東京都渋谷区は9月10日、2020年4月からはじめた「LINE」で住民票の写しの交付請求ができるサービスをめぐり、総務省が省令改正で同サービスを「違法状態」にしようとしているとの見解を公表した。
同サービスは、利用者が「渋谷区LINE公式アカウント」とやりとりする形式で申請の入力を進めるもので、住民票は後日郵送される。
渋谷区は、本人確認の方式として、マイナンバーカードの普及率を鑑みて、自身の顔写真をスマートフォンで撮影し、その容貌と本人確認書類の顔写真とをAIによる高精度の顔認証技術により判定するとともに、併せて申請情報と本人確認書類の文字情報との整合判定も行う「eKYC」を採用している。
ところが、総務省は、「なりすまし」による申請などを懸念し、サービス開始当初から、オンライン請求では原則として必要となる電子署名を用いていないことを問題視。2020年4月3日には、「電子署名によらない方法によるオンラインによる住民票の写しの交付請求は法令違反」とする通知(技術的助言)を発出していた。
総務省は、オンラインで住民票の申請等をする場合でも電子署名を用いなければならないことを明確にするため、「住民基本台帳の一部の写しの閲覧並びに住民票の写し等及び除票の写し等の交付に関する省令」を改正しようと、8月20日からパブリックコメントを募集している。
渋谷区は、同サービスについて、「これまで申請の改ざん、なりすまし等によるセキュリティ事故は1件も起きていない」としたうえで、総務省による改正の動きについて、「省令改正という手段を用いて渋谷区の方法を違法状態にするという行為」としている。
また、省令改正は「自治体の意欲や民間のイノベーションを、マイナンバーカードの普及の障害として水を差す対応」と厳しく批判。コロナ禍における行政手続のデジタル化は急務で、「様々な自治体の創意工夫、挑戦を促す環境や法整備が重要」としたうえで、「自治体の様々な挑戦を許容できる寛容な国であってほしい」と訴えた。