スーパーで販売されているスナック菓子に「つまようじ」を突き刺して入れる「いたずら動画」が、ネットで大きな話題になっている。この動画は、つまようじを入れた人物が自ら撮影したもので、1月11日にYouTubeに投稿された。
男性らしき声の「実況中継」つきだ。スーパーの中でつまようじを1本取り出し、菓子売り場の棚に並んでいたスナック菓子のフタに突き刺す様子を撮影している。箱の中にようじを入れ込むと、そのまま店の外に立ち去ってしまった。
この動画を視聴したユーザーからは、「最低だ」「やっていることは犯罪やぞ」「警察に捕まれよ」などの批判が殺到している。はたして、商品の菓子の箱につまようじを入れる行為は、犯罪にあたるのだろうか。秋山直人弁護士に聞いた。
●「偽計」業務妨害か、「威力」業務妨害か?
「スーパー店内で、つまようじを商品の菓子の箱にこっそり入れ、その様子を動画で撮影してYouTubeに投稿するという行為は、偽計業務妨害罪(刑法233条後段)または威力業務妨害罪(刑法234条)に該当します。
いずれも、3年以下の懲役または50万円以下の罰金にあたる犯罪です」
秋山弁護士はこう説明する。「偽計」と「威力」の違いはあるのだろうか。
「偽計業務妨害の『偽計』とは、『人を欺き、誘惑し、あるいは他人の錯誤または不知を利用する違法な行為』とされています。
一方で、威力業務妨害の『威力』とは、『人の意思を制圧するに足りる勢力を用いること』とされています。
しかし、『偽計』と「威力」との区別は微妙です。
たとえば、列車の座席に針を刺しておく行為も、目に見えない形でこっそり刺したのであれば、偽計業務妨害罪で、目に見える形で刺し、その存在を誇示したのであれば、威力業務妨害罪であるとされています」
今回のケースは、どちらにあたるのだろうか。
「菓子の箱にこっそり、つまようじを入れただけなら、『偽計』にあたるかもしれません。しかし、その様子をYouTubeで公開しているところまで考えると『威力』のようにも思われます」
●「挑発的な犯罪には、警察も黙っていない」
ほかの犯罪に該当する可能性はあるのだろうか。
「業務妨害の目的を隠してスーパーに侵入し、商品も買わずに店を出ているようですから、建造物侵入罪(3年以下の懲役または10万円以下の罰金)も成立する可能性があります」
警察はどう動くのだろうか。
「このスーパーでは、お客さんに『つまようじ混入』への注意を呼びかけたという報道もあり、スーパーは現実として、業務(営業)を妨害されて迷惑をこうむっています。このような挑発的な犯罪には、警察も黙っていないのではないでしょうか」
すでに警察は、威力業務妨害の疑いで捜査をおこなっていると報道されている。事実であるのならば、決して「いたずら」では済まされないだろう。