監視カメラつきの単独房に10年近く入れられ、戸外運動の機会も与えられなかったのは非人道的であるなどとして、徳島刑務所に服役中の男性受刑者(56)が5月14日、国に対して約2750万円を求める国賠訴訟を徳島地裁に起こした。
訴状などによると、男性は2012年2月14日の入所以来、理由を伝えられることもなく、カメラ室と呼ばれる単独房に収容されており、プライバシー権の侵害や強度の拘禁感、圧迫感などを訴えている。
行動が24時間監視されるカメラ室は、受刑者の心理的負荷が高いとされる。個別具体的な事情は違うが、過去には約7カ月収容された事例で、最後の3カ月について必要性を認めず、国に40万円の損害賠償を命じた裁判例などもある。
また、男性は2020年8月まで他の受刑者との接触がなかったという。さらに、収容中に腰や膝などの症状悪化で自力歩行が困難になったが、戸外運動での車椅子使用が認められず、今年に入って許可がおりるまで、約9年間も戸外運動が事実上許されなかったともしている。
こちらについても過去に、戸外運動と入浴を15日間連続で禁止した事例や、戸外運動を155日間連続で禁止した事例について違法とする裁判例がある。
なお、徳島刑務所は長期刑受刑者が収容されることが多く、原告の男性は殺人等で無期懲役判決が確定している。ただし、本人は冤罪を主張しているという。
刑事施設での人権状況の改善を目指す「NPO法人監獄人権センター」事務局長で、男性の代理人を務める大野鉄平弁護士は、「刑罰は更生に向けられるべきで、身体や精神に害を与える処遇は、本来の刑罰の執行としてはおかしい」とコメントした。
徳島刑務所は取材に対し、「訴状が届いておらず、回答を差し控えたい」と話した。