人気俳優の伊勢谷友介さんが9月8日、東京都内の自宅で、乾燥大麻を所持したとして、大麻取締法違反の疑いで警視庁に現行犯逮捕されて、大きな話題になっている。報道によると、伊勢谷さんは「自分で吸うために持っていた」と容疑を認めているということだ。
一方で、刑事事件にくわしい亀石倫子弁護士は「いつまでこんなこと続けるんだろう」「日本の大麻取締法、そろそろ見直しませんか」とツイートしている。伊勢谷さんの逮捕について、亀石弁護士に聞いた。
●本当に大麻は「有害」なのか?
――伊勢谷さんの逮捕・報道を受けて、どういうことを考えたか?
大麻を自己使用目的で所持した場合、5年以下の懲役(大麻取締法24条の2第1項)が科される可能性があります。
窃盗罪(10年以下の懲役または50万円以下の罰金)などと比べると法定刑は低く、初犯の場合は執行猶予がつくことがほとんどです。
メディアがこぞってトップニュースで報じるような「重大犯罪」ではありません。
被疑事実を認めている場合、勾留する必要性が認められないケースも多いと思います。
しかし、メディアは、有名人の大麻取締法違反事件をまるで重大犯罪かのように報じ、大麻は極めて危険な「薬物」であり、それを使用するような人間は「極悪人」であるかのようなイメージを植え付けます。
伊勢谷さんの逮捕・報道も、「見せしめ」に思えてなりません。
こうした報道の社会的影響にスポンサーなどが過剰に反応し、その有名人が出演した映画やドラマ、制作した楽曲等の実績が闇に葬られ、再起の機会が永遠に奪われてしまうことも少なくありません。
しかし、大麻はそれほどまでに危険な薬物なのでしょうか。そして、それまでのキャリアを全否定し再起不能にすることが、社会にとって本当に有益なことなのでしょうか。
――大麻取締法の見直すべき点は?
大麻については、近年の医学的、科学的研究の結果、アルコールやタバコ、睡眠薬などと比べても、危険性や依存性が低いことがわかっています。
また、大麻は、がんやALS(筋萎縮性側索硬化症)、うつ病など、250以上の症状や疾患に効果があるといわれ、アメリカでは33の州で大麻の医療目的での使用を認め、10の州では嗜好目的での大麻使用を非犯罪化(違法ではあるけれども刑罰は科さない)または合法化しています。
ほかの多くのヨーロッパ諸国も、大麻に関する厳しい法律の見直しを検討しています。
日本の大麻取締法は、大麻は「有害」であるという前提に立っていますが、医療目的で大麻を研究することを禁じているため、大麻は「有害」という認識からいつまでも脱することができません。
本当に大麻は「有害」なのか、科学的な検証を踏まえ、まずは医療目的での使用の是非について議論を始めるべきだと思います。
また、先進諸国で広がっている「ハームリダクション」(薬物の自己使用に刑罰を科すのではなく、健康被害やダメージを減らすことを目的とする政策)に倣い、自己使用目的の少量所持については非犯罪化することも検討するべきだと思います。