仙台市で4月26日に起きた市立中学2年の男子生徒(13)の自殺をめぐり、学校や仙台市教育委員会の対応に批判が集まっている。いじめをすぐに認定しなかったからだ。
仙台市では2014年と2016年にも、いじめで中学生が自殺している。しかし、今回事件の起きた学校では昨年6月と11月に実施したアンケートでは、亡くなった生徒が「いじめられている」「無視される」などと回答していたにもかかわらず、悲劇を防げなかった。
今年4月に着任した校長は4月29日の記者会見で、「一方的ではなく、互いに(悪口を)言い合っていたので、双方を指導して解消した」などと説明。仙台市教委も「いじめかどうか断定できない」とし、当初はいじめだと認めなかった。
ところが、報道陣から次々に質問が飛ぶと会見後、市教委は一転して「いじめがあったことは否定できない」と発言。校長も後日、「いじめと言うべきだった」といじめを認めた。弁護士ドットコムニュースが、その理由を尋ねたところ、市教委は「アンケートで本人が申告している以上、法律上はいじめと認識すべきということで、訂正した」と説明した。
市教委や学校の対応をどう見たのか。学校のトラブルにくわしい髙橋知典弁護士に聞いた。
●教育委員は、学校の主張をそのまま受け入れてしまいがち
「私自身が関わった案件でも、教育委員会や学校が、いじめを認めようとしないということはよくあります」。髙橋弁護士はこのように話す。
「結果としてはいじめを認定してもらうに至りましたが、例えば、身体中にケガをしていながら、いじめはなかったとされたことや、『きもい』『うざい』『臭い』と複数名の生徒に言われていても、被害者側が招いた結果の口論であり、いじめには該当しないと主張されたこともあります」
髙橋弁護士はその理由を、「現場の教員があげた意見を、学校と教育委員会がそのまま受け入れてしまっているのではないか」と指摘する。
「今回の記者会見で、教育委員会は、学校が主張するとおり、いじめはなかったとの説明を繰り返していました。記者に指摘されて初めて、見つかった資料もあったようです。
本来、教育委員会は、学校とともにいじめの事件を調査し、学校の調査が不十分であれば、これを指導する立場にあります。しかし、実際には記者会見のように外部の客観的な視線や批判に触れないと、学校側の説明をそのまま受け入れてしまうことがあるのです。
学校側からすれば、責任問題になることは避けたいでしょうし、教育委員会の構成員の多くが学校現場から異動してきた教員であることなどから、馴れ合いが起きているという事情も作用しているのではないでしょうか」
●いじめアンケートの難しさ
髙橋弁護士は、今回学校が行った、いじめアンケート前後の対応が適切だったかを調査すべきだと指摘する。
「いじめを受けている子が、アンケートに『いじめはない』と回答したり、『ある』としていても、その後の聞き取り時に『ない』と答えたりすることがよくあります。
たとえば、アンケートの後、先生がいじめっ子たちに表面的な注意をするだけであれば、今まで以上に陰湿ないじめにあうでしょう。いじめがあったと回答しても、どうせ先生は助けてくれない。この結論に至った子どもたちは、いじめの事実を先生に話すことはありません」
今回の事件では、亡くなった生徒はアンケートに対し、2度「いじめられている」と回答。学校側はその後、本人と加害者の双方を指導し、被害申告がなくなったことから、いじめは止んだものと判断していたそうだ。
「先生に言ってもいじめは終わらないという確信を持った子どもたちは、より確かな絶望感に直面してしまいます。もしかしたら、亡くなった生徒もそういう心境になっていたのかもしれません」
●情報の基本的な扱い方から直すべき
髙橋弁護士によると、こうした対応は仙台市に限ったものではないという。では、いじめ問題について、学校や教育委員会はどう対応していくべきなのかだろうか。髙橋弁護士は「答えは一つではない」と前置きしつつ、「証拠等資料の収集方法や分析方法の周知を徹底すべき」だと強調する。
「いじめ調査については、普段子どもと接している先生たち以上の適任者はいないでしょう。しかし、担任の先生などの関与の深い教員による調査だけでは、教室は平穏であったということを肯定する証言の方が、先生にとっても都合が良いためか優先されてしまいます。
例えば、担任以外の先生によって、当事者だけでなく、現場に居合わせた他の子どもたちに個別に聞き取りをするなど、具体的な調査を行う必要があるでしょう」
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