慶應義塾大学の男子学生が2月、サークルの春合宿の飲み会後に救急搬送され、死亡する事故が発生した。慶應大が4月17日に、事実関係を公表して、サークルを無期限活動休止にしたことから大きな話題となった。
大学生の飲酒については、指導が強化されているが、それでも事故が起きなくなったわけではない。今回は飲酒の強要もなく、未成年飲酒もなかったとのことだが、やはり懸念されるのはこの2つだ。
未成年飲酒と飲酒強要の法的問題について、冨本和男弁護士に聞いた。
●未成年に飲ませた場合は?
「『未成年者飲酒禁止法』という法律があります。親権者または親権者に代わって監督する人は、未成年者の飲酒を止めるべきだと定めています(同法1条4項、2条2項)。これに違反した場合、科料(千円以上1万円未満)になります。
また、バーなどの営業者が、未成年者に酒を提供した場合、50万円以下の罰金ということもあります(同法1条3項、2条1項)」
同じ大学のサークル仲間の場合はどうなるのか。
「サークル仲間はこれにあてはまらないと考えます。
未成年者飲酒禁止法は、飲酒による未成年者の心身への悪影響から未成年者を保護するための法律です。
親権者または親権者に代わって監督する人に未成年者の飲酒を止める義務があるとされているのは、こうした人たちは、未成年者の生活面全般にわたって監督できる立場にある以上、未成年者の飲酒を当然止めるべきと考えられるからです。
未成年者の飲酒を止めなければいけない親権者に代わって監督する人は、親権者から依頼を受けて未成年者を監督する人や、事情によって親権者が未成年者の側で監督することができない場合、親権者に代わって未成年者の生活全般にわたって監督できる人のことだと考えられます。サークル仲間が該当するかといえば、なかなか難しいでしょう」
とはいえ、そもそも未成年の飲酒自体が法律で禁止されており、サークル仲間が飲酒をすすめたり、黙認することは絶対にやめた方がいいだろう。
●飲酒を強要した場合は?
では、飲酒を強要した場合はどのような問題があるのか。
「飲酒を強要した場合、強要罪になる可能性があります。強要罪は,暴行・脅迫を手段として他人に義務のないことをさせた場合に成立する犯罪です。強要罪になる場合,3年以下の懲役になる可能性があります。
脅迫というのは相手に何らかの危害を加えることを告げて怖がらせることですが、動作による場合も含まれます。
したがって、飲まないと何らかの危害を加えるような言動をして飲酒させたような場合、強要罪になると考えます。
また、酔い潰そうとして、飲酒を強要した場合、傷害罪になる可能性もあります。急性アルコール中毒になってしまったら、過失傷害罪に問われる可能性もあります。もし死亡させてしまったら、傷害致死罪も考えられますので、絶対にやめておきましょう」
冨本弁護士はこのように述べていた。