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「即時抗告でなく、再審で争えば良い」大崎事件弁護団、最高検に要請…開始遅れに懸念
左から鴨志田弁護士、森弁護士、原口さんの娘・京子さん

「即時抗告でなく、再審で争えば良い」大崎事件弁護団、最高検に要請…開始遅れに懸念

鹿児島地裁が「大崎事件」の再審開始決定を出したことを受けて、殺人などの罪で服役した原口アヤ子さん(90)らの弁護団は6月29日、最高検察庁(最高検)を訪れ、即時抗告(不服の申し立て)をしないよう要請した。弁護団は前日に鹿児島地検にも要請をしており、明日30日には、福岡高検を訪れる。土日を挟むため、即時抗告の期限は7月3日。

最高検への要請後、東京・霞が関の司法記者クラブで弁護団長の森雅美弁護士が記者会見を開いた。森弁護士は、鹿児島地裁が決定の理由を「無罪を言い渡すべきことが明らかな証拠を新たに発見した」としていることを踏まえ、「原口さんの冤罪性は誰の目から見ても明らか。即時抗告ではなく、再審で争えば良いではないか」と語った。

弁護団が心配しているのは、原口さんの体調だ。原口さんの娘・京子さんによると、原口さんはここ数年、体力が衰え、最近では言葉を発することも少なくなっているという。検察が即時抗告すれば、再審開始は年単位で遅くなってしまう。

たとえば、原口さんの第1回再審請求では、2002年に再審開始決定が出たものの、検察が即時抗告。2004年に福岡高裁宮崎支部が決定を取り消した(最高裁で2006年に確定)。また、「袴田事件」の袴田巌さんは2014年に再審開始決定が出たが、即時抗告のため、3年経った今でも再審が始まっていない。

弁護団の事務局長を務める鴨志田祐美弁護士は、最高検の検事に対し、次のような言葉を伝えたと明かした。

「裁判所が悪いとか、捜査が悪いということだけを言いに来たわけではない。38年前の刑事手続の中で、弁護人も十分な弁護活動をしてこなかった。それぞれの法曹の先輩たちが犯した誤りを、今の私たちがみんなで、新しい科学の知見をもって改めていくことが、失われている司法への信頼を回復することになるのではないか」

●大崎事件とは?

大崎事件は1979年、鹿児島県大崎町で農業の男性(当時42歳)の遺体が見つかった事件。男性の義姉だった原口さんが、元夫ら計3人と共謀して殺害・遺棄したとして起訴された。原口さんは一貫して無罪を主張したが、客観証拠が少ない中、共犯者らの自白などをもとに、懲役10年の有罪判決が確定。出所後、無実を訴え、再審を求めてきた。

当時、死亡した男性は、絞殺されたと見られていたが、今回の第3次再審請求審で、弁護団は絞殺を否定し、事故死の可能性が高いとする法医学鑑定書を提出。また、有罪の根拠の1つとなった証言についても、信用性が低いとする供述心理学鑑定書を出していた。

(弁護士ドットコムニュース)

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