SNS上でトラブルになった相手に「絶対に許さない、呪ってやる!」という言葉と「幽霊が写っている写真」をダイレクトメールで送ってしまったーー。弁護士ドットコムにこのような相談が寄せられている。
相談者は、ダイレクトメールを送った後に我にかえり、相手に謝罪メールを送ったという。しかし、時すでに遅しで、相手にはブロックされてしまったそうだ。
「つい感情的になってしまいました。もし、相手が警察に被害届を出した場合、どうなるのでしょうか」と相談者は心配している。相談者が「脅迫罪」などの罪に問われる可能性はあるのだろうか。
●相手が「呪い」を信じていれば、脅迫罪にあたる可能性も
脅迫罪は「生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した」場合に成立する(刑法222条1項)。脅迫とは「一般人を畏怖させるに足りる害悪の告知」のことをいう。
実際に相手に危害を加えようと思っていなくとも、「害悪を加える旨を告知する」ということへの認識があれば、脅迫罪の故意は認められることになる。
「一般人が畏怖する」程度に達しているかどうかは、さまざまな事情を考慮して判断されることになる。相談者が送った「呪ってやる」という言葉と「幽霊の写真」は、「脅迫罪」の要件をみたすのだろうか。吉田要介弁護士に聞いた。
「『神の力で加害する』旨を告知したとしても、通常であれば、告知された相手はその害悪は起きないと思うでしょう。そのため、そのような内容の害悪の告知をしても『一般人を畏怖させるに足りる害悪の告知』とはいえず、脅迫罪は成立しないことになります。
しかし、祈とう師が、祈とうを信仰している者に対してこのような告知をした場合は、相手の信仰心も考慮して判断すべきであるとして『一般人を畏怖させるに足りる害悪の告知』といえることもあるとした裁判例があります。
このような裁判例の存在を考慮すれば、相手が呪いを信じるような人物であり、そのことを相談者が知っていれば、脅迫罪が成立する可能性があります」
●大量のメールを送れば「傷害罪」や「威力業務妨害罪」にあたる場合も
相談者の行為は「不能犯」(行為者が予想している犯行の目的物または手段に関するかぎり、犯罪の実現は到底不可能であるといえる場合)であるとして、罪にならないと判断されるということはないのだろうか。
「呪いをかけることが『不能犯』だとしても、実際に相手に危害を加えようと思っていなくとも、『害悪を加える旨を告知する』ということへの認識があれば、脅迫罪の故意は認められることになります。ここで実際に相談者が呪いをかけようと思っていたかどうかは問題にならないと思われます」
相談者の行為がほかの犯罪にあたる可能性はあるのだろうか。
「同様のメールを多数回送るなどして、相手の精神が病むような事態を生じさせた場合には『傷害罪』が成立する可能性があります。また、メールを大量に送ることで、相手の業務を妨害した場合は、威力を用いて業務を妨害したとして、『威力業務妨害罪』が成立する可能性もあるでしょう」