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教え子を性的暴行の元小学校教員、万単位の被害データ削除を拒否 被害女児は「泣きながら教室に戻った」
東京地裁(kazukiatuko / PIXTA)

教え子を性的暴行の元小学校教員、万単位の被害データ削除を拒否 被害女児は「泣きながら教室に戻った」

勤務していた小学校で、担任を受け持っていたクラスの女子児童に対してその着替えを盗撮したほか、担任だったかつての教え子(当時10代)へ性的暴行を加えようとした元小学校教員の男性被告人(逮捕当時46)の公判が東京地裁(今井理裁判長)で続いている。11月2日の論告弁論で検察官は男に懲役10年を求刑し、弁護人は弁論で、懲役2年執行猶予4年の判決が相当だと述べた。(ライター・高橋ユキ)

●被害の様子をおさめた動画の所有権放棄を拒否

被告人が勤務していた校⻑から「体を触られた児童がいる」と相談を受けた警視庁が、被告人の自宅を捜索したところ、女児の写真や動画が保存されたスマートフォンが見つかったことから、児童買春・児童ポルノ禁止法違反で逮捕起訴された。その後、10代女性Aさんに対して性的暴行を加えようとしていたことが裏付けられ、準強姦未遂罪でも起訴されるに至った。

被告人は「私はAさんをレイプなんてしていません。当時Aさんとは交際をしていました」と準強姦未遂について否認。弁護人も「抗拒不能に乗じて無理やりAさんの意志に反して性行為をしようとしたことはない」と無罪を主張している。

11月の公判では論告弁論に先立ち、児童らの盗撮画像やAさんとの行為を保存していたスマホとUSBメモリについて被告人質問が行われ、これらのデータの初期化や所有権放棄の意向確認がなされた。撮影された当人やその家族は、のちのデータの拡散をおそれる。捜査の過程で押収された記録媒体が被告人のもとに戻った際、再び被告人にデータを見られることにも拒否感を覚えるはずだ。

しかし、保釈されており、車椅子で証言台の前に座る被告人は「(事件に無関係な)他のデータがあるので放棄するつもりはない。USBメモリも中にどのようなデータが入っているかわからないから、放棄するつもりはない」と答えた。何度か同じことを質問されても被告人は「内容を確認しないと所有権放棄については答えられない」と、あくまでもデータの事前確認をしたいと主張した。

データ数は数百といったレベルではなく、万単位である。

●「自分の大切なデータも一緒に消すのはアレなので……」

検察官「あなたが所有していた記録媒体には、5万点とか1万点とかわいせつ画像が記録されていますが、ひとつひとつ選ぶと、相当な時間がかかります。それでも一括消去には応じられないんですか?」

被告人「そうですね」

裁判長も尋ねた。

裁判長「押収されたものに画像や映像データが残っていることで、撮影された方々が流出など不安に思っていることはわかりますか?」
被告人「それは、はい」
裁判長「家族も不安に思っているのはわかりますか?」
被告人「はい」
裁判長「一件一件確認しないと応じられないと言いますが、被写体やその家族の不安、それは今すぐ解消しなくていいと思っているんですか?」
被告人「そういうわけではない。自分の大切なデータも一緒に消すのはアレなので……」
裁判長「一緒に保存した以上、しょうがないとは思わないですか? ひとつの記録媒体にあなたが保存したんですよね」
被告人「あー、まあ、そうですね」
裁判長「不安に思っても知ったこっちゃないと?」
被告人「そうは言ってません」

勤務していた小学校において無断で児童を盗撮したほか、Aさんに対する行為の撮影データを記録した媒体に「別のデータ」も入っているから消したくないという強い意志を見せた被告人に対し、検察官は懲役10年を求刑。撮影データが記録されているスマホとUSBメモリの没収も求めた。

●被害者の幼馴染に「ひけらかすように撮影データを送った」

ここで改めて事件について振り返りたい。

「被告人はAさんが小学校5年生の頃から担任を受け持ち、Aさんを膝の上に乗せるようになり、席替えをしてもAさんだけ被告人の近くの席から変えなかった。5年生の後半、移動教室のために教室を出たAさんに、教室に戻るように指示し、キスをした。その後は毎日のようにキスを求め、顔を背けても抱きしめられてキスを求められたことから、Aさんは抵抗をあきらめるようになった」(論告)

