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女性アナに迫る「卑劣な権力者」、セクハラ被害でも「泣き寝入り」の制作現場
鎮目博道さん(2020年12月、国分瑠衣子撮影)

女性アナに迫る「卑劣な権力者」、セクハラ被害でも「泣き寝入り」の制作現場

テレビ番組で芸能人やスポーツ選手と共演し、プライベートも注目される女性アナウンサーたち。華やかと称されることも多いが、本当にそうだろうか。

元テレビ朝日プロデューサーで、現在はフリーランスとして活動する鎮目博道氏は、「いまだに30歳定年説が根強く、年齢や番組制作者の意向に左右される微妙な立ち位置にいる」と説明する。

鎮目氏に女性アナウンサーの働き方やセカンドキャリアについて聞いた。(ライター・国分瑠衣子)

●制作費が減り、よりタレント性が求められるようになった

――なぜ女性アナウンサーがタレントのようになったのでしょうか。

「昔はアナウンサーの仕事はニュース原稿を読んで伝えることでしたが、女性アナウンサーにタレント性を求める番組が増えました。原稿を読むスキルに加えて、キャラクターが立つことやかわいさといったことも求められるようになったのです。

背景には、番組制作費の減少があります。芸能人の代わりに月給制の女性アナウンサーを使えばコストを抑えられるので、アナウンサーはよりタレント性を求められるようになっている。“サブスクの出演者”と言えば分かりやすいでしょうか。

一方、情報番組やワイドショーを見ると分かると思いますが、芸人さんやタレントさんが活躍しています。収録と違って、生放送は安い。制作費が減って、ニュースなどの映像を数多く作れないので、芸人さんのトークやアドリブの上手さでしのいでいる形です。どの局も放送時間が被っているので、少ない予算をメインの芸能人に集中的に使うことで差別化を図っている部分もあります。

本来、アナウンサーはニュース、芸能人はバラエティーだったはずなのですが、今は逆転している部分もあるんですね。このような経緯で、女性アナウンサーは会社員でありながら、芸能人のような2つの顔を持つようになったのです」

――入社してからもライバルが多いのですね。

「仕事を取る難しさもあります。会社員の場合、上司が仕事を割り振ることが多いと思いますが、テレビ局はアナウンス部の上司がシフトを組んで業務を振ることは少なく、番組の前後で入る『●●の提供でお送りします』というスポンサーを紹介するナレーション(通称・100R)や定時ニュースぐらいです。

テレビ番組はプロデューサーなど制作側の意向が大きく働きます。アナウンサーは制作サイドに指名されなければ番組に出ることができないことが多いので、社内で仕事をとってこなければならない。社内だけではなく、番組制作を請け負う制作会社の有名プロデューサーから『あのアナウンサーと仕事をしたい』と声がかかるような努力も必要です。

視聴者もアナウンサーに若さやかわいさを求める傾向にあるので、本来は実績を積めば、より難しい仕事が増えるはずなのに、先輩よりも後輩のほうが有利になってしまうこともあります。また、番組の視聴率がとれないと、制作側は自分たちの責任を棚に上げ『出演者がよくないのでは』とキャスティングを変えることもあります。

そうすると、調整がいらず、簡単に変えられるので、フリーアナウンサーを起用することもある。アナウンサーの商売敵は芸能人だけでなく、フリーランスVS局アナというライバル関係もあります」

ペイレスイメージズ 2 / PIXTA ペイレスイメージズ 2 / PIXTA

●性的関係を迫られて断ったら担当を変えられた人も

――鎮目さんはプレジデントオンラインの記事で、女性アナウンサーが積極的に有力者との接待に行くのは、自分の営業のためと解説しています。パワハラやセクハラのリスクが高まりませんか。

「アナウンサーの仕事は人脈で決まることが多いので、接待の同席は多いです。勉強になるし、セカンドキャリアにもつながってくるので、いやだと思ったことはないと言う人もいますが、慣れ慣れしくされたなどという声は実際に聞きます。

