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2016年05月25日 11時08分

「水曜日のカンパネラ」騒動、実在バンド名を「曲名」に使うことの法的問題は?

「水曜日のカンパネラ」騒動、実在バンド名を「曲名」に使うことの法的問題は?
「水曜日のカンパネラ」の公式ページより

音楽ユニット「水曜日のカンパネラ」は5月9日、2013年に発表した楽曲「ヒカシュー」の曲名を「名無しの権兵衛」に変更したと公式サイトで発表した。曲と同名のバンド「ヒカシュー」(1978年結成)から要請があったという。

「水曜日のカンパネラ」は、タイトルの由来について、ゲームのキャラクター「ヒカシュー大将軍」にまつわるものであって、バンド名ではないとしているが、「誤認混同を避けるため、双方の立場を考えた上で決断致しました」と説明している。

「元祖」ヒカシューは、日本のテクノポップの先駆けとなったバンドの1つ。公式ブログで、バンド名を無断で使われたことに、「すこしばかり憤りを感じていました」と明かしている。「次第にiTune(ママ) やOtotoyなどの検索などにも紛らわしく彼らの作品が載るようになってきた」ことから要請に踏み切ったようだ。

法的に見た場合、既存のバンド名を曲名に使うことに問題はあるのだろうか。著作権などにくわしい桑野雄一郎弁護士に聞いた。

●著作権、商標権、不正競争防止法をそれぞれ検討

まず問題になり得るのは著作権ですが、「ヒカシュー」のような短い言葉は造語であっても著作権は成立しません。

次に考えられるのは商標権ですが、「ヒカシュー」というバンド名は商標登録されていないようですから商標権も問題になりません。また、仮に商標登録されていたとしても、バンド名として使うのであればともかく、楽曲名として使う限りは商標権侵害とは認められないでしょう。

さらに、商品を誤認させる行為などを禁じている「不正競争防止法」違反も問題になり得ますが、商標権と同様、楽曲名として使用している限りは違反にはならないでしょう。違反になるのは、「歌っているのが『ヒカシュー』だ」、あるいは「『ヒカシュー』と関係のあるミュージシャンだ」といった誤認を生じる場合ですが、楽曲名として使用しているだけではそのような誤認は生じないからです。このように、法的には基本的に問題はありません。

ただ、メンバーを含む関係者やファンには思い入れがある、著名な「ヒカシュー」というバンド名を、前後に別の言葉を添えたりすることもなく、バンドと全く関係のない楽曲名として使うのはどうかと思います。「ヒカシュー大将軍」というゲームソフトのキャラクターからとった楽曲名だという説明がなされているようですが、それなら「ヒカシュー」だけでなく「大将軍」などの言葉を添えてもよかったのではないでしょうか。

法的な権利はさておき、不快に思うこと自体はおかしいとも言えないと思いますので、どうしても楽曲名を「ヒカシュー」にしたいのであれば事前に一言挨拶があっても良かったのではないか、という気はするところです。

なお、楽曲名としての利用でも、例えばCDのパッケージやグッズなどに大きく記載するなどした場合には、「ヒカシュー」の楽曲やグッズだという誤認を招きかねません。その場合には、不正競争防止法違反、また商標登録されていれば、商標権侵害になる可能性はあります。

(弁護士ドットコムニュース)

桑野 雄一郎(くわの・ゆういちろう)弁護士
骨董通り法律事務所。島根大学法科大学院教授。「外国著作権法令集(46)-ロシア編―」(翻訳)、「出版・マンガビジネスの著作権」(以上CRIC)、「著作権侵害の罪の客観的構成要件」(島根大法学第54巻第1・2号)等。
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