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「安定収入」のはずが家賃減額でアパート経営者悲鳴、「サブリース契約」の課題
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「安定収入」のはずが家賃減額でアパート経営者悲鳴、「サブリース契約」の課題

「毎月安定した収入がある」などの甘い言葉に乗って、アパート経営を決意したが、数年後に家賃を減額され、経営が苦しくなったーー。こうしたアパート経営にまつわるトラブルを防ぐために、国交省は「家賃が減る可能性がある」といったリスクについて、業者に説明義務を課す法改正を決めた。

朝日新聞デジタルによると、対象となるのは「サブリース契約」と呼ばれる契約類型が対象。これは、土地の所有者が建てたアパートなどを、賃貸住宅管理業者などが一括して借り上げ、入居者集めを含めた建物管理を行うというもの。空き室の有無に関係なく、一定額の家賃を業者が所有者に支払う。

近年は、個人の大家を中心に、契約時に「30年一括借り上げ」とされていたのに、途中で家賃を減額されたという苦情が増えていたという。なぜ国交省はサブリース契約を問題視したのか。今回の制度改正で説明義務を課すことにはどんな意義があるのか。不動産の問題に詳しい家永勲弁護士に聞いた。

●強者を保護する「逆転現象」が生じている

「家賃減額のトラブルの原因は、借地借家法が定める『賃借人による賃料減額請求権』です。この規定は強行規定(当事者の契約でも変更できない規定)とされています。

最高裁において、サブリース契約に賃料の自動増額特約や賃料保証特約などが規定されていたとしても、賃料減額請求権を行使することができるという結論が下されています。

近年のサブリース契約においては、賃貸人は不動産所有者たる個人で、賃借人が事業会社となっているケースが多くなっています。

このようなサブリース契約においては、経済的には強者とも思われる事業会社が、借地借家法による保護を受けるという逆転現象のような事態が生じています」

家永弁護士はこう指摘する。なぜ、そのような「逆転現象」が許容されているのか。

「サブリース契約に借地借家法が適用されるのか否かという点は過去に争われた当時、事業会社同士がサブリース契約の当事者となっていたという背景もあり、最高裁は、サブリース会社の賃料減額請求権の行使を認めました。

その後も判例は変更されておらず、さきほど述べた『逆転現象』が現在も許容されています」

●「説明義務」を課すことにどんな意味が?

今回検討されている「説明義務」を課すことにどんな意義があるのか。

「サブリース契約における賃料減額請求に関する苦情が増加し、国土交通省が、賃貸住宅管理業者に対して、『借賃(空室時期等に異なる借賃とする場合は、その内容を含む)及び将来の借賃の変動に係る条件に関する事項』について説明義務を課すことでトラブル防止を図ったものです。

国土交通省が定めた説明義務の適用を受けるのは、任意登録となっている賃貸管理業者に登録している企業に限られます。

そのため、必ずしも全てのサブリース契約において説明義務が課されるものではありませんが、上記のような逆転現象が生じていること自体を広く知らしめることは意義があると考えられます」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

家永 勲
家永 勲(いえなが いさお)弁護士 弁護士法人ALG&Associates
弁護士法人ALG&Associatesパートナー。東京弁護士会所属。企業法務関連の法律業務を幅広く手掛けている。なかでも不動産分野の取扱いは多く、トラブルへの対応とその予防策についてセミナーや執筆等も多数行っている。

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