ただ、激しい競争を勝ち抜いてきただけに、ポジションを失うことを恐れて抗議しない人は多いのではないのでしょうか。実際、性的関係を迫られて断ったら担当を変えられてしまった、悔しくて上司に抗議したという人もいます。

僕が入社した20世紀は、アナウンサーも今のように入社後すぐに番組に出るようなことはなく、厳しい訓練を積んで3年ほどたってから番組を持っていた。でも今はテレビ局に余裕がなくなっていて、すぐ活躍できる即戦力の人材を採用する傾向が強くなっています。

華やかな舞台に立つ人がいる一方、目立たない人もいて『何とかして使ってもらわなければ』というプレッシャーが強くなってしまう。その中でパワハラ、セクハラの被害を表ざたにしにくくなってしまうことはあると思います。

いまだに『30歳になったら仕事はないよ』といわれたりもする業界です。実際、男性は30歳を過ぎてもアナウンス部に在籍する人が多いですが、女性は広報、秘書、記者になる人も多い。僕は報道部にいましたが、元アナウンサーという同僚はたくさんいました」

――女性アナウンサーはキー局のアナウンサー、地方局の契約アナウンサー、フリーアナウンサーなど雇用形態がさまざまです。

「格差は非常に大きいですよね。キー局のアナウンサーは社内でも他の職種よりもわずかですが高い報酬を得ています。有名だから、結婚式やイベントの司会などの副業収入も大きい。人気がありすぎて、フリーになる人もいる。

しかし、地方のテレビ局では契約アナウンサーが多く、自分でカメラを回して撮影し、局に戻って編集してナレーションを入れています。契約期間が終わればまた別の局を探さなければなりません。

アナウンサー志望者は、北海道から沖縄まで全国のテレビ局の採用試験を受けます。契約が切れたら東京や大阪に出て勝負しようという地方局のアナウンサーは多い。とても残念なことですが、キー局での出演を目指す地方局出身のフリーアナウンサーを狙って、性的な関係を持とうとする番組制作者の話は少なからず聞きます」

●一生もののスキルを持っているアナウンサーは強い

――女性アナウンサーのセカンドキャリアについてはどう考えますか。華やかな世界に身を置いてきた分、思い切った転身は難しいのでは。

「激しい競争を勝ち抜いてきた女性アナウンサーはすごく根性があり努力家の方が多い。それに高いコミュニケーション力があります。弁護士やフラワーショップの経営者など思い切った転身をする人もいます。

テレビ朝日の宮嶋泰子さんは、スポーツキャスターを務めた後にスポーツの取材も行い、シンクロは日本で一番取材できると言われていますが、一生もののスキルを持っている人は強いですよね。

女性アナウンサーが微妙な立ち位置にいるのは、年齢や番組制作サイドの意向といったものに左右される部分が大きいからではないでしょうか。アナウンサーの数が多いNHKはより過酷です」

――今後は30代以降の女性アナウンサーの働き方も変わってくるのではないでしょうか。

「バラエティーはまだ30歳定年説が根強いですが、ニュース番組は変わってきています。『ニュース23』の小川彩佳アナウンサーは産休をとって母親として復帰しました。TBSはワーキングマザーに向けて番組を発信していきたいのだと思いますし、小川さんに続くアナウンサーが出てほしいです。

男性アナウンサーは記者として現場取材の経験を積み、再びアナウンサーに戻ることが多かった。女性も現場に出て専門性を高めてアナウンサーに復帰する人が増えていくのではないでしょうか。

これまでアナウンサーに若さや可愛さ、純粋さを過剰に求めすぎるのがテレビ局のよくないところでしたが、今は多様な女性アナウンサーが求められつつある過渡期です。『女子アナ』から『女性アナウンサー』と呼ばれる時代がすぐそこにきています」

【鎮目博道(しずめ・ひろみち)氏プロフィール】
プロデューサー・演出・ライター。上智大学非常勤講師。92年テレビ朝日入社。社会部記者の後、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサー。ABEMAサービス立ち上げにも参画。2019年独立。

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