また、車内に残された子どもが熱中症で死亡する悲劇が起きてしまった。 報道によると、仙台市内で8月2日、車内に取り残された3歳の男児が熱中症とみられる症状で死亡した。祖母が車で帰宅した際に、孫を車内に残したままにしてしまい、5時間後に再び車に戻ると男児がぐったりしていたという。 夏になると毎年のように、パチンコ店やスーパーマーケットの駐車場で、子どもが車内に放置され、熱中症で死亡する事件が発生している。
「子どもを残しているのを忘れてしまった」、「すぐに戻るつもりだった」など理由はさまざまだが、二度とこのような悲劇が起きないようにすることが必要だろう。 今回のように、子どもを車内に放置して死なせてしまった場合、どういった罪になる可能性があるのだろうか。和氣良浩弁護士に聞いた。
●保護責任者遺棄致死罪に問われる可能性がある
小さい子どもを車内に放置して死なせてしまった大人は、どういった罪に問われるのか。
「法令や契約または既に自分がした行為等から、幼い子ども(刑法上『幼年者』といいます)のような保護を必要とする人の生死をコントロールできる立場にある人は、『保護責任者』にあたります。そして炎天下の車内のような危険な場所に幼年者を放置することは、『遺棄』という行為にあたります。
そのような行為によって幼年者を死なせてしまった場合には、保護責任者遺棄致死罪(刑法218条、219条)に問われ、2年以上の有期懲役という重い刑罰を受けることとなります」
殺意はなく、わざと放置したわけではないが、非常に重い刑罰だ。
「なぜこのような重い刑罰が科されているのかといいますと、幼い子どもは、『誰かの助けがなければ死んでしまうかもしれない』存在です。そのため、車内に放置された子どもの生死は放置した大人自身の手に握られているからなのです。
炎天下の車内は密室で、あっという間に猛烈な暑さとなります。我々大人であれば外に出たりクーラーを付ければよいだけでも、幼い子どもにとっては生死を左右するような危険な場所なのです」
●「仕方ない」と思っていた場合には、殺人罪に問われる可能性も
大人が「忘れていた」では済まされない。
「子どもの身近にいる大人として、炎天下の車内という場所自体が危険な場所であるという認識と、幼い子どもの生死は、常に身近な大人の手に委ねられているという意識が必要なのだと思います。
なお、今回のような事例で保護する義務のある者が『死んでしまうかもしれないけど、仕方ない』などと考えていた場合には、殺人罪(刑法199条)に問われる可能性もあり、その場合には死刑又は無期若しくは5年以上の懲役というさらに重い刑罰を受けることとなります」