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ハロウィン仮装「チェーンソー男」でパトカー出動・・・「度が過ぎる」と法律違反?
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ハロウィン仮装「チェーンソー男」でパトカー出動・・・「度が過ぎる」と法律違反?

「マスクをかぶって、チェーンソーを持った男が歩いている」。熊本市で10月中旬、こんな110番通報が寄せられ、熊本県警の機動捜査隊を含む複数のパトカーが出動する騒動があった。だが、その正体はハロウィンの仮装をした男性だった。

報道によると、通報を受けた県警は、目撃情報があった同市東区の商業施設付近で、虎のようなマスクをかぶった不審な人物を見つけた。警察が声をかけたところ、商業施設内でアルバイトをしている男性で、ハロウィンの仮装で職場の同僚を驚かせたあと、帰宅する途中だったことがわかった。

男性が持っていたのは「おもちゃ」のチェーンソー。遠くから見ると本物と見間違うようなつくりだったという。今回のような仮装が法律に違反することはあるのだろうか。刑事事件にくわしい池田伸之弁護士に聞いた。

●軽犯罪法や迷惑防止条例に違反しないか?

「今回のケースで関係しそうな法律は、『軽犯罪法』や各都道府県の『迷惑防止条例』が考えられます」

池田弁護士はこう切り出した。それぞれ、どういう行為が処罰されるのだろうか。

「軽犯罪法では、正当な理由がなくて刃物や鉄棒など、人の生命を害したり、人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具を隠して持っていた場合、『拘留または科料』で処罰するとしています(同法1条2号)。

また、熊本県の迷惑防止条例では、道路や公共の場所などで、正当な理由がないのに、刃物や鉄棒、木刀など、人の身体に危害を加えるのに使用することができる物を、公衆に対し、不安を覚えさせるような方法で持ち歩くことを禁止しています(同条例2条1項2号)。

この条例に違反した場合、『50万円以下の罰金または拘留もしくは科料』で処罰されます。常習性のある場合、『6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金』と、刑が重くなります。

しかし、今回のケースでは、おもちゃのチェーンソーだったので、人の生命や身体を害するようなものではなく、どちらにも該当しません」

もし、本物のチェーンソーを持っていた場合はどうだろうか。

「本物のチェーンソーは、『身体に危害を加えるのに使用することができる物』です。そんな代物を持って、虎のマスクをつけて街中を歩くことは、目撃した人に不安感を与えるといえます。

したがって、迷惑防止条例違反になります。ただ、『隠し持っている』わけではないので、軽犯罪法には違反しないでしょう」

今回のケースでは、警察は厳重注意したうえで、男性を帰らせたようだ。

「男性は、虎のマスクをかぶるという異様な格好で、おもちゃとはいえ、チェーンソーを持って歩いていました。遠くからみると本物そっくりだったということは、人に不安感を与えるには十分です。悪ふざけも、度を越しているといえます。

警察が厳重注意したのも、こうした背景があるからだと思います」

池田弁護士はこのように述べていた。ハロウィンのパーティーやイベントで盛り上がる季節だが、仮装して街を歩くときは、周囲の人に過度な不安を与えないように気をつけたほうがよさそうだ。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

池田 伸之
池田 伸之(いけだ のぶゆき)弁護士 池田総合特許法律事務所
愛知県弁護士会所属。企業法務などの企業案件の他、離婚、相続などの個人案件も多数担当しています。医療分野では、医療過誤事件の他、大学病院等の医療事故調査委員会の委員や厚労省の診療関連死調査のモデル事業の評価委員を務めています。

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