秋葉原は職務質問(職質)が多い街といわれる。特に無差別連続殺傷事件が起きた2008年6月以降その回数が増えたとされ、一時期はそこかしこで職質をしている警察官の姿を見かけるような状況だった。
そんな秋葉原(アキバ)で「違法な職務質問を受けた」として、男性が東京都(警視庁)を訴えた裁判の判決が5月下旬、東京地裁であった。東京地裁は警察官の職務質問が違法だったと認定し、「休日に秋葉原を歩いていただけで所持品検査までされた精神的苦痛は大きい」として、都に5万円の支払いを命じた。
時事通信によると、判決は「男性は(警察官と)目が合うと、うつむいて視線をそらし、避けるように通り過ぎた」という都の主張を退け、「(男性は)傘を前に傾け早足で歩いていただけ」「男性が犯罪を起こすと(警察官が)疑う理由はなかった」として、職務質問を違法と認めたようだ。
ほとんどの人は職質を受けたら素直に協力するのではないかと思うが、白昼堂々カバンの中身までチェックされるのは気分が良いとは言えないだろう。職質が適法かそうでないかを一般人が見分ける目安はあるのだろうか。秋山直人弁護士に聞いた。
●ルールにそぐわない職質は拒否できる
「かみ砕いていうと、職務質問できるのは、警官が『怪しい』と疑う理由がある場合や、その人が犯罪について何か知っていると判断できるような場合に限られます。東京地裁は今回、これらの要件を欠いていたと判断したのでしょう」
どんな法律で決まっているのか?
「具体的には、警察官職務執行法2条に、次のように書いてあります。
(1)異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して、何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由があること
(2)既に行われた犯罪や犯罪が行われようとしていることについて知っていると認められること
このどちらにも当てはまらない場合には、職務質問を行うことはできません」
では、持ち物検査についてはどうか。
「職務質問に付随する所持品検査は許されていますが、一定の限度があります。証拠品の捜索は本来裁判官の令状を取って行うべき(憲法35条)であり、令状なしの所持品検査には限界があるわけです。
たとえば、警察官が相手の承諾を得ないまま、相手の上着の内ポケットに手を差し入れ、所持品を取り出して検査したケースを違法とした判例もあります。所持品検査がどこまで許されるかは、必要性や緊急性、検査で損なわれる個人の利益と公共の利益とのバランスなどを考慮して判断されます」
では、基準を満たさない職質は拒否できる?
「一般の方にとって、警察官から職質をされて、その現場で争うのは簡単ではないと思います。ただ、職質の要件やそれを満たさない職質は拒否できるという点は、知っておいても損はないと思います」
市民社会の一員として、犯罪捜査には協力したほうが良いだろう。ただ、明らかにおかしな職質を受けたと感じたら、どうして自分が質問を受けているのか、相手に疑われない程度に尋ねてみるのはありかもしれない。