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警察署に「遺体」持ち込んだ男性逮捕、なぜ「死体遺棄」容疑なのか?
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警察署に「遺体」持ち込んだ男性逮捕、なぜ「死体遺棄」容疑なのか?

警察署に交際相手の女性(56)の遺体を車で運んだとして、千葉県の男性(61)が11月11日、死体遺棄の疑いで警視庁に逮捕された。

報道によると、男が11日夜、東京・足立区の綾瀬警察署に車で訪れて、「遺体を持ってきた」などと話した。警察官が車内を調べたところ、荷台部分で交際相手の女性の遺体が見つかった。

2人は10日夜から千葉県内のホテルに泊まっていた。男性は11日午前4時ごろ、女性が亡くなっていることに気付いたが、警察や消防に通報せず、同日夕方にホテルから女性自宅まで遺体を車で運び、同日夜に綾瀬署を訪れたという。

遺体に目立った外傷はなく、男性は「どうしたらいいかわからなかった」と供述したということだが、ツイッター上などでは、法律家から今回の逮捕容疑に疑問を持つ声もあがっている。刑事事件にくわしい大山滋郎弁護士に聞いた。

●一緒にいた人が亡くなったのに、そのまま放置したことが「遺棄」とされた可能性

死体遺棄というからには、常識的には「死体」をどこかに捨ててしまうことに思えますよね。今回の場合も、女性の死体を山奥に捨てに行ったというのなら、死体遺棄になって全く不思議はありません。

しかし、本人は別に死体を捨てたわけではありません。警察に届けに行っただけです。これで何故死体遺棄になるのか、おかしく思う人の方が多いでしょう。

本件の場合は、死体を半日もの間ホテルにそのまま放置したことが、死体遺棄と判断された可能性があります。

一緒にいた人が亡くなった以上、何らかの措置をとる法的義務が認められるのに、それをしないでそのまま放置したという不作為が、「遺棄」に当たるということになります。

一方、果たして今回の場合この男性に、「何かしないといけない義務」があったのか疑問です。さらに、女性が亡くなって半日程度放置しただけで、「遺棄」とまで言えるのかも、疑問を感じるところでしょう。

本件の場合、死体を発見したら、すぐに警察やホテルに連絡すれば、何の問題も生じませんでした。そんな簡単なことをしなかったのは、何か理由があったのかもしれません。警察に死体と共に行ったのは、何か犯罪の自首だった可能性さえあり得るかもしれません。

ただ、いずれにしても、本件の事案を「死体遺棄」ということで逮捕までするということは、かなり疑問を感じざるを得ないように思えます。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

大山 滋郎
大山 滋郎(おおやま じろう)弁護士 弁護士法人横浜パートナー法律事務所
刑事弁護と企業法務が得意分野。メーカーの法務部門に長く勤め、勤務のかたわらニューヨーク州弁護士資格を取得し、日本の司法試験にも合格した。会社の法律問題を扱う一方、多数の刑事事件を手がける。

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