再犯防止や更生支援のあり方を探る「治療的司法研究センター」が今年4月から、成城大学で始動した。センター長の指宿信教授が5月26日、東京・霞が関の司法記者クラブで会見を開き、「依存症にかかわるような犯罪類型については、刑罰よりも再犯防止を念頭に置いた方がよいという考え方が、世界的に広がっている」などと研究の意義を語った。
指宿教授によると、「治療的司法」はアメリカから広まった、刑罰よりも立ち直りを目的とした刑事司法のあり方。たとえば、アメリカなどでは、適切な更生プログラムを受け、成功すれば、刑罰を回避するといった方法をとり、刑務所への再入率が減っているそうだ。
センターの主な活動は、こうした海外の事例を日本に紹介したり、クレプトマニア(窃盗症)など、依存症からの回復を支援する団体と弁護士を結びつけたりすること。市民向けの講演会も開催し、啓発にも努めるという。
直近では6月10日、成城大学で設立記念の講演会を実施。元厚労省事務次官の村木厚子氏のほか、クレプトマニア(窃盗症)の問題に詳しい林大悟弁護士、薬物事件にくわしい菅原直美弁護士らが登壇する。
「日本でも、昨年から『刑の一部執行猶予』制度が始まり、今年は『再犯防止等の推進に関する法律』に基づいた検討会が始まる。犯罪者の社会復帰を進める『治療的司法』と同じ考え方が広まりつつある。こうした動きを支えて、国民の理解を促したい」(指宿教授)