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2021年02月17日 10時26分

「消しゴムを忘れた」児童を3時間半立たせ、教員処分…指導と体罰の境界線は? 弁護士に聞く

「消しゴムを忘れた」児童を3時間半立たせ、教員処分…指導と体罰の境界線は? 弁護士に聞く
神戸市教育委員会の入る神戸ハーバーランドセンタービル(Googleストリートビューより)

神戸市教育委員会は2月2日、神戸市の小学校の男性教諭(25)が2020年12月、「忘れ物をした」などの理由で、担任をする小学3年生の児童3人を長時間にわたり教室内で立たせる体罰を行ったとして、この教諭を戒告の懲戒処分にしたことを明らかにした。

処分の理由について、市教委は、教諭が2020年12月21日、担任を務めるクラスで、男子児童らが忘れ物等をしたことを伝えにきた際、2人の児童を約1時間20分間、1人の児童を約3時間30分間立たせたとしている。

●「自主的な反省の弁などが出てくるのを待っていた」

市教委の担当者は、弁護士ドットコムニュースの取材に対し、体罰が行われた理由は「忘れ物または宿題を忘れたこと」だといい、当日の様子について、「教室の前方にある教諭の机の脇に立ったままの状態だった」と説明する。

「当初、消しゴムを2日連続で忘れた児童と宿題を忘れた児童が立っていたが、宿題を忘れた児童が自分の席に戻る頃、別の宿題を忘れた児童が入れ替わるような形で立つことになった」(担当者)

消しゴムを忘れた児童は約3時間半、他2人の児童は約1時間20分立っていたという。その間も授業は継続していた。

児童を立たせたことについては、教諭が「罰として立っていなさい」と言ったわけではなく、立つよう命じたわけでもないという。教諭は市教委に対し次のように説明したという。

「『これからは忘れ物をしません。貸してもらえますか』などの反省の弁や担任にどういったことを求めるのかといったことについて、自主的な発言が出てくるのを待っていた。そういった言葉が児童から出てこず、時間ばかりが経ち、結果として立ち尽くしている状態を放置している状況になってしまった」

児童を立たせた当日、保護者の1人から連絡があり発覚。市教委は体罰を理由とした戒告の懲戒処分を行った。

処分後も教諭は担任を続けているが、市教委は「1人で授業するのが適切ではない」と判断。教諭のクラスについては教諭以外にもう1人がつく複数指導体制をとっているという。

体罰が許されないのは当然だが、忘れ物などについては教師として指導する必要があることも確かだ。児童を立たせるなどの指導について、体罰との境界線はどこにあるのだろうか。学校や子どものトラブルに詳しい髙橋知典弁護士に聞いた。

●個人がどのような意見を持っていようと「体罰は違法」

——体罰に関わる法規制はどうなっていますか。

体罰は、学校教育法11条で「体罰を加えることはできない」と明文で禁止されています。

教育的に体罰はあっていいかどうかなどという議論は常にありますが、個人がどのような意見を持っていようと、体罰は違法です。

体罰は、2つに分類されます。1つは、殴る蹴るといった「身体に対する侵害を内容とするもの」と、今回のケースのように、長時間の正座をさせたり、立たせたり、トイレに行かせないといった「肉体的苦痛を与えるようなもの」です。

——今回のケースで、市教委は「体罰」と認定していますが、どのように判断するものなのでしょうか。

体罰に該当するかどうかの判断は、「当該生徒の年齢、健康、心身の発達状況、苦痛の状況、当該行為が行われた場所的及び時間的環境、懲戒の態様等の諸条件を総合的に考え、個々の事案ごとに判断する必要がある」とされています。

過去には、授業中に45分間児童を起立させたままにした事例や、クラス児童全員を1時間起立させたままにした事例、生徒30人を15分間正座させた事例でも体罰とされているケースがあります。

