「タイマンリレー」と称して、中学3年の男子生徒に集団で代わる代わる暴行を加えたとして、いずれも16歳の少年6人がこのほど、傷害の疑いで神奈川県警に逮捕された。
報道によると、少年6人は1月4日夜、横浜市内の公園で、男子生徒に殴る蹴るなどの暴行を加え、頭部に重傷を負わせた疑いがある。暴行後、意識不明の重体となっていた男子生徒は1月15日、死亡した。
6人とも容疑を認めており、「勝手に暴走族の名前を使われた」「暴走族への加入をめぐる約束を破られた」などと話しているという。
いっせいに暴行を加えたわけではないとしても、「タイマンリレー」と称する1対1の殴り合いに参加させて、代わる代わる殴った結果、相手を死なせてしまった場合、刑事責任はどうなるのだろうか。伊藤諭弁護士に聞いた。
●手を出していなくても傷害致死罪に問われうる
——被害者死亡という最悪の事態になってしまいました。
被害者の保護者の気持ちを考えるとやりきれない気持ちになる事件ですね。
——加害者はどのような刑事責任に問われるのでしょうか。
報道の内容からは、今回の事件の詳細はわかりませんが、被害者1人に対して、共犯者6人が代わる代わる1人ずつ被害者に暴行した場合の刑法上の評価について説明いたします。
共犯者6人については、「タイマンしよう」という意思の連絡のもと、被害者に対して暴行していますので、共犯者全員に傷害罪(刑法204条)の共同正犯としての責任が生じます。
これは、だれか手を出していない者がいても同様です。今回は、残念ながら被害者が死亡していますので、傷害致死罪(刑法205条)の適用となります。
——特定の誰かの暴行で死亡したことがわかった場合はどうでしょうか。
死因は司法解剖などで相当の精度をもって特定できるようになっており、誰がどのような行為をしたかが防犯カメラ等で明らかになれば、死因に直接結びつく行為をした者が誰かも特定することは不可能ではありません。
しかし、共同正犯の関係にある者は「全員同じ責任」を負うことになります。「自分の行為は死と結びついていない」と証明したとしても、さらに言えば「自分は手を出していない」と証明しても、共謀関係があればその責任は免れません。
ただし、検察官には、起訴するにあたって、重い犯罪が成立する場合でも、より軽い罪で起訴する裁量があります。
今回、逮捕された6人は全員未成年とのことですので、まずは必ず家庭裁判所への送致となりますが、家裁への送致罪名をどうするかという裁量も同様です。共犯者の立場や暴行の関与具合などで、一部の者を傷害罪の範囲にとどめるという判断もありえます。
●少年犯罪自体は激減している
——少年犯罪については、厳罰化を求める声が常にあります。
こうした報道に接すると、「また少年か」という気持ちになるのは理解できます。
しかし、少年の犯罪は以前に比べて、人口減少率以上に激減しています。たとえば、令和2年犯罪白書によれば、もっとも人口比が高かった昭和56年に比べて、令和元年の刑法犯での検挙人員は約6分の1になっています(以前は刑法犯であった危険運転致死傷及び自動車運転致死傷等を含みます)。
多くの大人が、今よりもずっと少年犯罪の多い時代を生き抜いてきたはずです。昔ワルだった友だちが、今はまっとうに社会に溶け込んでいる…などの話には、みなさん心当たりあるのではないでしょうか。
少年犯罪は、居場所のない少年たち同士が大人では理解しがたいコミュニティを作り、彼らなりのルールの中で発生してしまうケースが散見されます。少年犯罪の厳罰化だけではこうした問題の解決にはならず、未来の大人を育て上げる空気が醸成されることを期待しています。