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「女児用パンツを見せつける」事案が相次ぐ…不審者だけど「犯罪」にあたるの?
画像はイメージです(mits / PIXTA)

「女児用パンツを見せつける」事案が相次ぐ…不審者だけど「犯罪」にあたるの?

「女児用パンツ」でメガネをふく様子を見せつける——。コロナ禍で不要不急の外出を控えるよう、国や自治体が呼びかける中で、そんな「不審者」が北海道であらわれた。

札幌テレビ放送(1月30日)によると、恵庭市の路上で1月27日夕方ごろ、男性がポケットからサクランボ柄の「女児用パンツ」を取り出して、小学生低学年の女児にメガネをふく様子を見せつける事案が発生した。

恵庭市内では1月26日にも、別の女児が同じような被害にあっているという。同様の不審者は、恵庭市の隣に位置する千歳市でも目撃されている。千歳市では1月22日に女児用パンツを子どもに見せるという事案が発生していた。

日本不審者情報センターが、3件とも注意喚起をおこなっているが、「小学校の下校時間に近い午後3時半から4時ごろの発生」「目撃された男性はいずれも20歳〜30歳くらい」「黒色のジャンバー様のものを着ていた」など共通点があり、同一人物の可能性もありそうだ。

女児用パンツを見せつける人物が不審者なのは間違いなく、見せつけられた子どもの気持ちを考えれば、何かしらの対応も必要だろう。では、こうした行為は犯罪にあたるのだろうか。刑事事件や迷惑防止条例にくわしい鐘ケ江啓司弁護士に聞いた。

●迷惑防止条例が定める「卑わいな言動」に当たる可能性ある

——女児用パンツを見せつける行為は犯罪なのでしょうか。

公然わいせつ罪の成立は難しいと思いますが、「北海道迷惑行為防止条例」違反には当たり得ると思います。この条例は「卑わいな言動」を禁止しています(同2条の2第1号ウ)。

改正前の条例について、最高裁は、「卑わいな言動」について、「社会通念上、性的道義観念に反する下品でみだらな言語又は動作」と定義しています(最高裁平成20年11月10日決定)。

また、同条規定の「公共の場所又は公共の乗物にいる者に対し、正当な理由がないのに、著しく差恥させ、又は不安を覚えさせるような」と相まって、日常用語として、「卑わいな言動」を合理的に解釈することが可能だとしています。

私の手元にある「北海道迷惑行為防止条例逐条解説(平成29年5月施行改正版)」でも、「卑わいな言動」について、「いやらしく、みだらな言語、動作で、通常人の性的差恥心を害し、嫌悪感を催させ、又は不安を覚えさせるに足りる言語、動作」としています。

最高裁判例と同じ趣旨とみていいでしょう。

したがって、今回の男性の行為が「社会通念上、性的道義観念に反する下品でみだらな言語又は動作」であり、かつ、被害者を著しく差恥させ、被害者に不安を覚えさせるような言動と評価されれば、迷惑行為防止条例違反になります。

——どのように違反の有無を判断するのでしょうか。

違反しているかどうかの評価については、その事案の具体的状況を前提として、被害者の立場に置かれた一般通常人が感じるであろう気持ちを基準に判断することになります。

今回の報道では、具体的事情が十分ではありませんが、少なくとも、小学生にあえてつきまとって見せつけるようにしたのであれば、十分「卑わいな言動」として処罰対象になると考えられます。

なお、迷惑行為防止条例違反(卑わいな言動)の成立には、行為の相手方にその行為を卑わいなものとして感じ得る能力が必要とする見解もあります。しかし、先ほどあげた最高裁判例の担当調査官の解説では、以下のように否定的な見解が示されました。

「端的に一般通常人の基準によって『卑わいな言動』に当たるかを判断すれば足り、被害者にその行為を卑わいなものと感じ、 差恥・不安を感じる能力があるか否かや、被害者が眠っておらず現実に卑わい行為を認識していたか否かを問題とする必要はないように思われる」(三浦透「最高裁平成20年11月10日判例解説」(最高裁刑事判例解説平成20年度版720頁))

●法律で対応することが正解とは限らない

——今回のような事案に対して、法令はどうあるべきなのでしょうか。

現行のまま、地域の迷惑行為防止条例での取り締まりで良いと思います。何が「卑わいな言動」にあたるかは、地域によって異なることもあります。

たとえば、ある地域では風習として受け入れられている行為でも、別の地域では卑わいな言動とみられるようなこともあるでしょう。盗撮行為と異なり、立法で全国一律で対応すべきともいえないでしょう。

●北海道迷惑行為防止条例2条の2(卑わいな行為の禁止)

何人も、正当な理由がないのに、次に掲げる行為をしてはならない。
(1)公共の場所又は公共の乗物にいる者に対し、著しく羞恥させ、又は不安を覚えさせるような方法で、次に掲げる行為をすること。
ア 衣服等の上から、又は直接身体に触れること。
イ 衣服等で覆われている身体若しくは下着をのぞき見し、又は映像面に衣服等を透かして身体若しくは下着の映像を表示する機能を有する機器を使用して当該映像を見ること。 ウ ア及びイに掲げるもののほか、卑わいな言動をすること(次号に掲げる行為を除く。)。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

プロフィール

鐘ケ江 啓司
鐘ケ江 啓司(かねがえ けいじ)弁護士 薬院法律事務所
刑事弁護、中小企業法務(労働問題、知的財産権問題、契約トラブル等)、交通事故、借地借家、相続・遺言、後見、離婚、犯罪被害者支援、等々幅広い事件を取り扱っている。執務のかたわら、条例による盗撮規制の研究をしており、全国47都道府県の警察本部が作成した迷惑行為防止条例の逐条解説、改正経緯の資料等を収集している。

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