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若者に人気の水タバコ「シーシャ」 10代でも店に入れるってホント?
シーシャ(alexkoral / PIXTA)

若者に人気の水タバコ「シーシャ」 10代でも店に入れるってホント?

全国で増加傾向にある「シーシャ屋(水タバコ店)」。特に若者の間で話題で、インスタグラムなどのSNSには、シーシャを嗜む姿や店舗内を写した写真が並ぶ。

そんなシーシャに憧れを抱く10代もいる。ネット上には「年齢確認されないシーシャ屋を知りませんか」との質問や、10代が入店できたことがうかがえる投稿もある。ある10代の女子大学生は「なんで、ダメなのか意味がわからない。居酒屋で年齢確認されたことないし、バレなければ入れる。(10代の)友人は20歳以上の彼氏と入れたと言っていた」と話す。

ところが、シーシャ屋のホームページをみると「20歳未満の方はご入店をお断りしています」「入店時、ご年齢の確認出来る公的な身分証のご提示をお願いいたします」などと記載されている。

実際は、どうなっているのだろうか。10代が出入りすることはできるのだろうか。話題のシーシャ屋に足を運んでみた。

●ホームページ上に記載がなくても「年齢確認」される

筆者が向かったのは、東京都・渋谷区。センター街や道玄坂を中心に、多くのシーシャ屋が看板を出している。

外から店を覗いてみると、照明が暗く、ピンクや青のライトが使われていた。内装もオシャレで「インスタ映え」する写真を撮ることができると話題になっている。

SNSでは、リラックス効果があるなどとして、大麻成分であるCBD(カンナビジオール)製品が話題となっているが、中には「CBDシーシャ」を提供する店もある。筆者も「CBDシーシャあります」と書かれた看板を掲げる店舗の前を通った。

その日は、試しに、ホームページに年齢確認に関する表記がない店舗を訪れた。しかし入店するや否や、筆者と同伴者はともに「身分証明書をお願いします」といわれた。童顔の同伴者は居酒屋で年齢確認を求められたことがあるというが、30代の筆者はひさしぶりの体験だった。店員たちは入念に生年月日欄を確認した。

客の多くは20〜30代とみられる若者。白く吐き出された煙がブルーの照明に照らされ、怪しく幻想的な雰囲気を醸し出している。

店員によると、店内ではシーシャを利用せずに過ごすことも可能だが、20歳未満の客については入店を断っているという。10代でも入れる店がどこにあるのかは定かではない。しかし、少なくともこの店では年齢確認をおこなっており、10代とみられる客はいなかった。店員によれば「ここらへんはどこも厳しく、年齢確認を徹底している」という。

●成人年齢引き下げ後も、20歳未満は「喫煙禁止」

シーシャは、別名「水タバコ」と呼ばれ、皿の上で燃やしたタバコの煙を水にくぐらせ、ろ過された煙を「水パイプ」という喫煙具を使って嗜むものだ。

実際のシーシャ 実際のシーシャ(東京都内、弁護士ドットコム撮影)

フレーバーは、アップルやバナナ、マンゴーなどのフルーツ系や、バニラやチョコレートなどのスイーツ系、シナモン、ミントなど、種類が豊富に用意されている。複数のフレーバーをミックスして、オリジナルの味も楽しむことも可能だ。

吸いこむと、装置内の水がブクブクとなる。5秒ほど吸いこんだ後、口に含んだ煙をゆっくりと吐き出していくと、フレーバーの香りと味を楽しむことができる。

タバコと比べて味わいがやわらかく、ニコチンやタールの含有量も抑えられるという。含有量を聞いてみると、店員は「極めて微量といわれている」としつつ、実際にどの程度入っているかは定かではないと語った。20歳未満の入店を断っているのは、シーシャがタバコであることに変わりないためだという。

