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歌舞伎町のルール? 無許可キャバクラ営業で有罪、桜井野の花が陥った「名義借り」の罠
歌舞伎町(まちゃー / PIXTA)

歌舞伎町のルール? 無許可キャバクラ営業で有罪、桜井野の花が陥った「名義借り」の罠

自分で営業許可を得ずに、他人名義でキャバクラを経営したとして、風営法違反の罪に問われた女性の判決公判で、東京地裁(坂田正史裁判官)は9月8日、懲役6カ月(執行猶予3年)、罰金100万円の有罪判決を下した。さらに、追徴金約4034万円の支払いも命じた。

女性は「桜井野の花」の名前で、東京・歌舞伎町のキャバクラ店でキャストを務め、経営もしており、ユーチューバーとして情報発信もしている。

初公判で、桜井さんは起訴内容を認め、「歌舞伎町のルール」に従ってしまったと語り、反省の態度を示していた。手を出すと危険なルールの実態を、ナイトビジネスに精通した弁護士に聞いた。

●名義貸し=歌舞伎町のルール?

判決では、桜井さんは、2019年4月ころから今年2月までの一部期間、キャバクラ店「桜花」などを無許可で営業したことが認められた。

「相当期間にわたり、無許可で、他者の名義を借りてキャバクラ店2店を経営し、大きな利益を上げていたもので、大胆、悪質な犯行である」(判決要旨から)

FNNプライムオンラインによると、9月1日の初公判で、桜井さんは「罪の意識なく、月5万円で名義人をやってもらっていました」と述べた。多くの同業者から「名義貸し」をすすめられたが、「歌舞伎町のルールや常識ではなく、しっかり法律に沿った形でやっていきたい」と反省の言葉も口にしたという。

●歌舞伎町に限らず、「ルール」は普及しているという

桜井さんが語った「歌舞伎町のルール」の実態について、歌舞伎町から徒歩5分に事務所を構え、風俗業界にくわしい若林翔弁護士に聞いた。

——歌舞伎町では、キャバクラ店など風俗営業店を、他人の名義で経営する「歌舞伎町のルール」が常態化しているのでしょうか?

歌舞伎町に限らず、キャバクラやホストクラブを経営する際に、他人の名義で風営法の許可をとって営業している人が多いのは事実です。

●名義人の用意は、逮捕時の「身代わり」目的なのか

——なぜ、経営者らは他人の名義を使うのでしょうか。FNNによれば、「私は時間外営業をしていて、警察への出頭も多いので、手間と思って」いたなどとも述べたそうです。

他人名義とする主な理由としては、経営する複数の店舗のうちのひとつが、営業停止などの行政処分を受けた場合に、その効力を他の店舗に波及させないようにするというものです。

また、違反行為をした場合に、実質的経営者自身の逮捕を避けたいと考えている人もいるでしょう。

警察対応を手間と考え、名義人に対応させることを理由として、他人名義で経営している人は他に聞いたことがありません。

——他人名義による無許可営業のリスクとは?

この場合、今回の桜井さんの風営法違反事件のように、無許可営業(実質的な経営者)と名義貸し(実質的な経営者に名義を貸している人)の罪になり、これまでにも複数の逮捕事例があります。

また、風営法の無許可営業による収益は、組織犯罪処罰法(組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律)の定める「犯罪収益」に該当するため、没収・追徴されるリスクもあります。

●無許可で「接待」するガールズバーの摘発事例も

——ナイトビジネスの現場で広まっている違法な「ルール」は他にもありますか?

これも歌舞伎町に限った話ではないのですが、ガールズバーやアフターバーなど、接待行為をしない深夜酒類提供飲食店飲食店が無許可営業に該当することが多いです。

実態としては、風俗営業の許可が必要な「接待」をしているケースがあり、この場合に、無許可営業で逮捕されている事例が少なくありません。

プロフィール

若林 翔
若林 翔(わかばやし しょう)弁護士 弁護士法人グラディアトル法律事務所
顧問弁護士として、風俗、キャバクラ、ホストクラブ等、ナイトビジネス経営者の健全化に助力している。また、店鋪のM&A、刑事事件対応、本番強要や盗撮などの客とのトラブル対応、労働問題等の女性キャストや男性従業員とのトラブル対応等、ナイトビジネスに関わる法務に精通している。

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