高校バスケットボール部の顧問から激しい体罰を受けた男子生徒が自殺し、大きな反響を呼んだ大阪市立桜宮高校事件。大阪地検は7月4日、顧問を務めていた元教諭を傷害罪と暴行罪で、在宅起訴した。
報道によると、元教諭はキャプテンだった2年生の生徒の顔や頭を平手で十数回なぐり、口の内部に全治2~3週間のけがを負わせたなどとして、書類送検されていた。元教諭は容疑を認めているというが、教育現場の「体罰」が刑事事件に発展するのは異例のことだ。
今回は「在宅起訴」という言葉が使われているが、ただの「起訴」とはどこが違うのだろうか。また、どのような場合に「在宅起訴」は行われるのか。刑事事件の経験も豊富な大和幸四郎弁護士に聞いた。
●「起訴」には、いくつかの種類がある
「そもそも『起訴』というのは、検察官が特定の刑事事件の審理を裁判所に請求することです。『在宅起訴』は起訴の方法の一つです」
このように大和弁護士は「起訴」の定義から説明する。では、「在宅起訴」とは、どんな起訴なのだろうか。
「被告人が拘置所などの刑事施設に勾留されていない状態で、起訴することを『在宅起訴』といいます」
なるほど、「在宅」起訴といっても家にいなければならないというわけではない。被告人は仕事に行ったり、普通の生活が可能というメリットがある。どんな場合に在宅起訴になるのだろうか。
「起訴には、正式な公判を請求する場合の『正式起訴』と、比較的軽い犯罪のときに簡易裁判所に略式命令を請求する『略式起訴』があるのですが、このうち、略式起訴の場合は、在宅起訴になります」
●在宅起訴は、交通事件や軽い暴行・傷害事件の場合に多い
正式起訴の場合は、在宅起訴になる事例は限られるということだろうか。
「正式起訴の公判請求が行われるのは、拘置所や警察の留置所などに勾留された状態のままでということが多いです。でも、被疑者に逃亡や証拠隠滅のおそれがなくて、勾留の必要がないと判断された場合には、在宅起訴が行われることがあります」
犯罪の種類によっても、違いがあるのだろうか。
「在宅起訴は、交通事犯や軽い暴行・傷害の罪の場合に多いですね。この桜宮高校の事件は、全治2~3週間という比較的軽微な傷害事件で、被疑者も少し前まで教師だった人ですから、逃亡や証拠隠滅のおそれはないと検察官が判断して、在宅起訴がなされたと思います」
大和弁護士が弁護士になった15年ほど前は、覚せい剤事犯でも、たまに在宅起訴があったが、最近では皆無になったという。刑事手続のありようも時代によって変わるようだ。