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「告訴」がないと刑事裁判ができない犯罪――「親告罪」ってなに?
犯罪被害を受けた人の中には、さまざまな事情から告訴をためらう人もいる

「告訴」がないと刑事裁判ができない犯罪――「親告罪」ってなに?

被疑者は不起訴、釈放になりました――。犯罪事件で、ときおりこうした報道がされるのを耳にしたことはないだろうか。「不起訴」とは文字通り、起訴されないこと。つまり、刑事裁判にならないことを意味する。

先日は、器物損壊の容疑で書類送検されていた人気アイドルの山下智久さん(29)が、不起訴処分になったと話題を呼んだ。この件では、被害者と示談が成立し、「告訴が取り下げられたこと」が、不起訴になったポイントだったと指摘されている。

告訴が取り下げられたことと、不起訴となったことは何か関係があるのだろうか。被害者の告訴がないと、検察官は起訴することができないのだろうか。刑事手続きにくわしい元検事の山田直子弁護士に聞いた。

●起訴は検察官が決めるのが原則だが・・・

「本来、起訴するか、不起訴にするかを決定する権限は、検察官が独占しています(刑事訴訟法247条)。

しかし、性犯罪等の一定の犯罪は、被害者等による『告訴』がなければ、検察官も起訴ができないことになっています。

そうしたタイプの犯罪を『親告罪』といいます」

なぜ、そうした仕組みになっているのだろうか。

「被害者等の意思にかかわらず起訴されて、公の刑事手続に進展すると、犯罪の性質によっては被害者のプライバシーが侵害されて、よけいに被害者が傷つくことになりかねないからです」

●起訴前なら告訴を取り消せる

今回、問題となった器物損壊罪は、親告罪なのだろうか。

「器物損壊罪(刑法261条)は、親告罪とされています(刑法264条)。起訴の時点で被害者等の告訴が維持されていなければ、検察官は起訴をすることができません」

なぜ親告罪とされているのだろう。

「器物損壊罪の客体となる『器物』は多様です。

中には、持ち主にとって重要でなかったり、その内容を明らかにされたくないと思うモノもあるでしょう。

そのあたりを持ち主に判断してもらうために、親告罪とされていると考えられます」

刑事裁判になれば、公開の場で具体的に議論されることになる。確かに、モノによっては、器物損壊された側が、大ごとにされたくないケースもあるのだろう。

「なお、いったん告訴をしても、起訴されるまでは、告訴を取り消すことができます(刑事訴訟法237条)。

本件の場合は、被害者がいったん告訴をしたものの、これを取り消したと報道されています。

検察官は、告訴取り消しを理由として、つまり、訴訟条件が欠けるため、不起訴の裁定をしたと思われます」

山田弁護士はこのように分析していた。

(弁護士ドットコムニュース)

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

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