スーパーで販売されているスナック菓子の箱に「つまようじ」を突き刺す様子を撮影した動画がYouTubeに投稿され、物議をかもしている。動画を投稿したのは、東京都三鷹市の19歳の少年とみられるが、ほかにも、コンビニで商品を万引きする様子をうつした動画などを公開したとされる。
警視庁は、万引きについて窃盗容疑で逮捕状をとって行方を追っている。しかしこの少年とみられる人物は、その後もYouTubeに「全力逃走中」と題した動画を投稿し、挑発を続けている。
一方で、動画の声の主は「私みたいに19歳の人間が捕まっても、刑務所ではなくて少年院に入る。それはおかしい。ちゃんと刑事罰を受けさせるべき。少年法を改正する必要がある」といった主張を展開している。どうやら、自分は未成年だから刑務所に行くことはない、と考えているようだ。
だが、それは本当だろうか。「19歳の少年」が犯罪をおかして逮捕された場合、刑務所に行くことはないのだろうか? 刑事事件の手続きにくわしい星野学弁護士に聞いた。
●考えられる「3つのケース」とは?
「少年が犯罪をした場合でも、刑務所に入ることになる可能性はありますよ」
星野弁護士はこのようにキッパリ述べる。それは具体的にどんな場合だろうか。
「今回は19歳の少年ということなので、3つのケースが考えられます。
まず、犯罪の疑いで少年が逮捕された場合、警察・検察から家庭裁判所に送致されるのですが、この送致前に20歳になったという場合です。
この場合は、罪を犯した時点では少年だったとしても、家庭裁判所には送致せず、その後は成人と同じ手続きになります。検察官が起訴して、執行猶予なしの懲役刑の有罪判決(実刑判決)を受けた場合、刑務所に入ることになります。
次に、家裁に送致された後でも、家裁で審判を受ける前に20歳になった場合です。この場合、家庭裁判所は、年齢超過を理由として事件を検察官に送致しなければなりません。『年超検送』『年齢超過による逆送』などと呼ばれることがあります。
この場合は、家庭裁判所が検察に事件を再度送致して、さきほどと同じく、成人としての刑事手続きを踏むことになります。この場合も、刑務所に入ることになる可能性があります」
●少年でも「刑事罰」を受けることがある。
「もう一つは、19歳の少年のままでも、死刑・懲役・禁錮にあたる罪の事件について、家庭裁判所が少年を『刑事処分にするのが相当だ』と判断した場合です。この場合、少年の身柄は、家庭裁判所から検察官に送致されることになります。これが、一般的に『逆送』と呼ばれるものです。
この後は通常の裁判の手続きとなります。このケースで有罪となった場合には、少年刑務所に入ることになる可能性があります」
少年刑務所と少年院は違うのだろうか。
「少年院の目的は、少年を健全に社会復帰させることなので、『教育』という側面が強いです。これに対して、少年刑務所はあくまでも懲役刑などの実刑に服するための施設で、『刑罰』という側面が強いです」
今回のようなケースでは、「逆送」となることもありうるのだろうか。
「店の商品に穴をあけたり、万引きしたりして、その様子をネット上に公開する――。こうした行為を家庭裁判所がどう判断するかは、いろいろな考え方があると思います。社会的に悪質とみるか、自分の存在をこうした形でしか誇示できない非常に幼稚な犯行とみるか・・・。
ただ、少年が有罪判決を受けて、少年刑務所に収容されるというのは、少年犯罪全体から見ると非常に数が少ないことは確かです。こうした言い方は適切ではないかもしれませんが、少年刑務所に収監されているのは、『不良少年のエリート』のような少年たちです。
今回のような事件では、仮に逮捕されて刑事裁判を受けることになったとしても、いきなり執行猶予なしの『実刑判決』が下される可能性は低いのではないでしょうか」
現在も逃走を続けている少年が、実際に刑務所に行くことになるのかどうかは分からないが、「少年だから刑務所に行くことはない」というのは、どうやら間違った考えのようだ。