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弁護士が読み解く「小室文書」4つのポイント 解決金、返済義務…結局どうなったの?
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弁護士が読み解く「小室文書」4つのポイント 解決金、返済義務…結局どうなったの?

秋篠宮家の長女・眞子さまとの婚約が内定している小室圭さんが4月8日、母親と元婚約者の男性とのあいだであった金銭トラブルについて、あらためて説明する文書を公表した。

宮内庁の西村泰彦長官は同日開かれた会見で、「丁寧に説明されている」と評価する一方、概要部分を除いてもA4サイズで24ページ、3万4000字超というボリュームの文書で、目を通すのにも一苦労するほどの「大作」だ。

文書では、「私と眞子様の気持ち、そして結婚に対する思いに変わりはありません」としたうえで、「金銭トラブルと言われている事柄に関する誤った情報をできる範囲で訂正することを目的としています」としている。

金銭トラブルに焦点をあてた文書には違いないが、ポイントはどこにあるのだろうか。秋山直人弁護士によれば、ポイントは「解決金での和解の目的」「受け取ったお金は贈与か借金か」「返済義務の有無」「詳細な経緯の公表に対する評価」の4点となる。秋山弁護士にそれぞれ詳しく読み解いてもらった。

●ポイント1「検討した『解決金での和解』の目的は?」

小室さんはこれまでに、金銭トラブルについて、「借金の返済」ではなく、「解決金」を支払うことで和解することを検討したことがある旨を明かしている。

もっとも、複数の弁護士に意見を求めたうえで、「お金をお渡しすれば借金だったことにされてしまう可能性は高い」と判断。「何の話し合いもせずにお金をお渡しするという選択はしない」ことにしたようだ。

支払わなかったとはいえ、検討した以上何らかの目的・意図があったはずだ。解決金を渡して和解を目指すことにはどのような狙いがあったのだろうか。

秋山弁護士は、「双方で主張や見解が食い違っていて紛争になっている場合に、どちらの主張や見解が正しいかは置いておいて、ともかく紛争を解決する趣旨で『解決金』をやり取りする、ということは多くある」と話す。

「通常の個人間の民事紛争であれば、貸金であったのか贈与であったのかははっきりさせずに、ともかく解決金としてお金を支払って、それ以上はお互い何も請求しないという形での和解による解決は十分可能でしょう。

ただ、本件の場合は、当事者間の紛争という問題とは別に、皇族の結婚相手の家の問題として世間から見てどう見えるか、という問題が小室さん側にとっては大きいはずです。

そのような観点からすると、ただ解決金としてお金を払うだけでは、かえって世間から、『なんだ借金を返していなかったのか』と見られてしまうというリスクを意識せざるを得なかったのではないかと思います。

そのため、小室さんの代理人は、元婚約者の方と、問題が解決した旨の共同でのアナウンスを目指したのでしょう」(秋山弁護士)

●ポイント2「受け取ったお金はもらったもの?借りたもの?」

かねてより注目されているのが、小室さんの母親と元婚約者の男性との間であった「金銭トラブル」だ。文書には、トラブルの経緯が詳細に記されているが、金銭を受け取った事実については基本的に争われていない。

そのうえで、その金銭が「贈与なのか借金なのか」については、次のように記されている。

「平成24年(2012年)9月13日に元婚約者の方から一方的な婚約解消の申し出を受けた際、母が婚約期間中に受けた支援について清算させていただきたいとお伝えしたところ、元婚約者の方は『返してもらうつもりはなかった』とおっしゃいました」

「婚約破棄の時点までは、貸し付けであったとすべきお金と贈与であったとすべきお金の両方が存在していた可能性があると整理するのが妥当だと思われます。

それが、平成24年(2012年)9月13日に元婚約者の方がおっしゃった『返してもらうつもりはなかった』という言葉によって、貸付金だったものについては(贈与だったことに転化するのではなく)母の返済義務が免除されたことになるでしょうし、贈与金だったものについては当初から贈与であったことが2人の間であらためて確認されたということになるでしょう」

元婚約者の男性の「返してもらうつもりはなかった」という発言については、録音した音声データが存在し、「私が録音しておいた方がよいのではと考え咄嗟に録音したもの」だという。

贈与も借金も入り混じっているとの主張だが、「もらったお金」か「借りたお金」かでは、返済の有無が変わるため、その意味するところは大きいはずだ。

この点、秋山弁護士は、「婚約している男女の間で、口頭のやり取りの中で、法的に見て贈与と解されるものと、借金(金銭消費貸借)と解されるものが混在しているということはあり得る」と述べる。

「金銭を無償で与える意思表示があり、相手方がそれを受諾すれば『贈与』です。一方、金銭の返還の合意があった上で金銭の交付があれば、それは『借金(金銭消費貸借)』です。

