駅員が乳児をベビーカーに乗せたまま階段を下ったら、乳児が転落して頭部を骨折——。こんな悲しい事故がネットで話題となった。
NHK(2月27日)によると、駅員は2月25日、滋賀県大津市にあるJR湖西線の志賀駅で、幼児と乳児を連れた母親の依頼で、ホームから改札階までベビーカーを運びながら階段を下りた。
その際、乳児はベビーカーに乗ったままで、ベルトを装着していなかった乳児がシートから床に落ちた。JR西日本のマニュアルでは、ベビーカーの移動の際は子どもを下ろした状態でおこなうと決まっているが駅員は忘れていたという。
●「心が痛いニュース」
ツイッターでは「心が痛いニュース」「普段からベルトしてないのかな…」「お母さんも駅員さんもどっちも不注意だったと思う」と様々な意見が集まっている。
中には、「全駅にエレベーター設置しておけば悲劇は起こらなかった」「JRなんでいまだにエレベーターない駅多いの?」とエレベーターがあれば防げた事故だと話す人もいた。
果たして、今回の事故で駅員は法的責任を問われてしまうのだろうか。田沢剛弁護士に聞いた。
●「安全に行うべき業務上の注意義務がある」
——乳児が転落した原因は複数ありそうですが、駅員は法的責任を問われてしまうのでしょうか。
鉄道旅客である母親に代わってベビーカーをホームから階下に下ろす駅係員の行為については、これが旅客に対して提供されるサービスの一環であるとすれば、安全に行うべき業務上の注意義務があります。
乳児を乗せたままベビーカーを下ろそうとして、乳児を転落させてしまったというのであれば、駅係員自身にその義務違反があったものとして、不法行為責任は免れないでしょう。JR西日本も、その使用者としての責任を問われることになります。
——ベビーカーに乗った乳児がベルトを装着していなかったと報道されています。駅員の責任は過失相殺されますか。
問題は、その乳児がベルトを装着していなかったことについて、母親にも責任があるとして、過失相殺の対象となるのかという点です。
これについては、賛否両論あるとは思いますが、母親がベビーカーを階下に下ろすことを駅係員に委ね、駅係員がこれを引き受けた以上は、乳児の安全は、全面的にその駅係員の支配下に置かれたものと考えられます。
そのため、駅係員に委ねられる前の段階で、ベルトが装着されていなかったことを捉えて過失相殺の対象にするというのでは、その駅係員の業務上の注意義務を軽減してしまう結果となりかねず、疑問があります。
JR西日本のマニュアルでは、乗客のベビーカーの移動を手伝う際には安全確保のために子どもを下ろした状態で移動させることになっていたと報道されています。
そのマニュアルに従わず、ましてやベルトを装着させないままベビーカーを運ぼうとした駅係員の行為は非常に危険であり、その責任は非常に重いというほかありません。