最近、ビール業界を驚かせる新商品をサッポロビールが発表した。第3のビール「極ZERO 爽快ゼロ」(350ml缶、消費税込み145円前後)で、2018年1月30日に発売する。「極ZERO」はかつて国税当局より指摘が入り、第3のビールから税率の高い発泡酒へと区分変更しての販売を余儀なくされた経緯がある。現在も国と係争中のなか、あえて、極ZEROブランドとしての新商品を売り出すことになる。
既存の「極ZERO」は発泡酒として、今回の「爽快ゼロ」とは並行して販売していく。「爽快ゼロ」はアルコール分2.5%でより爽やかな味わいが特徴という。
「監督官庁に堂々と立ち向かった」として業界にはサッポロの姿勢を陰ながら応援する声もあるが、サッポロはあくまで「そうした意図はない」(広報担当者)としている。サッポロが国税当局に追加納付した酒税は115億円。サッポロホールディングスの2016年12月期の最終利益が94億円であることからすれば、実に大きな負担だ。
●350ml缶ビールには77円もの酒税がかかっている
酒税は、お酒を買うときに消費者が負担し、お酒のメーカーが税務署に納める「間接税」。プレモル、エビス、一番搾り、スーパードライ、淡麗、麦とホップ・・・などとビール類の商品は様々。酒税の世界ではこうした商品は麦芽比率などによって「ビール」、「発泡酒(麦芽比率25%未満)」、「第3のビール(新ジャンル)」に分かれている。
コンビニやスーパーでよく目にする350ml缶で考えると、ビールなら77円、発泡酒なら47円、第3のビールなら28円が酒税の税額だ。これらの額が上乗せされて売られている。
しかも小売価格には消費税もかかるので、「二重課税だ」とビールメーカー側は何度も政府に是正を求めている。だが、「取れるところから取る彼らに何を言っても暖簾(のれん)に腕押し」と国税当局に対して諦め顔も少なくない。
●2026年10月にビール類酒税が一本化される方針は既に決定
既に2017年度税制改正で、2026年10月からビール類の酒税を一本化する方針は固まっており、ビール類の酒税は350ml缶なら54.25円に一本化される。現状の77円から減税となる「ビール」の区分に強いメーカーにとっては朗報で、追い風になると鼻息が荒い。ただ、「発泡酒」や「新ジャンル」を好む人たちにとってはありがたくない話だ。
●2018年度からはビール定義が拡大
また、2018年度からは「ビール」の定義が拡大する。これまでは、ビールにトマトやレモンエキスなどを加えた途端、区分が「発泡酒」となり、表示上もビールとはうたえなかった。
欧米では人気のビールなのに、日本では発泡酒として販売せざるを得ない「実態にそぐわない区分」(ビールメーカー担当者)だった。工夫した「クラフトビール」がこの区分のせいでビールとして売れないという状態もあったという。定義拡大は「多様なビールの開発競争に弾みがつく」と、業界に歓迎する声は少なくない。
(取材:弁護士ドットコムニュース記者 下山祐治)早稲田大卒。国家公務員1種試験合格(法律職)。2007年、農林水産省入省。2010年に朝日新聞社に移り、記者として経済部や富山総局、高松総局で勤務。2017年12月、弁護士ドットコム株式会社に入社。twitter : @Yuji_Shimoyama
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