乱交パーティーの目的で、人数を偽ってホテルを利用したとして、主催者の男性が3月7日、詐欺の疑いで書類送検された。
報道によると、主催者は今年1月、福岡市内のホテルを2人で予約したが、実際は11人(男性8人、女性3人)で泊まった疑い。本来は11人分の料金を支払う必要があるが、2人分しか支払ってなかったという。
インターネットで参加者を募り、ホテルの部屋でわいせつ行為に及んでいたというわけだが、やはり気になるのは「公然わいせつ罪」に問われないのか、ということだろう。元検事の西山晴基弁護士に聞いた。
●公然わいせつ罪に問われる可能性はある
――公然わいせつ罪には問われないのでしょうか?
過去の風俗店の摘発事例からしても、公然わいせつ罪に問われる可能性はあります。ただし、実際にその刑事責任を問うかどうかは、証拠のほか、担当検察官の「刑事政策的な判断」が関わってくるでしょう。
――どういう場合、公然わいせつ罪に問われるのでしょうか?
公然わいせつ罪が成立するには、「公然」性と「わいせつな行為」が必要になります。
性器の露出や、性的行為が「わいせつな行為」にあたることは明らかなため、ポイントは、「公然」性が認められるかどうかです。
公然とは、「不特定または多数の人が認識しうる状態」をいいます。ただし、特定少数人の前でわいせつな行為をした場合であっても、それが不特定または多数人を勧誘した結果であれば、公然性が認められます。
ホテルの一室で特定の参加者で行われる乱交パーティーの場合、特定少数人の前での性的行為になるでしょうが、今回のケースのように、インターネットで不特定または多数人を勧誘して開催する場合には、公然性も認められる可能性があります。
●過去にはハプニングバーの客が逮捕されたケースがある
――実際にその刑事責任は問われるのでしょうか?
ここで参考になるのは、いわゆるピンサロやハプニングバーにおいて、公然わいせつ罪で検挙された事例です。
たとえば、2021年、東京・上野にあるピンサロの経営者、女性店員、客の計6人が逮捕されたケースがあります。
風営法の関係もあり、ピンサロの多くは、部屋を仕切りで区切ったブースで接客を行うわけですが、その仕切りの高さが低くかったりして、ほかの客から性的行為を容易に見ることができる環境になっている場合には、公然わいせつ罪が成立する可能性があります。
また、ハプニングバーについては、2014年に宮内庁職員が逮捕されたケースがあります。
ハプニングバーでは、客同士が性的行為を見せ合うこともあるようであり、不特定多数の客が、ほかの客の性的行為を見ることができる環境になっていれば、やはり公然わいせつ罪が成立する可能性があります。
ポイントは、これらの事例の多くでは、経営者や店長など、運営者だけが公然わいせつ罪の『ほう助』として刑事責任を問われて、客まで刑事責任を問われたケースは多くないことです。
これは、実態として、犯罪の遂行に重要な役割を果たしたのは、犯罪が容易に成立するような場や機会を提供した運営者であるため、「運営者だけ刑事責任を問えば足りる」という担当検察官の刑事政策的な判断によるものでしょう。
とはいえ、運営者のほか、女性従業員や客も逮捕されているケースがあることには注意しなければなりません。つまり、警察が店に潜入した際には、客も現行犯人として逮捕されて、その結果、家族や職場に知られるリスクがあります。
●「摘発されるのは、警察から見て目に余る場合でしょう」
――これまでの事例からすると、少なくとも主催者にあたるような場合は、乱交パーティーについても刑事責任を問われる可能性があるということですね。
とはいえ、過去摘発されたピンサロやハプニングバーの多くは、行き過ぎた運営をしていたものが多く、警察がいわば「見せしめ」的な目的で摘発したものが多いと思います。
そのため、乱交パーティーが公然わいせつ罪として摘発されるのは、警察から見て目に余る場合でしょう。
また、刑事責任を問うためには客観証拠を押さえることが重要になるため、警察は、乱交パーティーが開催されているホテルの一室を特定して、現場に潜入するなどの捜査が必要になるでしょう。
それから、刑事責任を問うとしても、先ほど述べたように、犯罪が容易に成立するような場や機会を提供した「主催者のみ刑事責任を問えば足りる」という刑事政策的な判断がなされる可能性が高いと思います。
また、冒頭のケースのように、別の犯罪で刑事責任を問うことができる場合には、「その犯罪で刑事責任を問えば足りる」という刑事政策的な判断がなされることもあるでしょう。