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2017年09月03日 09時36分

「寛大な判決を」職員の飲酒運転、町長らが地裁に嘆願書…裁判で有利になる?

「寛大な判決を」職員の飲酒運転、町長らが地裁に嘆願書…裁判で有利になる?
香川県三木町公式ウェブサイト

飲酒運転をした町職員に寛大な判決をー。こんな「嘆願書」が裁判所に提出された。

読売新聞によると、嘆願書が提出されたのは、道交法違反(酒気帯び違反)で起訴された香川県三木町の上下水道課係長の裁判。2月4日に呼気から基準値の3倍以上のアルコールが検出され、現行犯逮捕されていた。

地方公務員法で、懲役刑や禁錮刑の有罪(執行猶予を含む)判決が出ると公務員は失職すると定められている。それを免れる罰金刑を求めて嘆願書を作成し、署名も集められたという。

一般的に裁判において、被告人についての嘆願書が提出された場合、判決に影響することはあるのか。今回のケースはどうなのか。星野学弁護士に聞いた。

●有利になるかどうかは作成者や内容次第

一般的に嘆願書が提出されると、被告人にとって有利になるのだろうか。

「『嘆願書』といっても、これを裁判所に提出することで、判決で被告人に有利に働くものから、率直に言ってあまり役に立たないものまで様々です。嘆願書の提出が有利になるかどうかは、作成者や内容により違ってきます」

星野弁護士はそう指摘する。どういうことだろうか。

「例えば、犯罪の被害者が『加害者の犯行を許して処罰を求めない』といった意思を記した嘆願書は被告人に有利に働くでしょう。これに対して、被告人の近隣の方々がつきあいで書いた寛大な処分を求める嘆願書の効果は薄いといわざるを得ません」

嘆願書にはどういった内容のものがあるのか。

「嘆願書については、特に規定もないためその内容は様々ですが、内容を大きく分ければ、(1)犯行を許すという内容のもの、(2)再犯防止・社会内での更生の効果が期待できるものに分けられます。

窃盗・詐欺・横領などの財産的被害、あるいは暴行・傷害などの身体的被害について、『被害者本人が犯行を許す』という意思を表明した嘆願書は、被害者自身が処罰を求めていないということで被告人に有利に働きます。たとえ、被害者自身でなくても、殺人の被害者遺族が処罰を求めない嘆願書を提出すれば、被告人に有利になるでしょう。

また、定職がなく生活費に困って窃盗を働いた被告人について、知人が『被告人を雇用する』という内容で書いた嘆願書は、無職という犯行の原因が除去され再犯に及ぶ可能性がなくなったという意味で被告人に有利になるでしょう」

●町長が職員を擁護することは「飲酒運転の軽視」

今回のケースはどうだろうか。

「飲酒運転をした町職員に対して、町長が寛大な判決を求める嘆願書を提出するというケースは、私も聞いたことがありません。飲酒運転は、飲酒して車を運転すれば人を死傷させる危険があることが分かっていて行うものですから、単なる過失(ミス)とはいえず、極めて悪質な行為であるといえます。

そして、町長は、職員が飲酒運転をしないように監督する責任がある立場です。このような職員を擁護して嘆願書を提出することは、自身の立場を理解せず、飲酒運転の危険性や交通事故被害の悲惨さを軽視する態度であると批判されてもやむを得ないのではないでしょうか。また、この行動が、『飲酒運転くらいなら上司が助けてくれる』という認識を職員に抱かせたのであれば、大きな問題となります」

星野弁護士はそう厳しく指摘する。どういった内容であれば、有利に働く可能性があるのか。

「単なる馴れ合い的な嘆願書ではなく、今までは飲酒運転の危険性を軽視して職員に対する飲酒運転防止の指導等を怠っていた現状があり、『裁判をきっかけに飲酒運転防止の指導等を行い再犯の防止を図る』といった決意を示した嘆願書であれば、再犯防止という効果が期待でき、被告人に有利な効果も期待できると思います」

(弁護士ドットコムニュース)

星野 学弁護士
茨城県弁護士会所属。交通事故と刑事弁護を専門的に取り扱う。弁護士登録直後から1年間に50件以上の刑事弁護活動を行い、事務所全体で今まで取り扱った刑事事件はすでに1000件を超えている。行政機関の各種委員も歴任。

所在エリア:
  1. 茨城
  2. つくば
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