こうした事例は、前提になった事情が明らかになっていないために、詳細に検討することが難しいですが、いくつか共通点があります。

たとえば、立たせる体罰としてあげたものは児童、すなわち小学生に対するもので心身の発達が比較的未熟な点、一般の人がしてもこれだけただ立ち続けるのであれば一定の苦痛が伴うと予想される点、授業を受けることができないという副次的な罰が加わっている点、周囲の児童・生徒の目に晒す見せしめになっている点を特に考慮しているといえるでしょう。

●目を向けるべきは体罰にあった「児童のケア」

——今回の体罰では「戒告」の懲戒処分となりました。

体罰などの問題行為のことを非違行為(非行・違法行為)といいますが、こうした非違行為に対する懲戒処分の基準は、あらかじめ各地方自治体で定められています。

神戸市の「教育委員会懲戒処分の指針」によれば、体罰を行った場合で、悪質危険な暴力行為でなく、ケガを負わせていないときは、「減給又は戒告」とされており、そうしたことから、今回は「戒告」とされたのでしょう。

——処分の重さは妥当なのでしょうか。

この処分の重さは、他の長時間の起立の事例とも同程度ですが、他の起立体罰事件に比べ、時間の長さで3時間30分は非常に長く、懲戒の理由も「消しゴムを忘れたから」「自主的な発言が出てこないから」などと、大きく罪と罰のバランスを崩した判断であることから、妥当な重さの処分だったかと問われれば、私は「戒告では軽い」と思いました。

しかし、教員に対する処分の重さよりも、本当に目を向けるべきは体罰にあった「児童生徒のケア」です。

現在の制度では、体罰後、学校に行くことができない子がたくさんいます。見せしめ的な罰は、周囲の児童生徒からのいじめを助長しますし、そもそも罪と罰の重さをわきまえないただでさえ何かがズレてて怖い学校の先生が、戒告という正式とはいえ注意を受けただけでまた同じ教室にいるわけですから、その教室に戻る児童生徒の負担は大きいのです。

特に、小中学校では、自主的に一人で勉強することが難しいため、一度学校に行けなくなった児童生徒の学習の機会の確保やその不安をいかに解消するかが本当の問題です。

たとえば、今回のケースでは、教員本人が児童を立たせたことについて、「罰として立っていなさい」と言ったわけではなく、立つよう命じたわけでもないと説明し、立たせたまま3時間半が過ぎたようです。こうした感覚の先生が支配する密室の中に閉じ込められる不安感は尋常ならざるものだと考えるべきです。

●必要な指導でも「長くとも10分程度で着席させるべき」

——立たせることについて、指導と体罰の境界線はどう考えればよいのでしょうか。

私は、立たせることは、一時的に児童生徒を自分と向き合わせるために、児童生徒の集中力を引き出して話をするために行うものであって、それ以上行うものではないと考えています。

そもそも、罰は、簡単にいえば「その罰から出てくる不利益・嫌な気持ちを避けようとして、罪になる行為を相手にさせない」機能を期待されています。

「ただただ立たせる」ことから出てくる「不利益・嫌な気持ち」が何かと考えれば、「立ち続ける痛み」か「人前で立たされる恥ずかしさ」でしょう。しかし、この思考自体が、すでに体罰を行う人の発想だと思います。

このため、少なくとも「立ち続ける痛み」を与えてやろうという視点を完全に排除して、一時的に立たせて指導するとしても、「長くとも10分程度で着席させるべき」だと考えます。

また、こうした議論には、それでは現場の規律が守れないといった意見も出ますが、それは上述した被害児童生徒に配慮するような制度や「痛み」を利用した解決方法以外の懲戒制度の整備といった学校制度の見直し自体が必要なのだと考えるべきでしょう。

取材協力弁護士

高橋 知典弁護士
第二東京弁護士会所属。学校・子どものトラブルについて多くの相談、解決実績を有する。TBS『グッとラック!』水曜コメンテーター。教育シンポジウム、テレビ・ラジオ等の出演。東京こども専門学校講師としても活躍。
事務所名:レイ法律事務所
事務所URL:http://rei-law.com/

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