米国発のコーヒーチェーン「スターバックス」は9月下旬、株式公開買い付け(TOB)を実施して、「スターバックスコーヒージャパン」を完全子会社化することを発表した。
「スタバ」が「スタバ」の子会社になるということで不思議に思う人がいるかもしれないが、そもそも「アメリカのスタバ」と「日本のスタバ」は別々の会社だ。20年ほど前、日本での店舗展開を目的として、米スターバックスと日本のサザビーリーグ社が合弁事業の提携を結び、スターバックスコーヒージャパン株式会社を設立したのだ。
報道によると、サザビーリーグ社は、スターバックスコーヒージャパンの株式の約4割を保有しており、TOBに応募して株式を売却する意思を示しているそうだ。一般株主に向けては、今年の11月から12月にかけて応募期間を設けるという。
ある会社を「完全子会社」にするメリットは、どのようなものだろうか。企業法務にくわしい末永京子弁護士に聞いた。
●「直接的な支配力」を米スタバが手に入れた
「スターバックスコーヒージャパンは、米スターバックスとサザビーリーグとの合弁事業です。TOB(株式公開買い付け)前には、米スタバが株式の約40%を保有していました。
米スタバは、この『株式』と『ライセンス契約の拘束力』によって、日本のスタバに一定のコントロールを加えていました」
これまでも、米スタバが日本のスタバをコントロールしてきた側面はあったわけだ。今回の完全子会社化で、どんな変化があるのだろう。
「完全子会社化は、親会社が株式を100%握って、子会社の上場を廃止するということです。
これにより米スタバは、日本のスタバの利益を、100%吸い上げることが可能になるだけでなく、日本のスタバの経営方針を、自らの経営戦略に沿わせるための『直接的な支配力』を手に入れることになります。
完全子会社化について、米スタバの思惑はさまざまに取りざたされており、実際にどう動くか興味深いところです」
●「現場のモチベーションが気になる」
では逆に、「子会社化される側」の会社にとって、メリットはあるのだろうか?
「今回のようなケースについての一般論としては、資金調達の苦労がなくなる、親会社の持つブランドイメージを最大限活用できるなど、子会社となる側にもメリットがあると考えることはできます。
ただ、子会社側は『支配される』ことになるわけですから、メリットと言えるのは、変化を受け入れるだけのニーズが、子会社側にある場合に限定されると言えるでしょう。
日本スタバが売上高・利益について過去最高を更新したとのプレスリリースがされたのが、今年5月です。日本スタバの展開や、この実績をみる限り、同社に米スタバの子会社となるニーズがあったとは考えにくいところです。頭越しともいえる子会社化が、日本のスタバの『現場』のモチベーションにどのような影響を与えるのか、気になるところです」
末永弁護士はこのように指摘していた。