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自民党派閥の「パーティー券」問題、法的に何が問題なのか?東京地検特捜部の動きは…論点整理
自民党(yu_photo / PIXTA)

自民党派閥の「パーティー券」問題、法的に何が問題なのか?東京地検特捜部の動きは…論点整理

自民党派閥の政治資金パーティー裏金問題が大きく取り沙汰されている。安倍派(清和政策研究会)所属の複数の閣僚が12月14日、辞表を提出したと報じられている。また、刑事告発を受けて、東京地検特捜部が議員の聴取を始めるともされている。

あらためて、今回のパーティー券収入ノルマ超過分のキックバック(環流)をめぐる法的な問題を整理したい。元東京地検検事の西山晴基弁護士は「大量逮捕」への発展もありえると指摘する。西山弁護士に聞いた。

●法的に問題となるのは…争点は「共謀」の有無

——「裏金問題」をどのように捉えればよいでしょうか

法的に問題となるのは、パーティー券収入を得ること自体ではなく、収支報告書にパーティー券収入を記載しない行為です。

政治資金規正法は、収支報告書の作成・公表を求めることにより、政治資金の流れを国民の監視下に置き、政治資金が不正に利用されることを抑止しようとしています。

政治団体のパーティー券収入についても、収支報告書に記載することを義務付けています。もし虚偽の記載をすれば、5年以下の禁錮または100万円以下の罰金に処せられます。

——東京地検特捜部による安倍派議員の聴取とも報じられるなか、今後の展開は

過去の裁判例の多くは、収支報告書の作成者と議員との間に、虚偽の記載をすることについて「共謀」があったかどうかが争われています。

特捜部としては、今回のケースにおいても、まず、議員との「共謀」の有無が争点になるだろうと考え、関係者への事情聴取と証拠固めを進めると思われます。

「共謀」の立証においては、関係者の証言が重要な証拠になります。口裏合わせや口封じなどの罪証隠滅がされるおそれがあるため、大規模な逮捕事件に発展する可能性もあります。

●法の抜け穴が利用される可能性も

——キックバックについてはどうでしょうか

今回の問題では、ノルマ超過分のキックバックの法的性質が争われる可能性もあります。

政治資金規正法は、個人や企業・団体から政治家個人に寄付することを禁じていますが、例外として、政党から政治家個人に寄付することは認めています。

ところが、このような寄付金(政策活動費)について、政党側は収支報告書に記載して公表しなければならないとされていますが、受け取った議員側には報告義務を明示的には課していません。

政策活動費の扱いについては、これまでにも「法の抜け穴」として問題視されてきました。

今回の問題では、政治団体のパーティー券収入であるにもかかわらず、政党から議員個人にされた寄付であるとして「法の抜け穴」を利用すること、つまり「議員側は記載する必要がない」という弁解によって、法的責任が争われる可能性も否定できません。

●議員たちの"思惑"とは何か

——東京地検特捜部が狙う「本丸」は?

加えて、今回の問題の本質は、記載されていない金が、誰から受け取ったものなのか、特定の者からどれくらいの金額を受け取ったのか、どのように使われたのかといった一連の金の流れを隠蔽しようとしていたのでないかという点にあります。

政治資金規正法は、同一の者からのパーティー券収入が20万円を超える場合、その者の氏名等も記載することを求めており、さらには、同一の者から150万円を超えるパーティー券収入を得ることを禁止し、特定の者との癒着を抑止しようとしています。

また、同法は、支出について、収支報告書への記載に加え、領収書等の提出も求めることで、政治資金の適正な運用を守らせようとしています。

これらを記載しないということには、裏を返せば、次のような思惑があったのではという疑いが生じます。

・収入を隠匿したい
・誰からどれくらいの収入を得たのか知られたくない
・その収入をどのように使ったか知られたくない

特捜部としては、単に収支報告書不記載の刑事責任を追及するだけではないでしょう。

真相解明のため、政治家と特定の人物・企業・団体との癒着や、政治資金の不正利用の疑いといったさまざまな観点から、実態は違法な金銭収受であるが、それをパーティー券収入に偽装しようとしたのではないか、パーティー券収入をさらなる違法行為に利用していたのではないかなどといった点まで、捜査のメスを広げる狙いもあるのではないかと思われます。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

プロフィール

西山 晴基
西山 晴基(にしやま はるき)弁護士 レイ法律事務所
東京地検を退官後、レイ法律事務所に入所。検察官として、東京地検・さいたま地検・福岡地検といった大規模検察庁において、殺人・強盗致死・恐喝等の強行犯事件、強制性交等致死、強制わいせつ致傷、児童福祉法違反、公然わいせつ、盗撮、児童買春等の性犯罪事件、詐欺、業務上横領、特別背任等の経済犯罪事件、脱税事件等数多く経験し、捜査機関や刑事裁判官の考え方を熟知。現在は、弁護士として、刑事分野、芸能・エンターテインメント分野の案件を専門に数多くの事件を扱う。

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