなければ、不貞行為は認定されず、慰謝料請求も認められないということになります。
——不貞行為の証拠が掴まれていない場合、不貞行為はしていないと突き通すことも可能なのでしょうか。
証拠が掴まれていないと思っている場合に、不貞行為をしていないと否認し続けることは可能でしょうが、こちらが把握していない証拠がある場合もありますし、それこそ不倫相手がその妻側の証人になり証言するということも十分に考えられます。
そのような場合、否認を突き通すのは至難の業ですし、裁判所の印象も悪くなり、最悪の場合、慰謝料が増額される可能性がないともいえません。
どのような対応をするのかは相談者次第ですが、これらのようなデメリットがあるということを十分に考えて決するべきであると思われます。