山梨県北杜(ほくと)市を舞台としたアニメ「スーパーカブ」を特集したフリーペーパーが、フリマアプリで売買された。発行元によれば「大量持ち出し」が報告されているという。タダとはいえど、フリーペーパーを何冊も持ち出すことに問題はないのだろうか。
●話題作「スーパーカブ」特集号が転売のターゲットに
毎日新聞(7月13日配信)によれば、「スーパーカブ」を表紙と巻頭に掲載した無料情報誌「なないろ7月号」が複数のフリマアプリで売買されているという。
あるアプリを確認したところ、400円〜600円程度で、複数の取引が成立していた(7月13日現在)。
発行元の「nanairo」(韮崎市)は公式サイトで、オークションサイト等での売買を確認したとし、「店舗、施設等から大量の『なないろ』を持ち出す事例も報告されております」「そのようなことはご遠慮をいただきたい」と呼びかけた。
同社は編集部の取材に、同一アカウントによって複数の冊子が売られていたとして、次のように話す。
「アニメファンの欲しがる気持ちも理解できますが、スーパーカブがここまでの人気とは。持って行ってもらうことがフリーペーパーの大前提です。しかし、1人が何十冊も持っていくことはどうかと思うし、それを転売しているならやめてほしいです」
なお、サイト上でも特集号は無料で読めるとして、安易に買わないようにもとめている。
店舗などに置かれているフリーペーパーの大量持ち出しには、どのような法的問題があるのだろうか。坂口靖弁護士に聞いた。
●「転売禁止」を伝える掲示があれば「理論的」にはアウト
——発行元が店舗などに置いたフリーペーパーを持ち出すことは、窃盗罪に該当するでしょうか
占有者の意に反して、占有を取得することが窃盗と考えられています。
今回のケースでは、発行者の委託を受けてフリーペーパーを置いている施設などの意に反して、持ち出したと評価されるような場合、窃盗罪が成立する可能性があります。
ただし、「フリー」ペーパーですので、持ち出すことも、それを売却することも、基本的には自由であると思われます。
しかし、設置場所に「転売目的の持ち出し禁止」などの掲示があれば、そのような持ち出しは明らかに「意に反する占有移転」ですので、窃盗罪成立の可能性が生じてきます。
今回のケースでも、施設に掲示があったり、発行元の公式サイトで掲示の存在が周知されていたりした場合、フリーペーパー取得時に転売目的を持っていたのであれば、窃盗罪が理論的には成立しうるように思います。
●転売目的でなくても、数十冊の持ち出しは窃盗罪になる可能性がある
――立件されることはありますか
転売目的の有無は、外形的な事実から判断することとなります。
たとえば、1冊だけ持ち出したような場合、転売目的かどうかは外形的にはわかりませんので、仮に転売目的でも、窃盗罪によって立件される可能性は極めて低いと考えられます。
また、フリーペーパーの取得時に転売の意思がなかったものの、後になってから転売をした場合においては、占有取得時には転売目的がなかった以上、管理者の意思に反する占有取得がありませんので、窃盗罪は成立しません。
——数十冊の持ち出しではどうでしょう
そもそも常識的には、1人の人間がフリーペーパーを数十冊も持ち出すことは想定されていないので、施設の意思に反することは明らかと考えられます。転売目的の有無にかかわらず、窃盗罪が成立する可能性が高いように思います。