20歳未満の喫煙は「二十歳未満ノ者ノ喫煙ノ禁止ニ関スル法律」で禁止されている。星野学弁護士は、喫煙が禁止されている理由について、次のように説明する。

「喫煙禁止の趣旨は、健康被害と非行を防止することであるとされています。そのため、民法の成年年齢の引き下げにかかわらず、喫煙が禁止される年齢は20歳未満とされています。その点を明確化するため、未成年者喫煙禁止法は名前が『二十歳未満ノ者ノ喫煙ノ禁止ニ関スル法律』(以下「法」)に改正されました」

喫煙所 写真はイメージ(砂肝大好き / PIXTA)

店員が年齢確認をせずにシーシャ屋に20歳未満を招き入れた場合、刑事責任を問われるのだろうか。星野弁護士は「まず、そもそもシーシャが法の定める『煙草』(以下、タバコ)にあたるかを検討する必要がある」と説明する。

「シーシャはニコチン・タールが微量だということで、タバコにはあたらないと言う人もいるようです。しかし、たばこ事業法2条は『製造たばこ』として『葉たばこを原料の全部又は一部とし、喫煙用、かみ用又はかぎ用に供し得る状態に製造されたものをいう』と定めています。そして、シーシャも一般的には葉たばこを原料とするものですから、たばこ事業法が定める製造たばこに当たると考えられます。そうしますと、シーシャは法が20歳未満の者の喫煙を禁止しているタバコにあたることになります。

20歳未満の者が自分でタバコを吸うことを知っていながらタバコを販売すれば、法5条に違反したとして、罰金刑が科されることになります。シーシャ屋はシーシャとそれを吸う場所を提供しているのですから、その行為はタバコの販売にあたります。したがって、年齢確認をせずに20歳未満の者を店に招き入れ、その者がシーシャを吸えば、その店舗、店舗の代表者、店員らは罰金刑を受ける可能性があります。

おそらく、入店に際して年齢確認をおこない、20歳未満の者の入店をお断りするという対応は、罰金刑を受ける危険を回避し、また、違法行為をおこなっている店という悪い評判が立つことを避ける趣旨であると思います」

●「たばこの葉」が含まれていなければOK?

最近は、ニコチンが含まれていない「ポケット・シーシャ」といわれるものや「タバコ代用品」と呼ばれるものも出回っている。星野弁護士によると、タバコ代用品には加熱式たばこのように火を使わないもの、あるいは、「たばこの葉」自体を使用せず、単にフレーバーを楽しむものもあるという。

画像タイトル 写真はイメージ(vershinin89 / PIXTA)

たばこの葉を使用しないものは、カートリッジ内のリキッド(液体)を電気で加熱して霧状になったものを吸うことから「『タバコ類似品』と呼ぶほうが正確かもしれない」と星野弁護士は語る。

では、このように「たばこの葉」を使用しないものを20歳未満が吸うことは違法なのだろうか。星野弁護士は、次のように説明する。

「極めて簡単にいえば、20歳未満の者は、たばこの葉を使用したものを吸うことは禁止されていますが、たばこの葉を使用しないものを吸うことは禁止されていないことになります。したがって、たばこの葉を使用せず、単にフレーバーを楽しむものであれば、たとえば『ポケット・シーシャ』という名前であっても法律上の規制がないことになります。

ただし、タバコ代用品・類似品については規制・管理が不十分なせいか、たばこの葉を原料としていないはずのリキッドに葉たばこの成分が含まれていたということもあるようです。この場合には、葉たばこが原料に入っていることを知って吸えば、法により処罰される可能性があります。

また、有名ブランドの商品の類似品・コピー商品および粗悪品も出回っているようですが、葉たばこが原料に含まれていないとしても、その成分に健康上の被害を及ぼす物質が含まれている可能性があります。そのため、安易にタバコ代用品・類似品を使用することはお勧めできないといわざるを得ません」

プロフィール

星野 学
星野 学(ほしの まなぶ)弁護士 つくば総合法律事務所
茨城県弁護士会所属。交通事故と刑事弁護を専門的に取り扱う。弁護士登録直後から1年間に50件以上の刑事弁護活動を行い、事務所全体で今まで取り扱った刑事事件はすでに1000件を超えている。行政機関の各種委員も歴任。

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