大手アダルトビデオメーカー「ソフト・オン・デマンド(SOD)」運営の飲食店「SOD LAND(ランド)」(東京・新宿区)で無許可の接待営業があったとして、SODの社長らが風営法違反の罪で3月16日までに逮捕された。
社長と店長は3月14日、店の3階で不特定の客に対し、風俗営業の許可を受けないで、女性従業員にカウンター越しに客らを接待させた疑いがあるという。
SODランドは「AV女優と会えるおとなのテーマパーク」と宣伝し、地下1階・地上4階建ての店内では、人気AV女優と酒を飲むことができるとされる。
SODLAND
読売新聞によると、2020年10月以降、約6億円を売り上げたとみられ、無許可営業が2022年12月に発覚したため、警視庁が行政指導していたが、同店は違法営業を続けていたと報じられている。
3月16日に同店を訪れると、「CLOSE」とされており、水着姿の女性をマジックミラー越しに眺めるフロアなどがあると説明が書かれていた。
一方、報道を受けて、同社も3月16日に「『SOD LAND』に関しては、警察からの御指導を頂いた際には、御指導に沿った、適切な対応をするよう配慮をして参りましたが、今般の逮捕を真摯に受け止め、今後の捜査に協力し、再発防止のため、最善の努力をして参ります」とコメントしている。
警察とSOD側の間では、双方の考えに食い違いがあるようだ。何が問題視されたのだろうか。風営法に詳しい若林翔弁護士に聞いた。
●「接待」は3つの基準で判断される
——今回の摘発は何が問題とされたのでしょうか
キャバクラなどのように、キャストが客を「接待」する飲食店は、風営法上の許可を取る必要があります。
ここでの「接待」とは、歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすことをいいます。次の3つの基準で判断されます(警察庁の通達である風営法解釈運用基準)。
(1)客が飲食以外のサービス(会話や擬似恋愛)を期待
(2)特定の客やグループ客に対する
(3)積極的な会話等のサービス
SODランドの客は、飲食を主たる目的として来店するのではなく、そこで働く女性との会話などを期待して来店していると考えられます。
そして、複数人のグループを含む特定の客に対して、積極的に会話や談笑をする場合には、「接待」に該当することになります。
今回は、この基準のすべてに該当して、「接待」をしたとして、無許可営業で摘発された可能性が考えられます。
4階ではマジックミラー越しに水着姿の女性を眺めることができると説明されていた
●AV業界に警察が切り込む目的も?
——昨年末の警察による指導を受けて、SODは「適切な対応をするよう配慮」していたと説明しています。それでも摘発があった背景には何が考えられるでしょうか
風営法違反・無許可営業では、売上の没収・追徴も可能ですので、売上高や収益構造についての情報収集や没収・追徴、さらには、今後の税金関係のための情報収集が背景事情になっている可能性も考えられます。
そもそもSODランドのコンセプトとして、「接待」に該当しないような営業をすることは極めて困難ではないかと考えられるので、警察の注意・指導内容にも問題があり、指導の担当者と今回の摘発を主導した人物が違う人だった可能性も考えられるところです。
ソフト・オン・デマンド(東京都中野区/2022年11月/弁護士ドットコムニュース)
また、SODランドの摘発そのものが目的ではなく、昨今、AV新法との兼ね合いでも話題になり、注目されているAV業界への牽制や、情報収集をしたいという背景事情もあり得るところです。
もちろん、歌舞伎町では目立つ存在であり、見せしめ的な側面もあったかと思います。