小室さんの母親が元婚約者に対し『婚約期間中に受けた支援について清算させていただきたい』と伝えたとの点は、婚約解消を申し入れられたことを受け、それまで受け取ったお金には贈与や借金が入り交じっているという認識のもとで、一定額を支払って清算することの話し合いを求めたと解釈できると思います。受け取った全額を返すという意味ではないでしょう。

それに対して元婚約者が『返してもらうつもりはなかった』と発言したことを踏まえて、小室さん側は、借金の部分について、返済義務が免除されたと主張しているわけです」(秋山弁護士)

●ポイント3「借りたお金でも、返済する義務はなかった?」

小室さんは、元婚約者の男性の「返してもらうつもりはなかった」との言葉を受け、母親が「婚約破棄に関する損害賠償を請求する権利を放棄したと考えられます」とした上で、次のような理由で「返済する義務はなくなった」と解釈できるとしている。

「この元婚約者の方の言葉と母の対応によって、たとえ元婚約者の方が金銭の返還を請求する権利を持っていたとしても、それは母の権利(損害賠償請求権)と共に清算されたことになり、母が元婚約者の方へ金銭を返済する義務はなくなったと解釈することができます」

この「婚約破棄に関する損害賠償」の中身について、秋山弁護士は、「一般には、慰謝料や、婚約を前提として支出した婚約指輪の代金、結納費用、新居の準備費用等の実損の賠償」が考えられるという。

「ただ、ここでは実損の話は出ていないようですので、主として慰謝料を意味していると考えられます。『清算』とは、一方的な『相殺』の意思表示ではなく、ここでは、合意による清算という意味だと思います。

つまり、小室さん側の法律構成としては、婚約期間中の金銭授受には贈与と借金が入り交じっており、母親から元婚約者に、借金部分について一定額を支払う内容の清算を申し出たが、元婚約者が『返してもらうつもりはなかった』と表明して借金部分の返済義務を免除したこと、それを受けて母親も元婚約者に対して、婚約破棄に関する慰謝料等の損害賠償を請求する権利を放棄したことで、口頭での合意により、借金部分については清算された、ということでしょう」(秋山弁護士)

このような法的主張はあり得るのだろうか。この点、秋山弁護士は「十分理解できる」という。

「裁判になれば客観的な証拠が何より重視されますので、『返してもらうつもりはなかった』という録音を軸として、このように法律構成をすることは、弁護士としては十分理解できます。

『返してもらうつもりはなかった』を、金銭の返還の合意がなかった(だから借金ではない)、と構成することも考えられると思いますが、小室さん側は、『(現時点で)返してもらう必要はありません』という趣旨を表明されたと解釈しているわけで、多少拡張的な解釈ですが、主張としては十分あり得るかと思います」

●ポイント4「詳細な経緯・見解の公表、どう評価する?」

秋山弁護士は、このような金銭トラブルについて、「通常はここまでこじれることはあまりない」という。

「弁護士をやっていれば男女間のトラブルの間に入ることは多いですが、どちらかが裁判を起こせば、お互いに法的主張をした上で、多くの事案では裁判所において、ある程度妥当な落としどころに落ち着いて解決することが多いです」

男女間の金銭のやり取り、婚約破棄にもとづく慰謝料等の請求、どちらもそれ自体はそこまで珍しい話ではない。ここまでこじれてしまったのは、やはり「通常ではない」事情が絡んでいるからということだろう。

「小室さんのケースは、単なる男女間の金銭トラブルという事件を超えて、皇族の結婚相手の家の問題として世間で大きく取り上げられるために、色々な思惑がからみ、解決が非常に困難になった印象です。

元婚約者の側で記者が代理人的に関与していることについては、いくら『窓口』といっても、弁護士法違反の問題があると思います。やはり、トラブルの間に入る人間は、資格を持った人間でないと、トラブルの解決に向けて物事がうまく進まず、かえってこじれることが多いのではないでしょうか。

今回、小室さん側がここまで詳細に経緯や見解を公表したことについては、『世間』の理解を得よう、誤解を解こうという趣旨と思われますが、かなり思い切った印象です。

吉と出るか凶と出るか、『世間』の反応は読めませんが、個人的には、問題の大きな部分が、当事者間のトラブルというよりも、『世間』にどう見られるかという面にある以上、今回のように詳細に経緯や見解を公表したことについては、小室さん側の戦略としては理解できるという印象です」(秋山弁護士)

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プロフィール

秋山 直人
秋山 直人(あきやま なおと)弁護士 秋山法律事務所
東京大学法学部卒業。2001年に弁護士登録。所属事務所は四谷にあり、不動産関連トラブルを中心に業務を行っている。

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