Aさんは当時から被告人に「『好き?』と言ったら『好き』と言って」と求められており、またこうした行為を口外しないようにとも言われていたという。小学校6年の頃には、性的な行為の意味を十分理解していないなか、被告人から手淫や口淫を求められるようになった。時には「気持ち悪く、泣きながら教室に戻る」こともあったという。また宿泊行事では被告人に呼ばれ、裸にさせられたうえ、下半身を押し付けられるという行為を受けた。

卒業後には被告人の知人が借りている埼玉県内のアパート一室に連れて行かれ、たびたび性的被害を受けてきたという。起訴されているのはAさんが中学2年生だったころ、そのアパートで受けた準強姦未遂についてである。

Aさんは証人尋問で、当時抵抗できなかった理由を問われ「諦めていた」と述べていたが、検察官は「Aさんが抵抗しても被告人はやめなかった」と指摘した。

その後、被告人とAさんとの交換日記をAさんの母親に発見されたことから、関係は断たれた。Aさんはその後もデータの拡散をおそれ、また男性との性的な行為に拒否感を覚えていたが、母にも言えずに過ごしてきたという。

「長期間にわたり性的虐待を繰り返し、Aさんを抗拒不能に陥らせた。極めて卑劣な犯行で常習性は顕著。教師という立場を利用しAさんが拒絶しても無理強いして行為を繰り返した。性的な理解が不十分であることに漬け込み、中学受験を控えたAさんに対しては内申書を持ち出し脅した」(同)

さらに、Aさんの幼馴染に対して被告人が「ひけらかすように撮影データを送った」(同)ことにも言及。

検察官は「自己顕示欲を優先し、Aさんを慮る心情は皆無」と述べ、さらに公判で“Aさんと交際していた”として無罪を主張していたことに対しても「虚偽の弁解でAさんを貶め、醜悪極まりない」と非難した。Aさんの代理人弁護士も「動画を見るに、被告人はAさんが性的なことをさせてさえいれば、機嫌良くしている。認知の歪みは強固」と陳述していた。

●弁護人は無罪主張「Aさんの証言に信用性は認められない」

ところが対する弁護人は弁論で「結論として被告人は無罪です」と言い切った。

「一度も挿入は行っていない。Aさんが挿入に応じなかったからであり、これはAさんが抗拒不能ではなかったと考える」と、挿入している動画データが存在しなかったことをもって、Aさんが事件当時、抗拒不能に陥っていないと主張し、さらに「Aさんの証言に信用性は認められない」と述べた。

弁護人によれば「Aさんはいろんな悪い方向に記憶がズレている」のだという。あくまでもAさんは被告人に好意を持っており、また無理矢理に性的な行為には及んでいないのだ……と主張し続けた。

「動画内で、Aさんが鼻をすすっていることを持ち出し、検察官はAさんが泣いていると述べていたが、その箇所がどこかわからない。また私はAさんと同じ習い事をして、蓄のう症になっています!鼻をすすったから、泣いているというのは飛躍している」

「小学校当時の周りの認識は『二人は異様に仲がいい』。これは被告人が一方的にアプローチをとっていたならば、そうはならない」(弁論)

弁護人は「普段は子どもの相談も受けている。子どもの人権を無視しているわけではありません!」と声を張り上げながら、Aさんの証言が“事実と異なる”との弁論を続けていた。

●Aさん「消えて欲しい。1日も長く刑務所に入っていて欲しい」

Aさん自身は、こうした被告人の言い分についての心境を、被害者意見陳述(代理人弁護士による代読)で明かしている。

「先生は、私が性的行為に同意していたから強姦していないと言っています。性的なことをしていた動画を改めて見て、私の話を聞いて、それでも同意していたと本気で言っているんでしょうか。当時のことを思い出しただけで体が動かなくなります。先生が保釈されたと聞いた時も、体が固まってしまいました。この陳述の打ち合わせを行う日も、朝から38度の熱が出てしまいました。先生には消えて欲しいと思っています。1日も長く刑務所に入っていて欲しいです」

判決は12月末に言い渡される。

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